12月の読書メーターまとめ
昨夜、寝たのは何時ごろだったか。この頃は細切れ寝なので正直、分からない。
起きたのは(これまた細切れなので、最後に起きた時間とすると)七時半。トイレに行って、小窓を開けたら、庭木(金木犀)の枝葉を透かして朝日が拝めた。
この数年で、こんな時間に起きて、しかも、朝の木漏れ日を眺めるなんて、初めてではなかろうか。
今朝未明、ル・クレジオの『大洪水』を読了した(本文は昨夜半で、解説などは夜半過ぎ)。昨年最後の本というのか、年初の本と言うのか曖昧だが、なかなかいい読書となった。
12月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:3911
ナイス数:2307
この宇宙の片隅に ―宇宙の始まりから生命の意味を考える50章―の感想
実にバランス感覚のある書き手だと感じた。真っ当な科学者だったら採り上げない(あるいは頭から否定するはずの)超心理や霊などの話も、ぞんざいには扱わず、我々が知りえている最新の科学からは、心霊現象は(あるいは心霊現象を起こすような未知の素粒子は)存在しないことを淡々と説く。存在するなら、既存(既知)の素粒子と、何らかの形で反応するはずだが、一切、そのような現象は見られないから云々。
読了日:12月30日 著者:ショーン・キャロル
悪魔祓い (岩波文庫)の感想
ル・クレジオは、学生時代だったか、『物質的恍惚』や『愛する大地』を読んで以来、折に触れ、彼の作品を読んできた。
初めはかなり見当違いな読み方をしてきたと、今更ながらに思う。詩人の感性をまるで持ち合わせない小生だから、仕方ないとはいえ、それでも、この数年だけでも、『海を見たことがなかった少年』や『隔離の島』『物質的恍惚』(再読)などを読んできた。
中南米の作家の本も立て続けによんできて、それなりに味わって読めるようになっている(と自分では思っている)。
読了日:12月27日 著者:ル・クレジオ
カフカ全集〈6〉城 (1981年)の感想
目の前に目当ての城があるのに、どうやってもたどり着けない。あがけばあがくほど、混迷の中に沈み込んでいく。
一体、何を描いているのか。神へ至る道? 卑近に言えば、1920年代、いよいよ肥大してきた官僚制度の、絡み合いもつれ合ってほどけない網の目にもがく市民? もっと身近に引き寄せると、それなりの町に生まれ育った男が、謎の城の暗黙の支配に雁字搦めとなっている村に紛れ込み、どうやっても溶け込むことのできない悪戦苦闘?
読了日:12月25日 著者:
塩を食う女たち 聞書・北米の黒人女性の感想
「1950年代から60年代の「公民権運動」を“キング牧師の運動”だと理解する見方」や、非抵抗運動だとか、先入観のように埋め込まれている紋切り型の見方を変えてくれる。
黒人の置かれていた差別的な立場。その中でも女性はさらに厳しい日々を生きていた。
男は現実に抗うことを諦めると、酒に溺れ、女性や子供への暴力で鬱憤を紛らす。
読了日:12月24日 著者:藤本和子
バウドリーノ(下) (岩波文庫)の感想
この手の、冒険ロマンもの、ファンタジーものは、好き嫌いが分かれるだろう。小生の好みではなかった。ハリポタも一切、受け付けなかったし。そういうロマン心は、数十年の昔、喪失してしまった。
自分の貧しい心を自覚させられただけ。読み切るのが苦痛だった。
読了日:12月17日 著者:ウンベルト・エーコ
ハツカネズミと人間 (新潮文庫)の感想
決してハッピーエンドには終わらないだろうってことは、最初から想像がつくのだが、それでも読者の勝手で心温まる、余韻溢れる読後感を与えてくれるだろうと、つい期待してしまう。
案の定の悲劇の結末。スタインベックは、あくまで現実をリアルに、まさにありのままに描く。当時のカリフォルニアの農場で働く流れ者の男たちの運命に例外はない。
古くからいる連中は、みんな夢を抱き、いつかはと思いつつ、現実は、酒と女にカネを使い果たし、人生をも浪費してしまってきたと知っている。この物語の主人公たちだって。
読了日:12月16日 著者:ジョン スタインベック
田園の憂鬱 (新潮文庫)の感想
前回のブログ日記にあれこれ書いた。
やや、持ち上げすぎだったかな。方法的模索や、まして思想上の煩悶は皆無だし。過敏な感性をもて余している(私小説風な内向性に留まっている)だけなのか、もう少し読んで確かめてみる。
薔薇の憂鬱と題したほうがいいのではなんて、賢しらなことを書いてしまったが、副題に「病める薔薇」とあるではないか。なんて、不注意な吾輩。
ただ、読了してみて、過敏な感性をもて余している(私小説風な内向性に留まっている)だけなのでは、という懸念が当たっているという心証を抱いてしまった。
読了日:12月14日 著者:佐藤 春夫
バウドリーノ(上) (岩波文庫)の感想
最初は20頁や30頁を読むようなペース。この日月と連休で、残りの250頁ほどを一気に。半ばころから物語世界に少しずつ馴染めてきた。
語り手たちの、日本人にははるか遠い世界が舞台とする、吾輩の素養ではまるでチンプンカンプンの、機知に富み過ぎた会話にも慣れてきた。 感想にもならないメモは昨日書いたので、ちゃんとした感想は(書けたらだけど)下巻を読んでから。
読了日:12月10日 著者:ウンベルト・エーコ
インディアス史〈1〉 (岩波文庫)の感想
圧縮版とはいえ、ラス・カサス 著『インディアスの破壊についての簡潔な報告』(染田 秀藤 訳 岩波文庫)に比べるまでもなく、圧倒的に詳しい。なんたって7巻本なのである。
よほど強い関心がないと、冗長に感じられるかもしれない。
けれど、コロン(コロンブス)らの言動が実に詳しい。
ラス・カサスは、褒めるべきは褒め、非難すべきは苛烈に指弾する。
読了日:12月09日 著者:ラス・カサス
今昔物語 (ちくま文庫)の感想
前回……たぶん、十年ほど前に読んだ時より楽しめた。福永氏の現代語訳が明晰で且つ馴染みやすい。昔の物語のはずなのに、すっとその世界に入って行ける。
平安(に限らないだろうが)の世は、都に限らず治安は今の我々には想像も及ばないものだったのだろうと痛感させられる。夜の道を女が一人歩くなんて、論外。男でも相当な用意か覚悟が要る。
日本は国土的に狭いと思われがちだが、一昔前は、一歩、町中を離れると、そこは異郷。まして夜になると闇の世界があるだけ。闇の深さが今とは雲泥の差なのである。
読了日:12月05日 著者(現代語訳):福永武彦
植物たちの私生活の感想
本作の冒頭は、かなりショッキングな叙述が続き、苦しくなるほどである。国家に異を唱える言動をしたと、逮捕され拷問された挙句、危険な戦地へ送られる。案の定、被弾し足を喪失する。
そうした兄を持つ弟が小説の語り手である。絶望的な状況に家の一室で苦悶の日々を送る兄。そんな兄と兄の恋人を巡って複雑な感情を持て余す弟。
正直、怒涛といっていい場面の連続する最初の数十頁に読むのを止めたいと思ったものだ。
読了日:12月02日 著者:李承雨
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