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2018/12/23

カフカと量子論と

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← フランツ・カフカ/著『カフカ全集 6 城』(前田敬作/訳 新潮社)

 今日は冬晴れ。気温もツーリングに絶好。けれど、昨夜少々残業して、帰宅したのが丑三つ時。
 なれない残業で、日中はぐったりして、自転車で買い物に行くのがやっとだった。
 せっかくの上天気だったのに、勿体ない。
 例によって(?)、庭の落ち葉拾い。松葉がすごい。まだまだ落ちそうだ。栄養が足りないのだろうか。

 この二週間、(在宅の日は)30から40頁ずつ、フランツ・カフカ/著『カフカ全集 6 城』を読み続けている。
 本書では2回目。文庫本でも一度、読んだことがあるので、本作は3回目となる。

 本作は、知られた作品なので、敢えて紹介するまでもないだろう。
 出版社による内容案内によると:

測量師のKは深い雪の中に横たわる村に到着するが、仕事を依頼された城の伯爵家からは何の連絡もない。村での生活が始まると、村長に翻弄されたり、正体不明の助手をつけられたり、はては宿屋の酒場で働く女性と同棲する羽目に陥る。しかし、神秘的な“城”は外来者Kに対して永遠にその門を開こうとしない……。職業が人間の唯一の存在形式となった現代人の疎外された姿を抉り出す」。

 また、カフカについては、:
(1883-1924)オーストリア=ハンガリー帝国領当時のプラハで、ユダヤ人の商家に生る。プラハ大学で法学を修めた後、肺結核で夭折するまで実直に勤めた労働災害保険協会での日々は、官僚機構の冷酷奇怪な幻像を生む土壌となる。生前発表された『変身』、死後注目を集めることになる『審判』『城』等、人間存在の不条理を主題とするシュルレアリスム風の作品群を残している。現代実存主義文学の先駆者」。

 さて、  過日より(ほぼカフカの「城」と同時に)、ショーン・キャロル著の『この宇宙の片隅に 宇宙の始まりから生命の意味を考える50章』を読み始めた。
 今、自宅では、『カフカ全集〈6〉城 』(前田敬作訳 1981年 新潮社)と交互に読んでいっている。
 まるで別次元の本の世界を行ったり来たり。読書の醍醐味である。

 それはそれとして、カフカの「城」を読んでいて、目の前にあるはずだし、実際、その関係者らしい人物たちとも、あるいは地元の村の人々とも交流はできなくはないのに、肝心の城や、自分を採用する担当者にいつまで経ってもまともに会えない不分明さに、いらいらする。だが、読ませる。

 ただ、今回、読んでいて、上記したショーン・キャロル著の『この宇宙の片隅に 宇宙の始まりから生命の意味を考える50章』に引きずられてか、カフカの小説の世界と、量子力学とのある種の似たような世界(むろん、似て非なる!)を感じてしまった。

 一つ一つの現実の要素…物質はもちろん、構成する原子(その中の陽子や電子)について量子力学の数式の上では、この上なく厳密に捉えられるし、実験や観測値とほぼぴったり符合する、なのに、対象となる電子やニュートリノなどの素粒子は(位置と質量を同時には)掴めない、そのつかみどころのなさを、カフカの小説に感じている。

 カフカは、1924年に亡くなっている。
 一方、「1924年にルイ・ド・ブロイは、アインシュタインが1905年に発表した光量子仮説に基いて、光が粒子のように振る舞うように、物質も波のように振る舞うという仮説を立て、粒子の運動量と物質波の波長を結びつけた」など、まさにカフカの晩年は量子力学のまさに形成期である。

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← ショーン・キャロル著『この宇宙の片隅に 宇宙の始まりから生命の意味を考える50章』(松浦俊輔 青土社)「世界的な理論物理学者が、ダーウィン、アインシュタインから、生命、意識、宇宙の起源までを縦横無尽に語り、この宇宙でわれわれが生きる意味を解き明かす」とか。

 恐らくは、カフカは物理学のそんな研究など知る由もなかったろう(但し、アインシュタインの相対性理論のことは仄聞していたかも。というのも、例えば我が日本についても、「大正11(1922)年11月17日、アインシュタインを乗せた日本郵船の北野丸は、瀬戸内海を通って、神戸港に近づいた」など、アインシュタインフィーバーは世界で巻き起こっていたのだから)。
 ただ、時代の相関を勝手に嗅ぎ取ってしまっているだけである。
 ホント、先入観とは思いつつも、また、量子力学にも関係する本を読んでいることで、かなり引きずられてしまっているが故の偏った印象と分かりつつも、シュルレアリスムとか実存主義とかよりも、目の前に見えている現実のはずなのに、いざ近寄って確かめる(互いに意見を交わしてみる)と、何処までも食い違って齟齬してしまう、そのもどかしさに、何か似た構造を感じてしまうのだ。

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