雪の町に消えるあの人
← オルハン・パムク 著『雪〔新訳版〕 下』(宮下 遼訳 ハヤカワepi文庫)「政治と宗教の対立に揺らぐ現代トルコを緻密な構成で描いた」……
オルハン・パムク 作の『雪〔新訳版〕 下』を今朝未明読了した。訳者のあとがきによると、オルハン・パムク最初で最後の政治小説と銘打たれているとか。となると、本書で著者の文学を評価するのは危ういのかもしれない。それでも、力量はしっかり感じることができた。一方で、上巻での観劇ぶりに比べ下巻はややトーンダウンの感が否めなかった。
トルコ人、アルメニア人、クルド人などが住み、イスラム教の影響の大きい国。一方で、政治は欧米的規範に則ろうとしているトルコ。本作におけるパムクも、発想や思考法が既に欧米化している(と少なくとも現地の人間らには見做される)。イスラム教の影響下にある国に生きる人々を描くには、現地の人々の発想に寄り添わないとならない。
作家は既に(少なくとも頭の中は)欧米化している。イスラム教の原理に忠実に生きるのは、理解が不能になっている気味が強い(現地の人にはあちらの人間と突き放されているのだ)。雪のカルス(トルコの地方都市)。雪の降る日々の中で起きた事件は、いつしか夢の中の出来事だったのかとさえ思えてくる。雪が溶けるように、誤解も憎しみも愛情すらも、融かしていくしかないのだろうか。あの奇跡のように美しい人も雪の中の幻になるのか。
← 小雨の庭。昼前は30日に一度通っている内科医院へ。血糖値高め。食後、ホームセンターへ。固まる土など購入。雨のため、庭仕事はパス。資材だけ準備。雑用が多く(居眠りも)、読書進まない。
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