何が彼らを駆り立てるのか
← オリヴァー・サックス著『サックス先生、最後の言葉』 (大田 直子 訳 ハヤカワ・ノンフィクション) 「末期ガンを知らされた著者が、充実した人生への深い感謝の念を、周期表に捧ぐ変わらぬ愛を、老いや病、死を潔く受け入れる心境を説き語る」。
オリヴァー・サックス著『サックス先生、最後の言葉』 を読了した。冊子に近い本で、sのつもりがなくてもあっけなく読み終えてしまった。なんだか、物足りない。
サックスの本は数多く翻訳されている。知る限りで15冊ほどか。吾輩は少なくとも10冊は読んできた。一度ならず読んだ本も何冊か。中でも、『タングステンおじさん』は我が愛読書。これまで3度は読んだ。上掲書は、サックスの最後の言葉の書だとすれば、『タングステンおじさん』は、彼の幼少期からいよいよ医学者たる決意をするまでを描いている。
以前、以下のように書いたことがある(「自分の体で実験したい!」より):
化学の研究に生涯を捧げた人は、ヨーロッパに限っても、古来より実に多くの人がいる。それこそ、錬金術というとんでもなく分厚い研究の歴史のあるヨーロッパなのである。ニュートンも晩年まで錬金術の研究に没頭したが、現代と言っていいはずのオリヴァー・サックスの幼少時代にも、そんな分厚い化学(科学)研究の土壌と雰囲気が濃厚に漂っている。
そんな若き日を送ったサックスも、ついに亡くなってしまった。新刊書が出る楽しみもなくなったわけである。
← イアン・スチュアート 著『数学の真理をつかんだ25人の天才たち』(水谷淳 訳 ダイヤモンド社) 「新しい数学の世界を切り拓いた天才たち25人の思考のプロセスを、世界最高の数学エッセイスト、イアン・スチュアートがあぶりだす」。
イアン・スチュアート 著『数学の真理をつかんだ25人の天才たち』を本日、読了。もっと日数をかけて読むつもりだったが、やはり、こらえきれずせっせと読んでしまった。
アルキメデス、アル=フワーリズミー、ニュートン、オイラー、ガロア、リーマン、ポアンカレ、チューリング、ラマヌジャン、マンデルブロなど、世に知られている数学者らもだが、本書では、「オーガスタ・エイダ・キング:数の魔女」 「ソフィア・コワレフスカヤ:初の偉大な女性」 「エミー・ネーター:学問の慣例を覆す」と、大方の数学史の本ではあまり扱わない女性の数学者にも目配りしていることが特色だろう。
本書の意図は、名うての数学者と云えども、実に多彩な人々だということを示すことだろう。ガウスのように幼くして数学的センスを示す人がいる一方で、アインシュタインやニュートンはさほどでもなかった。記憶力の抜群な人物もいれば、苦手な人もいる。多くの就学者は視覚的な思考をするが、中には3次元の形をイメージするのが苦手なトポロジー学者もいる。幾何学的洞察に優れた人もいれば、あくまで代数的思考に徹する人もいる。政治活動に関わる人もいれば、政治には一線を画する人もいる。
イアン・スチュアート が強調するのは、誰も皆、数学を愛し、数学に取り付かれていた。もっと稼げる仕事を諦め、家族の反対にも関わらず、変人扱いされても、見返りも評価もなくても、数学することに邁進した。
ただでは、何が彼らをそこまで駆り立てたのか、それはイアン・スチュアート にも謎だと告白している。
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