木々の緑が雨に息を吹き返したよう
← 中上 健次 (著) 『地の果て 至上の時』 (新潮文庫) 「腹違いの弟を殺害した罪により、大阪で服役していた竹原秋幸が、三年ぶりに故郷に帰ってきた。しかし、その紀州・熊野の地にも都市化の波が押し寄せ、彼が生まれ育った「路地」は実父・浜村竜造の暗躍で消滅していた―。父と子の対立と共生を軸に、血の宿命と土地の呪縛が織りなす物語を重層的な文体で描く、著者渾身の力作。『枯木灘』『鳳仙花』に続く紀州神話の最高到達点」 講談社文芸文庫版もあるが、これは新潮文庫版を底本にしている。
中上 健次作の『地の果て 至上の時』を読了した。
著者の畢生の大作。紀州神話を背景に濃密な人間像を描く。これこそ地と血の肉の重畳する世界。部落問題も土台としてある。部落差別は依然として現代日本にもある。ある歴史家によると、多くの部落は、戦国時代末期、一向一揆に手を焼いた信長や秀吉によって、一向宗対策として作りだされたものだとか。つまり、人間社会の差別構造を作りだすことで、宗教的情念を人間差別に捻じ曲げ、体制批判やまして反抗する余力エネルギーを不毛なる内向性に迷わせてしまう。江戸時代も基本的に維持し、さらに宗教支配に様々な装置を作りだした。浄土真宗など西と東に分割させられ、片方は皇室との関係を権威にしてしまう始末。まさに堕落以外の何物でもない。
余談が過ぎた。見えざる差別との不毛な、しかし逃れようのない戦い。その血脈を背負って生まれたというだけで、無方向な情念は行き場を失い、強姦と暴力との応酬という縮小再生産の世界に嵌ってしまう。
本書では、何度かの火事の場面が登場する。誰が火を点けたのか。一切を清算してしまいたいという止みがたい情念の結果なのか。暗い歴史の傷を刻まれた土地は、中央資本のカネが入り込むことで、一切の人間的脈絡など頓着せず、更地にされてしまう。声が消されてしまう。中央の権力者によって作りだされた部落差別の矛盾構造は、やはり、中央の圧力でなし崩しになかったものとされるしかないのか。
本書で感じたのは、作者の中上氏自身、戦ってきた相手を見失って呆然としているのでは、という危惧の念に近いものだった。
期待に反して上天気。仕方なく、庭仕事、へとへとになるほどやった。明日は休みなのでエンドレス。ああ、先は長い。
裏の隣家との間の小道。砂利道にしている。雑草退治の面積が少しでも減るように。ビニールシートを敷き、そのままでは格好悪いので、その上に砂利を撒いた。誰かが歩くと、ジャリジャリと音がするので防犯にもなる。確かに、雑草を剝く手間がほんの少しは減った。
が、意外な(が思慮深い人間ならすぐに気づくような)盲点があった。それは、落ち葉である。(紅葉し、一気に散る)秋もだが、(常緑樹の葉っぱの生え変わる)春も落ち葉がすごい。砂利道に落ち葉。掃除が大変。葉っぱを拾うように掃除。手間が膨大。そこで、砂利を撤去し青いビニールシートの上に、防草シートを張ることにした。これなら、落ち葉が散っても竹箒でサッサと掃ける。……何か盲点があるかな?
← 森田 真生 文『アリになった数学者』( 脇阪 克二 絵 福音館書店)
森田氏の「アリになった数学者」って本を過日読んだ。感想(ならぬ感想)も既に書いた。
内容とは関係ないけど、アリが雨に祟られる場面からふと気になることが。アリなど小さな虫たちに、雨粒はどれくらいの衝撃なのか。人間には小雨でも、アリたちには雨粒はドラム缶ほどの水の塊がぶつかってくるほどの衝撃なのか。下手すると身体を包む殻にヒビが入ったりする? あるいは、微少な場面での力学は勝手な想定を越えるものなのか。雨水の流れに呑み込まれたら、人間の子供が濁流に流されるようなものか、それとも、アリの比重が軽く、大きな浮き輪が漂流するようなものなのか。
外骨格は丈夫そうですね。ただ、壊れないとしても、内部への衝撃はかなりなものではないでしょうか。ブヨンブヨンと揺れて器官に何かの障害が生じるとか。確かに、アリさんが溺れるってイメージはないですね。ただ、多数のアリがいるので、何匹かが溺れても数が減ったとは思えないかも。
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