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2018/11/15

虚実皮膜の自伝

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← 篠田 鉱造 著 『増補 幕末百話』(岩波文庫) 「幕末維新を目のあたりにした古老たちの話は想像もつかない面白いことずくめ.日本社会の激変ぶりを語る実話集」、さらに、「明治も半ば,篠田鉱造(1871-1965)は幕末の古老の話の採集を思い立った.廃刀から丸腰,ちょんまげから散切,士族の商法,殿様の栄耀,お国入りの騒ぎ,辻斬りの有様,安政の大地震,道具の投売……幕末維新を目のあたりにした人々の話は,想像もつかない面白いことずくめだった.日本社会の激変期を語る貴重な証言集」とか。

 篠田鉱造著の『増補 幕末百話』を読み始めた。幕末など江戸時代もの、明治や大正、昭和の初期の思い出話や実話風な本を読むのが好き。

「半七」再び!」:
 

半七ものが懐かしく感じられるのには、やや変則的な理由があって、それは綺堂が東京芝高輪生まれだということもある。
 本ブログでも幾度となく書いてきたが、小生は高輪に十年近く暮らした。
 そのこともあって、高輪に縁のある作家にも勝手な思い入れをしてしまう。
 島崎藤村がその筆頭だが、そこに岡本綺堂が加わったわけである。

「幻の画家」橘 小夢を知る」:
 
唯美主義的というか耽美主義的というか、美と愛に惑溺した挿絵画家。
 大正時代ならともかく、昭和の戦前戦中には不穏な画家扱いというのも分からなくもないが、戦後ずっと無名の存在だったというのが分からない。

田山花袋『東京の三十年』の周辺」:
 

本書を手に取ったのは、藤村や綺堂など、明治や大正、昭和の初めなど、古き良き(かどうか分からないが)東京の往時の姿を、せめてその影をでも慕う気持ちの一環である。

島崎藤村『桜の実の熟する時』の周辺」:
 
前にも紹介したが自然描写が素晴らしい。幾度も木曽と江戸を往復する青山半蔵の目で見た形で描かれる自然と、そして長い道のりを一歩一歩読者(藤村そして我々)が一緒に歩いているかのような感覚を実感タップリに<体験>させてくれる。歩く思考と瞑想の書でもあるのだ。
『夜明け前』が有名な「木曽路はすべて山の中である」という印象深い一行から始まるのは、もっと強く受け止めたほうがいいのかもしれない。

 さて以下の本も、回想の書であり思い出の記であり、自伝であり、関連する本と言えるかもしれない。

Hotta

← 堀田善衛『若き日の詩人たちの肖像 〈下〉』(集英社文庫) 「“しかと定めもつかぬ颶風が荒れ狂い、その風の吹くまま”右へ左へ流されてゆく若者たち。荒涼たる時代の空間をえがきだして、戦中の暗い時間の中に成長する魂の遍歴の典型をつくりだして、青春の詩と真実を生き生きと伝える自伝長篇完結篇(第三部・第四部)」。

 堀田善衛『若き日の詩人たちの肖像 〈下〉』を今朝未明、読了した。

 車中での待機中に上下とも読んできたが、最後の20頁余りは自宅で読んだ。
 堀田善衛については、それなりに幾つかの作品を読んできたし、本作についても、車中でスマホを通じて、読書メーターに感想めいたことをメモってきた。
 その都度、感じたのは、堀田の素養の深さと、何処までも自分の知性と感性で考え生き抜く強さ。

 本書は自伝風の作品で、虚構の部分も多いようだ。
 というか、虚実を自在に往還する、類を見ない作品足り得ている。
 こういう国際性も豊かな思索の人が、視野の狭さが息苦しさに繋がっている富山に生まれていたとは、驚きである。

 以下、過去の堀田善衛関連のブログ(の一部)である。

高岡・伏木の芥川賞作家 堀田善衛
堀田善衞に遭いに行く」:
 

アガサ・クリスティの『白昼の悪魔』の最初の邦訳者であり、作家の生地は伏木で、吾輩にとっては地元とまではいかないが、富山県人としては少なからず関心を抱いてきた。『広場の孤独』はもちろんだが、数ある著作の中で、『ゴヤ』『方丈記私記』『定家明月記私抄』『時間』『天上大風』などを読んできた。怪獣映画『モスラ』の原作者の一人だとは、今回、足を運んで会場の展示で見て初めて知った。当時、見た記憶がある。
 富山が生んだ作家の中でもかなりシャープな人物という印象がある。世界的スケールの視野がある、富山では稀有の存在だと評価している。この機会を生かし、幾つか再読してみたい。

堀田善衛著の『方丈記私記』を今、読む意味
土井さん、「超新星発見」から定家のこと

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