4月の読書メーター
四月は、三月以来読み続けてきた、懸案の古典「風土記」を読了したり、フェルディドゥルケなんて奇天烈な作品に出会ったり、莫言の豊乳肥臀に圧倒されたり、一方、ロレンスの『息子と恋人』を再認識したりと、いろいろ充実していたと思う。
山本淳子さんの著書を読む楽しみも新たな世界。源氏物語を一層深く楽しめそう。
4月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:4065
ナイス数:1868
豊乳肥臀 上 (平凡社ライブラリー)の感想
本書の特徴は莫言の表現そのものにある。マルケス、ドノソ、フォークナー。さらに、莫言が本書を書いた時点では、相互共に影響関係はないだろうが、どこかしら、『精霊たちの家』の作家イサベル・アジェンデの作風というか雰囲気をも感じてしまった。こうした、スーパーリアリズム的叙述は現代文学の共通項のようにも感じられる。 中国の戦後の歩みを見てみると、過酷なものだったことが分かる。そんな中国の一面をでも描くには、文学的手法も既存のものでは追い付かないのだろう。作家の直面する現実の圧倒的な塊の凄みを感じる。早速、下巻へ。
読了日:04月29日 著者:莫 言
風土記 (下) 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)の感想
下巻を読み通すのに、一か月以上を要した。地名説話が多い。大和政権が日本各地に勢力を広げていく過程が垣間見える。古くからの呼称があったのだろうが、そこに大和政権の言葉で命名したり、読みかえたり。それにしても、北陸…越中の風土記がないことに物足りなさの念。古代、継体天皇はヒスイの産出を前提にした越の勢力が推した、そんな大事な越路なのに。何が口惜しいって、逸文とはいえ、佐渡を含む越後や気比神宮などの越前、敦賀などの国々の断片はあるのに、越中だけがないってこと。
読了日:04月24日 著者:
平安人の心で「源氏物語」を読む (朝日選書)の感想
山本淳子さんの著書は読み友に推薦されていた(この本ではないが)。書店で見つけたのが(あったのが)本書。紹介されていた本もいいのだろうが、本書も読んで納得の本。
本書を読んでいて、ひたすら教えられることばかりだったが、最後に驚きが待っていた。それは、「『源氏物語』の主人公・光源氏の母・桐壷更衣のモデルは、作者・紫式部の同時代人である一条天皇の中宮・定子だという」説である。
筆者が最初に指摘し唱えた説なのかは、小生には判断のしようがないが、『源氏物語』を一層深く切なる物語として読める気がする。
読了日:04月22日 著者:山本淳子
フェルディドゥルケ (平凡社ライブラリー)の感想
自分には、まったく初の作家。初めて読む作家(の作品)という意味もあるが、それ以上に、従前読んできた大方の作家とはまるで異質な作家だという意味もある。
あるいは、日本でいえば太宰治的な、文壇からは下手すると厄介者というか、鼻つまみ者扱いされる範疇の作家かもしれない。下手するとグロテスクな作風とも感じられるし、文学が真実を描くものだとすると、旧来の作家が見逃すか無視するか、観てみぬふりをしてやり過ごすような場面に執拗にこだわる作家だと感じた。
読了日:04月18日 著者:ヴィトルド ゴンブローヴィッチ
漱石日記 (岩波文庫)の感想
再読。三度目か。
漱石のかなりの量の日記類から、「ロンドン留学日記 『それから』日記 満韓紀行日記 修善寺大患日記 明治の終焉日記 大正三年家庭日記 大正五年最終日記」に絞って編集。
漱石の文学(住まいや行動先の)地図(主に明治時代の東京)は持っている。本書を読んで、留学時代のロンドン地図があればいいなと感じた。修善寺大患日記は、何度読んでも痛ましい。親のことを思い出したり、いずれは自分もこうなるのかなどと、身につまされる思いで読んだ。ここが初めて読んだ頃との感じ方の違いかもしれない。
読了日:04月16日 著者:夏目 漱石
鉱物 人と文化をめぐる物語 (ちくま学芸文庫)の感想
感想というのではなく、本書の話題からスピンアウトした話題を明日のブログで書くつもり。砂漠のバラなど。
読了日:04月14日 著者:堀 秀道
息子と恋人 (ちくま文庫)の感想
彼の生涯は1885年9月11日 - 1930年3月2日。
ってことは、44歳での没。
今更ながら、密度の濃い生涯。しかも、『息子と恋人』(1913年)、『虹』(1915年)、『チャタレー夫人の恋人』(1928年)。つまり、本作『息子と恋人』 は、28歳の作。読了後、訳者あとがきを読んでその事実を知り、少なからざる衝撃を受けた。
『チャタレー夫人の恋人』にしても、43歳の作。
読了日:04月07日 著者:D.H. ロレンス
和モダンvol.9 木を生かした住まいの感想
和風の家、というより、木の家が好き。折々、眺めてはため息をついている。
読了日:04月06日 著者:
漱石書簡集 (岩波文庫)の感想
本書を手にしたのは漱石の人徳に触れたくて。頑固なまでに正直。相手が奥さんでも同じように率直な物言い。相手への理解力。自分の性格や欠点の自覚。
子規はもちろん、虚子、芥川や武者小路実篤、寺田寅彦、和辻哲郎など、高名な人物との交流も興味深いが、彼がロンドンへの留学を経て、文学者というか作家として生きることを決心し、苦闘する場面が興味を越えて励まされる。
読了日:04月05日 著者:夏目 漱石
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