読み手を置いてけ堀に
← ジュリアン・グラック 作『シルトの岸辺』(安藤 元雄訳 岩波文庫) 「「この小説は,その最後の章まで,決して火ぶたの切られない一つの海戦に向かってカノンを進行する」――宿命を主題に,言葉の喚起機能を極限まで追求し,予感と期待とを暗示的に表現して見せた」
本日は雨。堂々と庭仕事サボれる。
一瞬、雨があがって焦った……が、すぐにまた降りだした。小降りなら、カッパを羽織って作業するつもりでいたけど、もう今日はやらない。冷たい雨で 体を壊したくない。
結局外出したのは、ホットモットへの買い物だけ。
ジュリアン・グラック 作の『シルトの岸辺』を読み始めた。
書店で衝動買い。何となく面白そうだから。我輩には、全く未知の作家。作家としては、孤高の生涯だったよう。有名な賞も受賞を断ったとか。さて、いざ、読まん!
530頁の長編。まだ読んだのは6頁だが、文章がいい。読める。パラッと捲って、買うと決めた直感は当たっていた。
物語は、都会での気ままな暮らしに飽きた主人公が親の世話もあって、遠い僻地へ赴任する場面から始まる。
見知らぬ僻地への赴任という場面からか、ふと、若き日、合格した大学のある遠い地へ旅立った日のことを思い出す。
列車を乗り継いで、乗車している時間だけで12時間。我が富山よりは都会なので、僻地じゃなかった。一度もホームシックになったことはなかった。むしろ、夏休みなどに帰省するのが嫌で嫌でたまらなかった。列車の旅も嫌い。直前まで帰省を躊躇うので、予約券を買ったことがなく、12時間、立ちっ放しになる。夏休み冬休みだから、列車内は一杯。うんざりな旅。
入学した夏にバイクの小型免許、その年の冬休みに大型、つまり限定解除免許を取得。中古のバイクを2万円で入手。入学2年目の夏休みは、ガタガタのバイクで遠回りしたりして(道を何故か間違えた)、往復で2000キロのロングランになった。バイクは、帰省するための手段であるより、バイクを駆る楽しみを自分に与えて、それで嫌な帰省をさせていた。
← フォークナー 著『アブサロム,アブサロム! (下)』(藤平育子訳 岩波文庫)「「白い」血脈の永続を望み,そのために破滅した男の生涯を,圧倒的な語りの技法を駆使してたたみ掛けるフォークナーの代表作」
フォークナー 作の『アブサロム,アブサロム! (下)』を本日昼前、読了した。
自分にはなじみ辛い、展開も理解の困難な物語だった。物語と書いたが、ある意味、玉ネギの皮を一枚一枚剝いていくような、もどかしい展開。語り手が誰なのか、しばしば見失う。本書には、訳者の手により、登場人物の紹介や、家系図、地図、各章のあらましなどが付されている。何十回、これらの解説に頼ったことか。時代はアメリカの南北戦争を挟む。人種問題(主に黒人と白人の相克、つまりは血脈を巡っての諍いが話のメインであることは容易に想像が付く。が、フォークナーの手法は一筋縄で行かない。最後には劇的な<解決>の場面を迎えるのだが、自分などはこれで終わりのはずがないと思えて仕方なかった。怨念の淵源をたどると、ハイチでの過酷な惨状があったのだろうと想像される(が詳細は想像するしかない)。何か肝心のことが書いてないもどかしさ。読み手たる(つまり、神の視点で書く作者より高位に立つはずの読者である)我々すら置いてけ堀なのだ。余韻に浸れない。本作がガブリエル・ガルシア=マルケスの特に「百年の孤独」に影響したり、あるいは黒人社会を描いて際立つトニ・モリスンに刺激を与えていったのも、納得するしかない。本作をすんなり理解できる読者がいたら、尊敬しちゃうね。
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