『テンペスト』……野蛮で奇形の奴隷
← シェイクスピア 著『テンペスト』(小田島 雄志 訳 白水Uブックス)
シェイクスピア作の『テンペスト』を一昨日、読了した。
登場人物が多い。幸い、人物の名前やキャラクターが冒頭で一覧となっている。
何十回、その一覧を覗いたことか。
情けないことに、最初に読んだ印象は、その繰り返しが恥ずかしいほど、多いってことばかり。
なので、仕事を挟んだ翌日、今度はざっとだが、再読。
当時の小説や戯曲には、妖精やら魔法やら、道化、そして本作では野蛮で奇形の奴隷であるキャリバンが登場する。狂言回しのような存在。
→ 俺は河原の枯れすすき。陽光浴びて のびのび。放浪のすばらしさ!
吾輩の印象では、やはり、このキャリバン(や道化、酔漢の男ら)ばかりがリアルに表現されていたということ。
思えば、ドストエフスキーの『罪と罰』での、家族を飢餓から救うため、売春婦となった娘を持つ、飲んだくれの九等官の退職官吏マルメラードフや、妻が多額の遺産を遺して死んだスヴィドリガイロフらの人物が登場する場面が一番、リアルだったのを想起させる。
あるいは、ゲーテの畢生の作品『ファウスト』にしても、「悪魔と契約して最後には魂を奪われ体を四散されたと云う奇怪な伝説」に基づいていることが詩篇に不気味さをもたらしている。
フローベールの『聖アントワーヌの誘惑』も、誘惑に魅せられる場面がえげつなさが細部に渡って描かれてこそ、ここにフローベールの骨身に染みる秘密があるのだと感じさせられてしまう。
ラスコーリニコフにしても、アントワーヌにしても、ファウストにしても、それこそ、特に『テンペスト』の主人公らなどは、何か、話がうまく行き過ぎだと、鼻白むというか、とてもじゃないが感情移入はできないのとは、大違いなのである。
むしろ、脇役かもしれないが、狂言回しの道化らこそ、泥水の底からでしか見えない何かを示してくれていると感じるのである。
← さきほど、雨の中、庭に出てみた。陽当たりにあまり恵まれない我が家の庭。紅葉がやたらと遅い。黄葉する前に散ってしまいそう。さて画像の木は、ヒイラギ。今夏だったか知った。名前が判明するのに10年を費やした。そうそう、この時期になると開花する。白い小花。
昨日、ヘンリー・ソロー著の『森の生活』を書庫で探したけど、見付からなかった。過去、2回、読もうとしたけど、数十頁で頓挫。でも、フンボルトの伝記を読んで、ソローの立派さを再認識。3度めの正直にしたい。
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