2019年10月の読書メーター
仕事に庭仕事を主とする家事、バイクでのミニツーリング、町内会の雑事もあっての読書。「平家物語」からウエルベック作の「セロトニン」と、幅広くそれなりに楽しんだ。
10月の読書メーター
読んだ本の数:13
読んだページ数:4472
ナイス数:4361
停電の夜に (新潮文庫)の感想
ロンドン生まれで、両親は共にカルカッタ出身のベンガル人。幼少時に渡米し、アメリカのロードアイランド州で成長する、とある。O・ヘンリー賞、ヘミングウェイ賞、ピュリッツァー賞を受賞している。経歴からも分かるように、様々な人種民族宗教の人々との交流や、日常で使う言葉も一様ではなかった。こうした背景を持つ人々が少なからずいるのだろうが、彼女は物語作りに上手く生かしている。
読了日:10月30日 著者:ジュンパ ラヒリ
カメラ・オブスクーラ (光文社古典新訳文庫 Aナ 1-1)の感想
ナボコフの出世作「ロリータ」の雛型の印象もあるが、まだエクスキューズがある。少女は16歳だし、すれっからしの設定。女優志願だが、演技の才能もなければ勉強もしない。主人公はお人好しの金持ちという絶好のパトロン、カモ。とことんかもられるが、男は少女という名の娼婦にメロメロだもの、家庭が崩壊しようと、彼の娘が死のうと堕ちるところまで落ちる。落ちぶりは堂に入っているが、恐らく本作の眼目はストーリーにはあるまい(展開として予想を裏切ってくれて楽しめる)。まさに、少女の娼婦性を描くことにある。作者は、きっと本作に
読了日:10月27日 著者:ナボコフ
セロトニンの感想
本作では主に廃れ行く農業(伝統的な農家)を背景に置いている。主人公は10年は暮らせるほどの資産を持つ。公的な仕事に携わっている。押し寄せる大資本農業の手助け(手先)を心ならずも果たしている。親友が先の見込みのない農業を営み、行き詰まっていくのを手をこまねいて見ている……どころか、自分も片棒を担いでいる。農家たちがついにストライキを構える。(続く)
読了日:10月24日 著者:ミシェル・ウエルベック
川端康成随筆集 (岩波文庫)の感想
本書については、感想は不要だろう。川端の多様な面を知ってもらおうと編集。「禽獣」再読したくなった。
読了日:10月21日 著者:
新版 平家物語(三) 全訳注 (講談社学術文庫)の感想
感想などは全4巻を読み終えてからとして、今日は、木曾義仲と巴御前との話題を採り上げる。というのも、本巻の物語のピークは、平家追い落としに大きな役割を果たしたその活躍ぶりと、最後は法皇ら貴族に嫌われ、ついには源氏に討たれる場面にあるからでもある。 つまり、「平家物語」においては、義仲は悪者扱いなのである。本当にそうなのか。
読了日:10月18日 著者:
青い眼がほしい (ハヤカワepi文庫)の感想
昨日の朝から読みだして、いろいろ雑事はあったものの、本夕、早くも読み終えた。読むのに疲れた。発想法や展開についていけない。作者が後書きで書いているように、戦後のアメリカにおいても(今、改めてトランプ大統領の人種差別政策で露わとなってきたが)色濃く残っていた白人による黒人差別。あるいは、日本人や中南米など有色人種差別というべきか。 では、本書は黒人差別をプロテストする小説なのか。違う。
読了日:10月16日 著者:トニ モリスン
虹の鳥の感想
昨日、読んでいる途中で、「ぶつける先のない怒りに満ちている。ノワール的作品の気味も。しかし読み進めるうちに、暴力が売りのエンタメとはまるで違うことを感じさせられている。少女への米兵による強姦事件を背景にしている。同様の事件は数知れず発生しているのだろう。日本の警察の手の及ばない歯がゆさ悔しさ」と書いた。
読了日:10月15日 著者:目取真 俊
進化の謎を数学で解くの感想
数学とコンピューターで進化の謎を解こうとしている。よく見る数式を駆使して……というものではなく、「5000次元の組み合わせを解くことのできる」ソフトを数理学者らの力を借りるという、ダーウィンどころかほんの一昔前には想像もつかなかった手法を駆使して。タンパク質も酵素も数百どころか数千も自然は生み出してきた。生物はその組み合わせを試してきた。が、当たって砕けろでは、遺伝子の変異の可能性が無数にある中で、生存につながる新しいたんぱく質の組み合わせに遭遇するはずもない。何か単なる偶然以上の何かが作用しているはず。
読了日:10月14日 著者:アンドレアス ワグナー
日本の同時代小説 (岩波新書)の感想
著者の価値観、好悪がはっきりしているのがいい。明治などの私小説には手厳しい。時代が現代に近付くほど、書き手の年齢が若いほど(というより、著者の年齢に近いほどか)、親近感を以て批評する。明治などのへたれ文士だって苦悩していたと思うのだが。それにしても女性作家も含め、それなりに読んできたつもりだったが、情けないほど読んでいないことを思い知らされた。
読了日:10月10日 著者:斎藤 美奈子
波紋と螺旋とフィボナッチ (角川ソフィア文庫)の感想
数理でシマウマや魚などの縞模様の形成のメカニズムを解いてみせる。数学的な説明は最小にし、我々門外漢にも楽しめるよう、写真や図を豊富に使って自然の謎を説いてくれる。本書の圧巻は、最後の2章の、宝の地図編とお宝への旅編である「生命科学でインディ・ジョーンズしよう!」だろう。著者自らの研究体験であり、成果が実るまでのドキドキハラハラぶりが、生々しく且つ楽しい。お勧め。
読了日:10月07日 著者:近藤 滋
古語拾遺 (岩波文庫 黄 35-1)の感想
語拾遺の訓読文、訓読文補注、原文、原文補注、解説と続く。 普通なら、訓読文を読みつつ、補注を随時参照する。が、あまりに補注が詳しく多く(← 必要だから当然)、訓読文を読み、そのあと、補注を纏めて通覧し……と、つまりは本書の構成通りに順番に読んでいった。悲しいから十分な未読など吾輩の力量を超える。あくまで日本の古典に触れたいという一心なのである。
読了日:10月04日 著者:
我々は生命を創れるのか 合成生物学が生みだしつつあるもの (ブルーバックス)の感想
生命とは何か、それが分からないなら、敢えて作ってみようという試みが盛んになっているとか。いい意味で意表を突く、面白い本だった。というか、欧米の科学者には大概眼中にないような、万物に魂を感じてしまう日本人的自然観をも視野に。だからと言って、科学の規範に外れているわけじゃない。生命を科学的に創ろうとする様々な最前線の試みも興味深い。が、それ以上に生命の始りを探求していったら、ビッグバンにまで至ってしまう、その流れに必然性を感じさせられたことが驚き。生命の探求は、一筋縄ではいかないだろうと改めて感じさせられた。
読了日:10月03日 著者:藤崎 慎吾
中国文学の愉しき世界 (岩波現代文庫)の感想
本書を読んで、あれこれ知ることが出来た。中国には、推理小説の伝統・系譜はない。そう言えば、現代は分からないけど、過去には思い浮かばない。何故? 但し、日本で言う大岡裁き風なのはあるらしい。それも、漢字で謎解き風らしい、とか。近代以前の中国では、名前を本名で呼ぶのはタブー視されていた(日本でも似た感覚があったのでは)とか、日本との違いと共に類似する文化も感じた。 余談だが、井波氏の交友が凄い。吉川幸次郎、桑原武夫、梅原猛、高橋和巳、鶴見俊輔…。まいった。
読了日:10月03日 著者:井波 律子
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