タコの好奇心に出会う
雑草を追って庭を巡る。部屋着のまま。サンダル履き。素手。いつしか、畑に。先日、かなり本気で、長靴履いて雑草を退治したが、ほんの一週間経っただけなのに落ち葉や雑草が目立つ。化け物に一杯になるたび、特設のこんぽすとに開ける。次第に我輩の性分というのか、むきになってきて、よせばいいのに、用水路というか溝(どぶ)に目がいってしまった。
こうなると、やるっきゃない。何をって、どぶ浚いである。コンクリート鋪装の溝も二ヶ月前には、徹底して浚ったのだが、早くも壁面には苔、底には藻がびっしり。雑草……水草までもが見事に育っている。今では溝(どぶ)と化しているけど、元は立派な農業用水路だった。見渡す限り水田や畑。昔はコンクリートじゃなく土の溝(みぞ)。のりめんは雑草が生い茂り、梅雨の時期には螢も舞った。いつしかコンクリートの用水路にされたのだが、同時に螢の姿も消えてしまった。フナだって釣れた時期もあったが、さすがに農薬の散布で姿を消した。
もう、近隣では稲作する農家は皆無に。畑だって、仕事じゃなく、区画が小分けされていて、それぞれの権利者が自分達で食べる分を楽しみ半分で作っている。大概が、老婦人。息子(娘)夫婦世代が家族の中核になり、旦那はとっくに定年で年金や蓄えで暮らせる。旦那は町内会やら趣味。奥さんも近所同士の付き合いで忙がしいが、畑からの自前の野菜で食卓を潤すのが、役目であり自慢であり楽しみなのだろう。
となると、用水路の存在意義は、奈辺にありや? 降雨時の排水路か。あるいは、隣家の親父の立ち小便のターゲットか(我が家の敷地なのに)。いっそのこと、奴に立ち小便されないよう、埋め立ててしまうか。あるいは、コンクリートの用水路ではあるが、苔や藻の蔓延るまま、雑草の生え放題にし、ちょっと見ただけでは、コンクリート鋪装なんてほんとにされてたの? という状態にしてしまうか。
目的というか目標は、螢の舞う小さな水路の復活である! でも、田圃こそなくなったけど、畑はささやかに残っているし、埋め立ては論外だとして、水路の近くでは畑仕事する人もいるし、用水路を雑草生え放題では、顰蹙ものだろうか。でも、用水路としての機能は残すわけだし、当面は多少、どぶくさくても我慢してもらうしかない。それより、蛍の舞う小川のほうが面白いのではないか。といいつつ(思いつつ)、水草や苔や藻などを粗方、浚ってしまった。
← ピーター・ゴドフリー=スミス (著)『タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源』(夏目 大 (翻訳) みすず書房)
本書を読了した。タコ。食べるのも好き。ワカメのタコやキュウリの酢の物を今日も食べたばかり。だけど、タコに犬並みの心があると知ると、これからはちょっと躊躇われる……けど、食べますね。
葛飾北斎の版画でも有名だ。
本書によると、人間とタコの属する頭足類とは、五億から六億年前に共通の先祖から枝分かれした。進化の上では、随分と遠い。だが、著者によると、水族館や海でタコを観察し、時に眼が合ったりすると、どう見ても、タコには心がある、好奇心があって、しげしげとこちらを観察していると思えてならないという。心の定義は難しいが、目と目が合って何かを感じあう(それが錯覚だとしても)と感じてしまうのは、何かを考えさせる。哺乳類には心があると見做す人は多いだろう。
一方では、タコにはどうか。著者によると、心の兆しは、細胞が地球上に生まれた当初からあったという。細胞の内と外との感応がある時点で心の萌芽があったと考えるわけである。驚いたことに、タコ(種類にもよるが)の寿命は短い。子供を産むと、親はあっという間に死んでしまうという。寿命は二年か。だとすると、その短い間に知能を発達させ、好奇心をも育むことになる。その凄まじい能力の発達の速さこそ、驚異ではなかろうか。タコへの興味は尽きない。次もタコ絡みの本を読む!
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