この世で一番汚いものは
← ロバート・カレン著『子供たちは森に消えた』( 広瀬順弘訳 ハヤカワ文庫NF )「八年間に五十人の少年少女を手にかけた異常殺人者の素顔を暴く、犯罪心理ノンフィクション」
この世で何が汚ないって、おカネほど汚ないものはない。お札は、手垢まみれ。おっさんなんかは、指に唾して数える。財布(札入れ)は、たまったもんじゃないね。可哀相。ぬくぬくってわけにはいかないね。
若き日の愛読書に『初期ギリシア哲学者断片集』がある。哲学者らの語りの断片の数々。哲学的思弁、省察なのに、どんな詩集より透徹した美しさを感じた。気紛れに開くと、夢想を誘ってやまない。邪道かもしれないが、至上のアフォリズム集として、座右の書だった。
ロバート・カレン著の『子供たちは森に消えた』を今朝未明読了した。ほとんどを車中での待機中に読んできた。興味津々と書いたら不謹慎となりそうな内容だが、読む頁が止まらない。
犯人チカチーロの両親は、ウクライナ共和国の人。チカチーロが生れた1936年、スターリンによる大量殺人的農業政策が強行され、数百万人が殺された。飢饉になり食糧も収奪され、餓死多数。餓死者が隣人に喰われることも稀れではなかった。チカチーロの兄もその一人とか。
チカチーロは、生まれながらの肉体的障害などで、母親からは攻めさいなまれ、家族からも疎まれ、学校に友達が出来ず、性的欠陥ゆえ女性に嗤われ、戦争での血塗れの悲惨な負傷者を目の当たりにし……。
少女らを猟奇的に殺し遺棄する殺人鬼。警察が把握していたのは、36人。しかし、自白でどんどん増えて50人以上に。
最後の章は、裁判について。ある意味想像通りというか、裁判は形通りだけ。裁判長自身が検事の役をも果たす。弁護側の精神鑑定が必要という主張も顧みられることはなかった。結果、事件の真相を深堀することも叶わなかった。読み手がそれぞれに考えを深めるしかないだろう。
ガキの頃、近所に貸本屋さんがあって(店の名前も覚えてる、その建物は今も残っている。さすがに、表は板が張られて封鎖されている)、毎日のように通った。十円玉を手に握りしめて。ずっと漫画の本だったが、次第に活字の多い本へ。冒険もの、空想科学もの。我が図書館だった。学校の図書室は何故か敬遠していた。教科書(勉強)嫌いが高じて本嫌いになった……いや、本を読むことに後ろ暗さを感じていた。勉強嫌いというより、苦手。1学年に400人以上いて、成績が400番台だったり。
図書室なんて縁遠かった。というより、何処にあるかさえ 知らなかった。高校時代も本を読むことが後ろめたくて、図書室に入ったことは一度もなかったのではないか。図書室の脇を横目で見つつも、いつも通り過ぎるだけ。本は物心付いた時から何故か隠れて読むもので、読む姿を見られなくない心理があった。ただ、漫画の本は親の前でも何処でも平気で読んでいた。父には書斎があったくらいで、その気になれば本に親しめたはずだったのだが、茶の間で一番だって本が話題になったことがあったか。お袋は全く本を読まない。雑誌を本の時たまパラパラ捲るくらい。
何ゆえ、読書が後ろめたかったのだろう。なのに、近所の貸本屋さんには日参する。恐らくは、体の不具合もあって、夢見勝ちなガキになっていて、その性格、習い性が自分でも嫌だったのか。ここではない何処かにちゃんとした人生がある。自分には触れることの一生叶うことのない本物の生がある。本を読むとは、到達することを内心諦めている半端者の代償行為に過ぎない。他のまともな奴等ならともかく、この俺が本を読むのは、本の世界に閉じ籠ることだ、本物の世界から逃げることに他ならない……。 ← 実重重実 著『生物に世界はどう見えるか 感覚と意識の階層進化』(新曜社)「細菌から植物、カビ、動物まで、あらゆる生物は感覚を持ち、世界を認識している。それはどんな世界だろうか。私たちの意識は、そこからどのような過程を経て生まれてきたのだろうか。最新の知見に基づきつつ想像力も駆使して生物の中に潜り込む探索行」
本書の第一章は、ゾウリムシ。単細胞だけど、能力は凄い。ゾウリムシ、萌え~~!
我輩は、勘違いしていた。同じ野菜を同じ畑で何度もつくると、連作障害が起こる。我輩は、その畑に同じ野菜を育て収穫するので、何か必須な栄養素(特定の栄養分)が土壌から奪われ欠乏していくのだと。だから、野菜用の肥料を撒くなどすればなんとかなるだろうと安易に考えていた。本書によれば(あるいは、野菜作りに詳しい方なら常識かも知れないが)、植物は、自分の縄張りを確保することに熱心で、「双子葉類は、根から周辺の土壌に毒物を分泌するので、同類の仲間でさえ近づくことができなくなる」のだとか。
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