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2019/03/25

雪柳の名を度忘れ

◎ ジャン ジュネ (著)『アルベルト・ジャコメッティのアトリエ』(鵜飼 哲 (翻訳)  現代企画室)
 この本は、いま読んでいるアントニオ・ダマシオの「進化の意外な順序」謝辞にて参照されている。ピカソが、芸術的な創造について書かれた史上最高ね書物と見なしていた本だとか。「美の起源は、各人各様の特異な傷以外に存在しない。隠されたものあれ、あらわなものであれ」というジュネの言葉が引いてある。
1553409487338307 ↑ 表の車道沿いの花壇の雪柳。今朝、庭を見て回って咲いているのに、気づいた。もう、咲いてる? と驚いた。
◎ 実松 克義 (著)『アマゾン文明の研究―古代人はいかにして自然との共生をなし遂げたのか』(現代書館)
 今日、読み始めた、海部宣男さんの書評集「科学と不確実な社会」にて紹介されていた。アマゾンには、紀元前から高度な土の文明があったことが、近年の調査で分かってきたという。NHKさん、是非、総力特集、お願いします。
0000000139552_k4qbp8j_2↑ オリヴァー・サックス著『意識の川をゆく──脳神経科医が探る「心」の起源』 (大田 直子 訳 早川書房)
 サックス最後の本。遺稿集。フロイトの精神分析医になる前の優れた研究者としての実績、ダーウィンも優れた研究者だったことは、彼らの著書も伝記も読んできた自分には目新しくはなかった。でも、改めて研究者としての着実な歩みを再認識した。サックス自身、幼い頃からの、豊かな前史があることは、素晴らしい自伝「タングステンおじさん」で何度となく確かめてきた。
 サックスは、専門家としても優れているが、物理学など他分野の専門家と、突っ込んだ議論もできる素養というか深い造詣のある人。意識や感情が、脳(中枢神経)ではなく、腸などの内臓を含めた身体全体から涌き起こるものであるという、最新の見解をも、しっかり把握していた。とにかく、本書はサックスの世界への入門編としても相応しい。
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↑ アントニオ・ダマシオ 著『進化の意外な順序  感情、意識、創造性と文化の起源』(高橋洋 訳 白揚社) 「太古の単細胞生物から、神経系の構築、感情や意識の出現、そして創造性へ――(中略) 彼の独自理論をさらに深化させ、文化の誕生に至る進化を読み解く独創的な論考」とか。
514hmavucll__sx344_bo1204203200_↑ ピーター・ゴドフリー=スミス (著)『タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源』(夏目 大 (翻訳)  みすず書房)
 生物哲学(こんな学問があるんだ)、科学史などの研究者。タコなど頭足類が近年注目を浴びている。進化上、無脊椎動物の海に浮かぶ孤島のような存在。他に彼らのような複雑な内面を持つ無脊椎の生物は見当たらない。人類とタコなどとの共通の祖先は、約六億年前に遡る。が、頭足類は、大きな脳や複雑な行動を、我々とは全く違った実験を経て進化させてきた。
 著者によれば、頭足類を見ていると「心がある」、心が通じあったように思えることもあるとか。進化的には全く遠い存在である私たちがそうなれるのは、進化が、全く違う経路で心を少なくとも二度、つくったから。頭足類と出会うことはおそらく、我々にとって、地球外の生命体に出会うのに最も近い体験だろうと、著者は語る。
200501000066_1 さすが、森村さんは、タクシー事情の周辺をよく調べられている。職業柄、タクシー関連の本は、大概読んできた。森村さんの作品は、他のタクシーモノの杜撰さとは違う。惜しむらくは、カーナビもGPSもなかった時代の話で、もはや今では昔の話になってしまっていること。それにしても、タクシーの客に幽霊が、という話、多いね。なぜだろう。
 常に事故あるいは違反と隣り合わせである、楽しみであるドライブとは似て非なる職業としての運転。乗せているのは、人間。密室空間での、濃密であり稀薄でもある人間関係というストレス。サービスとしての、日に何度もある荷物(車椅子やバッグなど)の積み降ろし。腰痛は、車のサスペンションだとか荷物の積み降ろしとされるが、それ以上に腰に負担なのは、実は乗り降りそのものと考えられる。乗用車の乗降なんて、マイカー族なら誰でもやっていること……。とんでもない。
 タクシードライバーは、日に10回では済まない回数、乗降する。20回?いやいや、30回は乗降する。やや不自然な体勢や動きを強いられる乗降も、日に数回程度なら、体への負担も考慮に値しないかもしれない。が、それが何十回となると、話はまるで違ってくるだろうことは、容易に想像が付こうというもの。これらの問題点は、きちんと調査されたことはあるのだろうか。ん、日に何回も乗降するのはタクシードライバーだけじゃないって。確かに。しかし、タクシードライバーの平均年齢は?50、60は当たり前。70歳前後の運転手も珍しくない。
 それにしても、タクシーの客に幽霊が、という話、多いね。なぜだろう。ちなみに、我輩も、それらしい話を書いたことがある。
51pni2ain5l__sl500_ ← チャイナ・ミエヴィル (著)『クラーケン(上) 』 (日暮雅通 (翻訳)  ハヤカワ文庫SF)
 いま読んでいるピーター・ゴドフリー=スミス著の「タコの心身問題」の中で参照されている。「クラーケン」という小説には、ダイオウイカも登場するとか。この「クラーケン」の作者がスミスに、人類学者ローランド・ディクソンの言葉を教えた:
 ディクソンは、ハワイの創世神話に触れている。ハワイでは、生物の歴史ではじめに現れたのはサンゴなどの植虫類。ついで、蠕虫や貝類、甲殻類。新しく生まれたものたちは、古いものたちを滅ぼし、世界を征服する。やがてまた新しく何かが現れ、古いものたちを滅ぼす、それが繰り返されてきたという。

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