『山海経』に古代中国を観る
← 玄関の戸を開けると、いきなり!とばかりに、紅葉の鮮烈な赤。もう数日も経てば、裸木になる瀬戸際の、無音の絶唱。周りの常緑樹は、素知らぬ顔でいつに変わらぬ風情を保っている。常緑の葉っぱもまた凄いと感じる。枝からはぐれ落ちても、何日も艶のある緑を失わない。命への執着? 紅葉し、樹木の毒素の排出を兼ねて散らせる生き方もあれば、さて、常緑樹は樹木の中の毒素をどうやって排除してるのだろう? この疑問にネッ友が答えてくれた。常緑樹だって、新芽が生まれ、古い葉は落ち葉となると:「常緑樹は、なぜ緑を保っているのか」
今日は秋晴れ。十月下旬の日より。いつものように、午後四時から庭仕事に汗を流した。
ほとんど中腰での作業なので、30分もしないうちに汗が滲む。
五時過ぎには鶴瓶落としとばかりに一気に宵闇が辺りを包む。暗い中、作業を終えて風呂場へ。
『山海経 中国古代の神話世界』を車中での待機中に読み始めた……のだが。
中国の古典は一通りは読みたい。少なくとも明治維新……昭和の半ばまでは基本的な素養のだったのだし。特に本書は特異な内容。奇っ怪な、怨霊怪異にも繋がるような怪物満載。写真もリアルな粗描もない、噂が頼りだった昔。存在すると信じられていたのだろう。夜も闇も森も海も池も沼も、生き物も、そしてヒトも、何もかもが怖い!
本書。昨日の待機中に一気に読み通した…ってのは気が引ける……通覧した。
→ 裏庭の石蕗が今を盛りと。一方で、常緑樹でない、紅葉などの木々は風の吹くたび、黄色や赤の葉っぱが散っていく。寂しい庭が一層、淋しくなっていく。
読了した……とは到底、言えない。理解不能だった。妖怪や魑魅魍魎の跋扈する、戦国時代など古い中国にて記録されていたものが、文献が散逸し、あるいは回収され、何人かの人物によって編集されたものと思われる。奇妙奇天烈な生き物が登場する。そうした怪物を食べたり傷口に体液を塗ったりすると、生き物ごとに特定の病気などに効果がある、などと。
中国漢方は数千年の歴史があるとか。ありとあらゆるものを貪欲に見、殺し、食べ、生き延びてきた。嘗てはあったかもしれない、森林も大半は青銅器や鉄器の制作や、都の無数の建物を作るためになぎ倒されていった。が、遠い昔、日本がまだ縄文時代だったころには、中国には今に残る(あるいは消えていった)記録や文献が作られてきた。深い山や森、雄大な河、砂漠、多種多様な民族と宗教(習俗、邪教)する広大な世界。どこに何があるか、その全てを把握できた人はいなかった。人の噂と想像(妄想)に頼る以外に情報を把握する術もない。
← 昨日、庄川美術館を訪れて、初めて松村外次郎なる作家を知ったなどと書いたが、とんでもない! 昨年くらいまで、仕事の最中、松川べりで待機していた場所がある。まさに、そのすぐ近くに松村氏の作品が野外展示されていたのだ。松川沿いは、彫刻作品が幾つも展示されている。その中の一つがまさにこれだったのだ。
何もかもを記録していくしかない。その真偽や真贋は読み手次第なのである。今に残る「山海経」には、我々の目には魑魅魍魎に属するような妖怪めいた生き物が多数描かれ示されている。一見すると変てこだが、小生はその大半の絵が陳腐に思えた。何も、あり得ない怪物を描いている、その稚拙さを言い募るわけではない。これらは後世「山海経」が編纂する際に、改めて誰かが描いたもの。紀元前など遠い昔に描かれていただろう、当時の人々が<見聞き>し、伝え聞いた怪物の姿を描いたものではないだろうと思えてしまうからだ。
← 『山海経 中国古代の神話世界』(高馬三良 訳 平凡社ライブラリー) 「想像上の世界を縦横に走る山脈とそこに息づく草木・鳥獣・虫魚、鬼神・怪物。無名の人々によって語り継がれてきた、中国古代人の壮大な世界。解説=水木しげる」。
深い闇と不可思議の支配する世界。山も森も河も池も沼も、空も海も地も、全てが未知の世界。だからこそ、人は語ろうとし、表現しようとし、記録し、見聞きした全てに名前を付す。存在するか否かではなく、想像(妄想)の中の影か陽炎だろうと、観、聞き、嗅ぎ取り、感じ、想像した世界は全て言葉に置き換えられていく。そうすることで、この世はまさにこの世、つまり、人間の世界となり、人の差配の及ぶ世界へと還元されていく。言葉と文字と記号とで、世界を再構成する人間という生き物の生き残り戦略の要諦がここにあると思う。
少なくとも、古代中国のある人々は、そう決心し実現してきたのだ。
我が日本の古代以前の人々は、心(脳裏)に刻み、土に縄文の形で刻み込んできたのだ。ただ、文字という手法は編み出せなかった。
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