茫漠たる広大な時空
← 『世界の名著〈第14〉アウグスティヌス』( 山田 晶 (編集) 中央公論社 (1968))
大学生になって間もない5月に入手し読み始めた。
4月17日、伊達政宗もゆかりの深い、瑞巌寺へ。桜が満開で、仙台が自分を歓迎してくれているように感じていたっけ。
悲しいかな、何ゆえに本書を手にしたのか覚えていない。中央公論社の世界の名著シリーズを高校生の頃より片っ端から読み倒さんとした一貫だったのは確か。
内緒だが、アウグスティヌスのこの「告白」には、性慾との凄まじい格闘が赤裸々に語られていて、そのくだりのあることが、キリスト教には格別の関心のなかった我輩が本書を敬遠させなかった大きな要因になった。
(当時の下宿先は、大家さんがカトリック信者だったし、四人いた下宿人のうち、一人はやはり、カトリック信者、一人はプロテスタントだった。富山では全く接したことのないキリスト教の濃厚な雰囲気があったことも、何かしら関係があったか……)
ということで、今日から再読する。
→ 同じ観音堂には、仕切りで区切られた隣の空間に阿弥陀様が安置されている。このお堂は、ちゃんと花が供えられているし、春から秋にかけては草むしりされ、冬には雪搔きもされている。お寺の境内でもない、町の一角にこんな観音堂があるって、珍しいのでは。先日、富山市石倉にある延命地蔵尊を紹介したので、今日はここです。
先日、ある電停で、本を手に立っている男子高校生を見た。スマホじゃなく、本を手に電車待ちする姿、久しぶりに見た。何の本なのか分からないけど、新鮮というか、懐かしい光景。滅多に見なくなったナー。
連休だったこともあり、レールモントフ 作の『現代の英雄』 を昨日今日で一気に読んだ。再読である。
初読は、東京在住時代、サラリーマンになった年の五月だったか。
哲学や文学への関心が深いつもりでいたのに、サラリーマンになり自信を喪失していた頃だった。
というより、自分を見放したような気分だったからこそ、この本を手にしたのか。
← レールモントフ 作『現代の英雄』 (中村 融 訳 岩波文庫 ) 「英雄とは,時代の犠牲者に他ならない.二十七歳にして決闘でたおれた反逆詩人のもっとも完成度の高い散文作品」。
ロシア文学には、高校時代の終わりから親しんできた。ドストエフスキーやトルストイ、ツルゲーネフ、プーシキン、ガルシン、チェーホフ、ゴーゴリ、ショーロホフ、ゴーリキー、ゴンチャロフ、(ポーランドの作家だが)シェンキェヴィチなどなど。
当時は未だ、ナボコフ、パステルナーク、ソルジェニーツィンなどは読んでいない。
レールモントフ は、27歳で決闘で死んだ。早熟の天才だった。あるいは自分の才能の重みに耐えられなかったのか。反権力の姿勢を貫き、政府に警戒され、迫害され、僻遠の地で軍務につく。帝政ロシアで時代閉塞の状況にあり、将来への望みを持てない。
乗馬も射撃も得意な主人公のペチョーリンは、己の道を見いだせない。かといって権力や出世の道に活路を見出す柔軟さなど皆無。何かが彼をむしばむ。愛も恋も出世も彼の心を満たさない。自らの命をもてあそぶかのように、親友との銃による決闘の場に立つ。親友を射殺してしまう。こんなはずじゃなかったのに。
ニヒルに徹してテロリストになるとか、政治を志向する情熱もない。まさに、ペチョーリンはプーシキンのオネーギンからツルゲーネフに至る余計ものの系譜に連なる人物である。
本書を再読して、サラリーマンになった頃の、落胆の気持ちを思い出してしまった。
同時に、ブッツァーティ作の『タタール人の砂漠』の光景をも連想していた。日本人には想像を絶する茫漠たる広大な時空。
← 観音堂 33体の観音様が収められている。なぜ、これだけの観音様が集められているのか、分からない。謂れを書いた説明書きもない。一説には、水害に見舞われた数々のお寺の観音様を集めたとか、やはり水害に遭った際、各地の田圃や畑などから現れ出た観音様を一か所に集め供養したとか。あるいは、今は廃寺となったお寺に安置されていた観音様を移転させたとか(その寺には悲しい歴史があるというが…)。
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