白石『折たく柴の記』からE・ガレアーノ『収奪された大地』へ
→ 画像はミニトマト。疲れたので、キュウリは止めた。
今日も庭仕事。数年前、謎の原因で枯れ木と化した貴重な樅ノ木の伐採作業を開始した。いつか再生するのではと待ち続けたが、ついに諦めた。取りあえず、枝の刈り込み。と言っても、手や腕っぷしでパキパキ折れる。雨が降らないのに、雑草は元気。負ける……負けないぞ。
新井白石著の『折たく柴の記』を一か月以上を要して、懇切な注釈を頼りに読み通した。
← 新井 白石 著『折たく柴の記』( 松村 明 校注 岩波文庫)
一介の武士が将軍の信頼を得て幕府の枢要な政策に関与した(ちょっとだけ、菅原道真を連想した)。古今の典籍に詳しく、幕府(将軍や老中ら)が取り扱いに迷う課題に次々と提言していった。生類憐みの令で有名な、綱吉のやや放縦な政策を改革。「正徳の治」である。
白石の性格そのままに生真面目な政治。白石によって遠ざけられた不満分子により、次の吉宗の時代になって地位を失った。が、お蔭で時間が生まれ、数々の著作を世に出したのだから、皮肉なもの。
白石は有能だったが、苦手な分野もある。特に経済。経済政策でも経済の実態を分かっていないのに、幕府の改鋳政策などに異を唱え続け、結果的に徳川政権に禍根を残したとも云えそう。(徳川綱吉の時代に荻原重秀の行った通貨政策が白石にはうさん臭いものに見えたようだ。)
ちなみに、本書は白石の日記であり備忘録であり、子孫への教訓の書。白石の乳や祖父らの考えや行動をほとんど知るすべのなかった白石が、そんな残念な思いを子孫にさせてはならないと、自らの生まれや数々の提言をしたり書面で出した経緯を詳しく書いた(これらは、吉宗の時代になってほとんどが廃棄されたという)。
あくまで日記(私文書)ということで、公開する気はなかった。白石の手書きの書が残っているのは稀有なことかも。
→ こんな猛暑の最中に花を咲かせるなんて、その根性は並大抵じゃない。ユリ? 名前、忘れちゃってゴメンね。(ネッ友に教えていただいた。高砂百合だとか:「季節の花 300 鉄砲百合(テッポウユリ)、高砂百合(タカサゴユリ)」)
余談だが、書店で気紛れに本書を手に取ってみたら、白石の紹介の頁に、墓が東京は中野区の上高田の寺にあると知ったことが本書を買う動機になったというのは、大きな声では書けない事実である:「髙德寺について|東京都中野にある寺院、新井白石記念ホール」
上高田は、小生が上京して最初に住んだ地。近くに新井薬師があった。新井繋がり…ではないようだ:「新井薬師前 – なるほど! 東京 地名の由来」
E・ガレアーノ (著)『収奪された大地 ラテンアメリカ500年 新版』を四半世紀ぶりに入手。
1991年に最初に刊行。新聞の書評で知った。が、当時は日々睡眠時間が3時間あるかないかで、読書どころじゃなかった(窓際族)。いつしか題名も忘れ、幻の書に。それが、この読書メーターで再発見遭遇。収奪された中南米大陸の実情を知ることは、我が読書のテーマの一つ。発見して即、入手。北米もヨーロッパからの移民たちによって、先住民族は虐殺され、壊滅的打撃を被った。でも、その記録は少ない。白人がまともに記録するはずもなく、逆に西部開拓のロマンとして描かれるのみ。
← E・ガレアーノ (著)『収奪された大地 ラテンアメリカ500年 新版』(,大久保 光夫 (訳) 藤原書店) 「世界史や官製の歴史が無視、あるいは隠蔽してきた無数の事実をちりばめながら、過去五百年の永きに渡ってラテンアメリカが外国によって開発=収奪されてきたさまを、描き出したラテンアメリカ史の古典」。
小生は、1994年2月に首になり、95年の春まで失業。その間の一年は、阪神淡路大震災やオウム事件があったし、プール通いで会社での残業漬けの毎日で傷んだ体を癒した。読書も、図書館通いで、300冊ほどの本に接することができた。いろんな作家を再発見した。島崎藤村の『夜明け前』、メルヴィルの『白鯨』、マルケスの『百年の孤独』などは、いずれも再読なのだが、その凄みを初めて知ったと言って過言ではない。ジョージ・エリオットなどの遭遇も収穫。南米文学もあれこれ読むことができたのは、失業し時間があったからだ。
本書が1991年に刊行され、97年に新装版が出ている。吾輩は気づいていない。刊行されて28年目にして入手し、ようやく読めるわけである。収奪された南米大陸。歴史も侵略し植民した欧米によって虚構されてきた。政権すら欧米や多国籍企業によって後押しされた独裁政権として民衆を収奪する構図が今も続いている。独裁(軍事)政権が成ったら、背後に欧米の利権が絡んでいると思っていい。真相は藪の中に封じ込められていく。けれど、徹底して反発する反骨の人びとが必ずいる。著者もその一人だ。
今日から読み始めるよ。
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