ジョン・スタインベック『ハツカネズミと人間』に感動
← ジョン・スタインベック/著『ハツカネズミと人間』(大浦暁生/訳 新潮文庫) 「からだも知恵も対照的なのっぽのレニーとちびのジョージ。渡り鳥のような二人の労働者の、ささやかな夢。カリフォルニアの農場を転々として働く男たちの友情、たくましい生命力、そして苛酷な現実と悲劇を、温かいヒューマニズムの眼差しで描いたスタインベックの永遠の名作」とか。
今朝は今冬一番の冷え込み。でも、まさか零下だったとは。
日中は晴れたのだが、寒風が頬に痛い。
そんな中、連休でもあり、明日からは氷雨が降る予報なので、今日のうちにと、バイクを駆って書店へ。
二か月ぶりに本の買い出し。まとめ買い。
書店で本を物色する楽しみは、書店が次々と減っていく中で、なかなか気軽にはできない。
家から下駄をはいて、近所の書店へ、なんて日常は、遠くなってしまった。
淋しいものである。
ジョン・スタインベック作の『ハツカネズミと人間』を昨日(土曜日)、車中での待機中に読み始め、三分の二ほどまで進み、今朝のうちに残りの60頁ほどを読み通した。
実に感動の作品。今となっては古いタイプの、ヒューマニズム溢れる作品。
カリフォルニア州モントレー郡サリナスなる街(物語の時代は町かな)の農村部が舞台らしい。本には地図が載っていないので、スマホで調べる。今は15万人の街。通勤に便利な住宅地。当時は、まだ田舎だったのかな。
スタインベックは、中学生の頃、「怒りの葡萄」を読んで以来、気にかけてきた作家。「老人と海」は、何度か読んだけど、「怒りの葡萄」は、一回きり。書庫に埋もれてるかも。
決してハッピーエンドには終わらないだろうってことは、最初から想像がつくのだが、それでも読者の勝手で心温まる、余韻溢れる読後感を与えてくれるだろうと、つい期待してしまう。
案の定の悲劇の結末。スタインベックは、あくまで現実をリアルに、まさにありのままに描く。当時のカリフォルニアの農場で働く流れ者の男たちの運命に例外はない。
古くからいる連中は、みんな夢を抱き、いつかはと思いつつ、現実は、酒と女にカネを使い果たし、人生をも浪費してしまってきたと知っている。この物語の主人公たちだって。
→ セイダカアワダチソウの今。あの黄色の小花たちが今や銀髪に。ススキの穂の色に似せている……わけないね。
こう書くと、ネタバレのようだが、この作品の要諦は、戯曲のような登場人物たちの会話にある。台詞(せりふ)というべきか。決して読み流したくはない、場面ごとの叙述も、やや丁寧な「ト書き」のようである。
行動や身なりなども重要なファクターなのだが、それぞれの人物の台詞や呟きに人柄が如実に現れていて、スタインベックの観察眼と表現力の卓抜さが生きている。
文句なしの傑作だ。
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