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2019/12/01

2019年11月の読書メーター

 年賀状の欠礼ハガキで近い親戚の方が亡くなっていたことを知った。半年前に103歳で。我が家は本家なのに、失態。ごく近い親戚にだけ、知らせた。後日、非礼のお詫びしておかないと。
 今月のメインは、「レオナルドダヴィンチ」の伝記。レオナルドを再認識。稀有な存在だ。あと、ウエルベックの「セロトニン」も印象に強く残った。
 今日は銭湯へ。明日、病院で大腸の内視鏡手術のため入院。禊(?)で久しぶりに垢を流す。体重、この三年で6キロ減った。年に2キロ。食欲はあるので、体の不調で減っているわけじゃない。まだ、10キロ以上減らさないといかん。

11月の読書メーター
読んだ本の数:13
読んだページ数:4260
ナイス数:4524



掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集感想
一気に読めた。少しは小説も読んできたが、こういった作風の小説は初めて。身体的な障害やら親の都合での頻繁な転居、看護婦の体験を始め数多くの仕事、人との関りの輻輳ぶり。いろいろ彼女の作風を形成した背景は数え上げられるだろうが、説明はしきれないだろう。彼女自身が作り上げた世界。常に具体的現実と接触していて、どんな細かな瑣事も想像の翼の発端となる。想像は飛ぶのだが、彼女なりに経験したリアルからは食み出さない。小説の何処で切り取っても血の出るようなリアル感がひしひしと伝わる。読書体験として残るのは間違いない。
読了日:11月29日 著者:ルシア・ベルリン
森の生活〈下〉ウォールデン (岩波文庫)森の生活〈下〉ウォールデン (岩波文庫)感想
ソローは信念と反骨の作家である。一方吾輩は……。幣衣破帽は己が志の故であり、粗衣粗食を標榜したいが、貧乏暇無しの結果に過ぎず、ウォールデン池の傍で背水之陣の覚悟のもとに暮らしたいが、意気軒昂な日々も三日天下のうちに萎え果て、森の生活の日々の予想外の困難に打ちひしがれ、清流に身心を漱ぐ日々も薬石無効に終わり、斎戒沐浴も河や池でよりもスパでのほうが快適だと懐かしみ、夢幻泡影もただただ都の享楽の日々への愛惜の念に他ならず、漫言放語だ悲歌慷慨だ夜郎自大に過ぎない、あっという間に青息吐息の惨状を晒すに過ぎない。
読了日:11月26日 著者:H.D ソロー
人類の祖先はヨーロッパで進化した人類の祖先はヨーロッパで進化した感想
本書の最初に国立科学博物館名誉研究員の馬場悠男氏による、30頁以上に渡る「日本語版解説」が載っている。それは、本書が定説…常識、つまり人類の祖先はアフリカで進化した…とは違う説を唱える書だからである。本書では、著者は人類の祖先である類人猿はアフリカで誕生し、ヨーロッパで進化し、その後にアフリカに戻ったと主張している。およそ一七〇〇万年前からヨーロッパにすんでいた類人猿が、後の人類の基盤となる特徴を発展させ、一〇〇〇万年前にアフリカに移動し、人類の祖先となったという仮説を提唱している。
読了日:11月24日 著者:デイヴィッド・R. ビガン
レオナルド・ダ・ヴィンチ 下レオナルド・ダ・ヴィンチ 下感想
実に充実した読書体験となった。ダ・ヴィンチへの目配りの効いた叙述。レオナルドの天才ぶりを一層認識させられた。
 20年ほど前だったか、ダヴィンチの手稿を読んだことがあったが、自分はレオナルドの凄みをほとんど理解できていなかったことを思い知らされた。 レオナルド自身は、モナ・リザも含め、お気に入りの絵画作品は晩年に至るも完成していないと思っていたようだ。完成などありえない。自然を探求すればするほど分からないこと、知りたいことが見えてくる。観察と研究の結果をモナ・リザへも注ぎ込む。終わりなき探求なのである。

読了日:11月19日 著者:ウォルター アイザックソン
森の生活〈上〉ウォールデン (岩波文庫)森の生活〈上〉ウォールデン (岩波文庫)感想
今日、ネット検索して気づいた。本書を過去2度までも中途で放棄していた。頑迷なまでのソローの偏屈さとやや単調な記述に辟易したのだ。が、ある本を読んでソローを見る目が一変した。 http://atky.cocolog-nifty.com/bushou/2019/11/post-fadecc.html
読了日:11月17日 著者:H.D. ソロー
汝の症候を楽しめ―ハリウッドvsラカン汝の症候を楽しめ―ハリウッドvsラカン感想
吾輩は、ラカンを読んだことがない。気にはなっているのだが。だからといって、別に本書でラカン入門しようとも思っていない。入門するなら、断固、ラカンの本をどれでもいいから読むってのが吾輩の流儀なのだ。その上でラカン論の本を読むのなら、それはそれで一つの学び方だろう。 本書はラカン論に拠ったハリウッド映画論。あるいはハリウッド映画を題材にしてのラカン論の書。

 

 


読了日:11月15日 著者:スラヴォイ ジジェク
レオナルド・ダ・ヴィンチ 上レオナルド・ダ・ヴィンチ 上感想
とびきりのハンサムでオシャレで、気前がよく、座談の名手。才能に溢れ友人知人など交流が広い。絵画作品はとことん完璧を目指した。完成に至った作品は数点(モナリザにしても、完成したと思っていたのか?)。同性愛だからこそ、女性を性愛の念抜きで観察し尽くせたのか。
 芸術的センスは、舞台や舞台衣裳にも及んだ。むしろこの方面で儲けていた。舞台装置で秀でていた。楽器の演奏も堪能。動物、特に馬が好き。動物には痛みなどの感覚がある。だから菜食主義者。植物には痛みの感覚がないからと。この点には我輩は異論がある。
読了日:11月14日 著者:ウォルター アイザックソン
5分でたのしむ数学50話 (岩波現代文庫)5分でたのしむ数学50話 (岩波現代文庫)感想
数学は得意とはとても言えない。でも、好きである。学ぶことはできないとしても、その雰囲気は楽しみたい。中学生の頃、幾何学が好きになった。補助線を見出すと一気に解けてしまう。その醍醐味。以後、一般向けの数学書を読んでは数学の世界の奥深くに焦がれていた。美人が好き。でも、触れることなど叶わない。遠くから眺めるだけ。雰囲気だけでも楽しみたい……なんて比喩は不謹慎か。
読了日:11月08日 著者:エアハルト ベーレンツ
音楽と数学の交差音楽と数学の交差感想
音は数の表れ。音楽は身体化された数。深く楽しき洞察。音楽が決して音学でないように、数学が数楽であったら、世界が違って見えるに違いない。音楽のセンスもある数学者は、世界はどんな風に見えているのだろう。
 音は数の表れ。音楽は数学の表現。あるいは絵画などの芸術も宇宙の一番深い芯を探り描く営為なのではないか。それにしても数学こそは至上の音楽なのだとしたら、改めて数学的センスの持ち主に嫉妬してしまう。
読了日:11月07日 著者:桜井 進,坂口 博樹
闘争領域の拡大 (河出文庫)闘争領域の拡大 (河出文庫)感想
ウエルベックの処女作。次が「素粒子」。最初からウエルベック節炸裂。皮肉屋で世の中を斜に観ている男が主人公(語り手)。だが、彼は実はシニカルなだけの奴じゃない。彼には世の中が人が見えてしまう、感じてしまう、もっと云うと感情移入してしまう。デブの女。恐らく一生、処女だろう女。デブでニキビ面の男。一生、うだつの上がらない奴。女には決して相手にされない。童貞が生まれながらに(物心ついた時には自覚を迫られ)宿命づけられ、実際、最悪の青春時代を過ごし、社会人になって一層、惨めな現実を思い知らされる。(続く)
読了日:11月05日 著者:ミシェル ウエルベック
デカルトの誤り 情動、理性、人間の脳 (ちくま学芸文庫)デカルトの誤り 情動、理性、人間の脳 (ちくま学芸文庫)感想
題名のデカルトの誤りは、デカルトの心身問題への根底的な疑問を意味する。心…精神と身体は別個の実体と腑分けするデカルト。西欧の科学は、ある意味この腑分けから始まるともいえる。心の問題は後回しにする。科学の対象に馴染みやすいものに研究の力を注ぐ。脳科学や心理学ですら。理性は人間特有のものであり、一方、感情や情念は下位のものと眼中に入れない。
 感情には身体の状態が左右しているのではという直感はあっても、科学研究の現場からはそういう雑音は度外視してきた。
読了日:11月02日 著者:アントニオ・R・ダマシオ
芥川竜之介随筆集 (岩波文庫)芥川竜之介随筆集 (岩波文庫)感想
下町…大川…今で言う隅田川に掛かる両国橋などの近辺。本書冒頭の「大川の水」が秀逸。場合によっては、芥川は下町での思い出や経験を土台にした永井荷風と並ぶような小説家となる可能性もあったかもと思った。が、今昔物語などを元に「羅生門」や「鼻」を書いた。生みの苦しみを味わったようだ。小説家・芥川龍之介の誕生である。あまりいい読者とは言えない吾輩の印象だと、芥川はあまりに眼識というか見識が鋭かったように感じる。創作家たることを何処か内部から(自分で)傷つけていたように思えてならない。
読了日:11月02日 著者:
白夜に紡ぐ白夜に紡ぐ感想
素晴らしい本で、一気に読んでしまった。一昨日、読んでいる最中だったが、以下のように書いた:
 同氏がドストエフスキーにこれほど傾倒されていたとは、驚きだ。機(はた)織の専門家だし、吾輩のまるで知らない詩人や研究者との交流があるのはともかく、本書で大きな割合を占めるドストエフスキー関連のエッセイはなかなかの読み物だった。
読了日:11月01日 著者:志村 ふくみ

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