小説を読むのに恋愛体験が要る?
古文、高校時代は苦手だった。いま思えば、もう少し身を入れてやっておいたらって、悔いている。漢文のほうが好きだった(別に得意だったわけじゃなかったけど)。漢文の本は、折々読む。但し、読み下し文を。字面のいい漢文は読み下し文も不思議にいい。
← 『コレクターズ版世界文学全集 (1) スタンダール 赤と黒』 ( 鈴木力衛 (翻訳) 日本ブック・クラブ (1972/7/25))
『コレクターズ版世界文学全集 (1) スタンダール 赤と黒』を今朝未明、読了した。
連休だったこともあり、残りの210頁ほどを二日で一気に。
やはり素晴らしい。感想……書けないくらい。初めて読んだとき、今ほど素晴らしいって思ったろうか。あの頃は、ドストエフスキーに圧倒されていたから、感激も掻き消されていたかもしれない。
ただ、主人公のジュリアンは、殺人未遂の罪で訴追され、死刑(断首)の刑が確定するに至る場面は、初読の時もジリジリしたのを覚えている。ジュリアンが愛した夫人や彼を愛する若き気位の高い女性らが嘆願助命に懸命になっているのに、彼は意図して殺害を図ったと法廷で認め、逃げる機会も絶った。何故、(実質的には)自殺を選んだ? 野心が果たせなかったから? 女性たちへの不実故に? 彼の英雄であるナポレオンの成功の惨めな頓挫、その結果としての復古的な社会への絶望がため?
「赤と黒」は、復古的な社会で、底辺の若者が出世しえる数少ない道。つまり、軍人と僧侶を象徴している。ナポレオン亡きあと、軍人の道に夢を持てず、宗教の世界で出世を謀るも挫折。野心、野望に徹することが出来なかったのだ。それも、激しい恋の故に。愛に精力を蕩尽したというべきか。あるいは、真の愛に気付くのが遅すぎた。この辺り、初読の昔も、再読した今も腑に落ちないでいる。ただ、言えることは、我輩には相思相愛に苦しむことなしで生きてきたということ。論じる資格なしかもしれない。
と言いつつ、恋愛体験がなければ小説が読めないとなると、凡そ小説など読めない。まして面白く読めるなど。ということで、前言撤回である。
暖かかった昨日(木曜日)より、10度ほど低い気温。寒くはない。部屋着突っ掛けのまま庭仕事一時間ほど。さて、お茶を呑もうとした……が、冷たいのにするか熱いのがいいか、迷ってしまった。体ねのサインがはっきりしない。生温かいのも嫌だ。結局、冷たい水を呑んで、今から熱いお茶。お腹の中で調節してくれる……はず?
◎ イザベラ・バード 著『中国奥地紀行 1』(金坂清則 訳 平凡社ライブラリー) 「19世紀末、小柄な老女が揚子江をさかのぼり、陸路、漢族の世界さえ超えた地域を踏破、「蛮子」の素晴らしい世界を描き出す」
上掲書を読み続けている。
バードは、揚子江の上流域を遡上している。使うはジャンク舟。崖や岩場をたぎる激流急流を、竹竿や繋を使い、人力のみで。岩場や浅瀬の岩に激突はしばしば。穴が空いたら、けちって布切れで埋める。浸水は手作業で掻き出す。何千隻ものジャンク舟。二十数万人もの人夫。激安の手当て。文字通り命懸け。子をせおった母親さえ、体に綱を巻き付けジャンク舟を引く。こうした人々が中国の清朝末期の物流を担ってきた。
← 大野 晋/丸谷 才一『光る源氏の物語〈上〉 』 (中公文庫) 吾輩が読んでいるのは、古書店で買った単行本。今時、ありがたみの薄れた初版本。「19世紀中期フランスの作家スタンダールの、実際に起きた事件などに題材をとった長編小説である。1830年刊。サマセット・モームは『世界の十大小説』の一つにこの小説を取り上げている」とか。
さすが手練れの二人。深い理解に導いてくれる。並の高校生じゃ歯が立たないわけだ。それでも、読むやつは若くして読むし、食らい付いていく。今秋には与謝野版以外で読み始めたい。それまでには、吉川版「失われた……」の最終巻も出るだろうし……ですよね、吉川さん!
ということで、今日から読みだした。
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