語りえないことについては、沈黙するほかない
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。大晦日は仕事で年越しそばは食べられなかった。帰宅して、カップ麺を食べた。
野菜も果樹も、農薬や除草剤は一切使わない場所で作っているので、食べるのは安心。ただし、肥料も一切、与えていない。コンポストで作った土だけ。実が生ったら収穫なので、形も大きさも不ぞろい。売るのは難しい。収穫するなら、勝手に持っていけというスタンスで行きます。
昨年末、親戚の方に頂いたお歳暮。高級な白みそ堤のブリやタイなどに、昆布モチ、ローストビーフのスライスなど。今日は、昆布モチをインスタントの味噌汁で煮て、雑煮。あとは、ミカン。
ヴィトゲンシュタインの「論理哲学論考」は至純の書。宝石。これとカフカの「変身」を読むためドイツ語を勉強した。
自分はなぜに「論理哲学論考」にあれほど感銘を受けたのか。初めて読んだのは、高校時代。「世界の名著 70 ラッセル・ウィトゲンシュタイン・ホワイトヘッド 」(中央公論社)でのこと。
所収は、ラッセル『外部世界はいかにして知られうるか』ウィトゲンシュタイン『論理哲学論』ホワイトヘッド『観念の冒険』だった。
ラッセルは有能さをしみじみ感じ、ホワイトヘッドは印象に残っていない。ただ、ウィトゲンシュタインは別格だった。
何が自分をあれほど刺激したのか。
ウィトゲンシュタインは、その後、西洋哲学科へ進んでも読み続けた。卒論も彼に絡むもの(但し、かなり迂遠な話)。全集も揃えた。
ウィトゲンシュタインの文章には、その風貌も併せ、まさに哲人の風格があった。ラッセルにしても哲学のみならず文学や科学にも造詣の深かったことは察せられる。が、ウィトゲンシュタインは別格。音楽性、文学性、宗教性、そして哲学性のどの面からも造詣の深さにとどまらない傑出した存在だと感じた。
とはいいながら、吾輩は、本書を何故にあれほど、あるいはこれほど素晴らしいと感じるのか、分析を試みたことはない。これからも、自分にはできないだろう。ただ、高校時代、どう感じたかのメモだけ残しておきたい。
「論考」を要約すると、つまるところ、以下に尽きる(「論理哲学論考 - Wikipedia」):
1.世界とは、起きている事全てのことである。(物ではなく、事実の総体であるとする)
2. 起きている事、つまり事実とは、幾つかの事態が成り立っていることである。(事態+成立=>事実)
3. 事実の論理上の像が、思想(思惟されているもの、思考対象、思想内容)である。(事実/思想がパラレル。事態と思想ではない)
4. 思想は、意義を持つ命題である。
5 .命題は要素命題の真理関数である。(要素は、自分自身の真理関数である。)
6. 真理関数一般は、[ p ¯ , ξ ¯ , N ( ξ ¯ ) ] と書ける。これは命題の一般形式である。
7. 語りえないことについては、沈黙するほかない。
この1から6で、通常(常識的に)は、論理哲学や記号論を想定する。が、吾輩は、ここに哲学のみならず文学や宗教、芸術、音楽、科学、社会をも含める。現実を分析し統計を取り、解析した結果を文章に表現する、その営みの全てを想定する。つまり、古今の知的営みの全てを想定するわけである。だから、今後の営みさえも含む。営みは人が生きている限り永遠に続くだろう。
その上で、しかし、人が語りたいけど語りえないものがある。そしてその語り得ないものこそが至上のものであり、如何にしても語りえない世界があるのだ。カントで云えば物自体、ショーペンハウアーで云えば意志と表象としての世界そのもの。
大事なことは、表現の的確さである。簡潔さと云うべきか。ギリギリの瀬戸際までの表現の試みが感じ取れないと、最後の「語りえないことについては、沈黙するほかない」は陳腐な、努力や誠意の放棄に近くなる。
ヴィトゲンシュタインの本書、そして結語の「語りえないことについては、沈黙するほかない」は、異常なほどの知的営為の果ての表現だと感じられるから素晴らしいのだ。
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