咳が止まらない
← オルハン・パムク 著『雪〔新訳版〕 上』(宮下 遼ハヤカワepi文庫)「十二年ぶりに故郷トルコに戻った詩人Ka」が、「雪降る街で出会うさまざまな人たちは、取材を進めるKaの心に波紋を広げていく」「現代トルコにおける政治と信仰を描く傑作」
連休の最終日。一昨日は庭仕事をへとへとになるまでやったので、昨日はサボり、今日もサボった。体力が落ちているのか、気力の問題か、喘息っぽい風邪が治りきらないからか。風邪(?)を引いてから既に二週間以上となる。症状はどんどん変わって来て、喉の痛みが気管支の痛みとなり、喘息っぽい咳が止まらなくなり、それでも次第に鼻水が出るように。ここまで来たら、完治に近いと思っていたのだが、痰の絡む咳が止まらない。外仕事などの最中はそれほど咳が出ないのだが、車だと、シートベルトをすると、胸が擦られ咳が誘発される。自宅でも、リクライニングに体を預け、安静にしていたり、読書している最中に不意に咳が出て止まらなくなる。あと一歩で治ると期待するしかない。
というわけで、今日も熱中症の危険度が高いこともあり、作業はサボったのである。その分、読書が進んだ……と言いたいところだが、居眠りの時間が増えただけ。それでも、オルハン・パムク 作の『雪〔新訳版〕 上』を午前中に読了し、早速、下巻に突入。ショーペンハウアーの主著も牛歩ではあるが、日々30から40頁ずつ読み進めている。
ところで、今更だが、過日読了したトルストイの『幼年時代』や『少年時代』は、自分には貴重な体験となった。読了した日、感想ではなく、覚書風に、以下のように書いた:
これらは、トルストイの作家としての生みの苦しみのドキュメントでもあるのだ。描きたい過去なり思い出なり体験がある。それは彼自身の宝であり、忘れ得ぬ体験として心に切迫してくる。作家ならずともその焦慮を形に成したいと思う。
が、さて、実際に描き始めると、作品というものは、それも、登場人物たちは猶更のこと、彼ら自らの命を持ち始める。意志や自己主張すら始める。もはや、登場人物はそして物語は生き物として別の生をすら生き始めるんだ。そこにこそ、創作する秘密とある種の作家ならではの悦楽の営みという秘密を知ってしまうのだ。もはや、自伝風という制約、あるいはそこにあるかのような過去をそのままに描きえるなどといった幻想など、脱皮する殻のように捨て去らなければならない。新たなトルストイという作家が生まれるのだ。
つまり、これらの小説を読んで、トルストイという作家のまさに誕生の瞬間を体験したとさえいえる気がしたのだ。
さて、オルハン・パムク 作の『雪〔新訳版〕 上』については、過日、以下のように書いた:
台頭するイスラム教勢力。そこには多様な勢力が混在する。西洋的な世俗勢力もあるが、聖典を墨守する原理主義者もいる。欧米の関与もある。スカーフを被るかどうかだけでも、命を懸けた信念の戦いが繰り広げられる。日本は、戦国時代から江戸時代にかけて、徹底的に宗教は脱力された。宗教心はあっても、表立っては無難な言動に終始する。そんな多くの日本人には想像の叶わぬ厳しい世界が現にあるのだ。
← オルハン・パムク 著『雪〔新訳版〕 下』(宮下 遼訳 ハヤカワepi文庫)「政治と宗教の対立に揺らぐ現代トルコを緻密な構成で描いた」……
ノーベル文学賞作家だけあって、さすがに読ませる。宗教や政治状況の複雑さと厳しさは、日本の多くの作家にはまず描けないものだろう。日本は政治的にはアメリカの影響下にあって、どっぷり泥沼の中に埋まり切っている。そこから打開しようとか、脱出しようとか、そんな気配は歪な報道ぶりの日本のマスコミには捉えようがないようだ。大国のエゴが露骨になる中、日本はどうサバイバルするのか、近い将来正念場を迎えると予感する。
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