自分というコラージュ
← 岡上 淑子 著『はるかな旅 岡上淑子作品集』(河出書房新社) 「1950年代、瀧口修造により「現代版不思議の国のアリス」と評される鮮烈フォト・コラージュ作品を発表した岡上淑子、国内初の作品集」だとか。ちなみに、本書の表紙の絵は、「The Night of The Dance Party, 1954 」
ふとした偶然で、岡上淑子の作品に再会した。
夢の中の現実。現実の中の夢。両者は堂々巡りを繰り返す。メビウスの輪に出口はない。
彼女の誕生に、新な期待と不安を覚えながら私の指がはしゃいだ日。 海を翔る性、苦悩のレダ、郷愁の罠……と 青い空気の中で彼女達の歌声は鮮でしたのに。(中略) 薔薇を手折った棘の痛みが 彼女達に対する唯一の挨拶と変わってしまったのでした。 実らぬ花の種を蒔いた咎を受けたかのように、私は咲いた女の怨に狼狽します。 けれども深い皺に刻まれた掌には派手すぎる彼女達の装に、 思わず目をそむけると、彼女達は誇らしげに囁くのでした。 “私達は自由よ”と。(「私とコラージュ」1953年より)

→ 岡上淑子作「un lointain voyage」 (Far Journey) 1953 (画像は、「「幻の作家」岡上淑子の全貌に迫る。高知県立美術館で回顧展が開催|美術手帖」より)
夢を抉るは錆た指、 月を裂かうと夜に挑むのですか 星が震えています。 お嬢さん コラージュ作家・岡上淑子さんの若き日の文章。『机』(紀伊國屋書店'53年発行)
岡上淑子は、若き日、マックス・エルンスト作品に衝撃を受けたという。
見る自分が見られる自分になる。見られる自分は多少なりとも演出が可能なのだということを知る。多くの男には場合によっては一生、観客であるしかない神秘の領域を探っていく。仮面を被る自分、仮面の裏の自分、仮面が自分である自分、引き剥がしえない仮面。自分が演出可能だといことは、つまりは、他人も演出している可能性が大だということの自覚。
化粧と鏡。鏡の中の自分は自分である他にない。なのに、化粧を施していく過程で、時に見知らぬ自分に遭遇することさえあったりするのだろう。が、その他人の自分さえも自分の可能性のうちに含まれるのだとしたら、一体、自分とは何なのか。(「初化粧 壺中山紫庵」より)

← 岡上 淑子 著『岡上淑子全作品』(河出書房新社) 「優雅で不穏、繊細で大胆――幻のコラージュ作家・岡上淑子の現存150作品を収めた完全版作品集。文献、所在不明作品一覧など充実の資料と共に作家の全貌に迫る。高知県立美術館公式図録」。本書の表紙の作品は、「《招待》1955年 紙、コラージュ」
日常の生活を平凡に掃き返す私の指から、ふと生まれましたコラージュ。
コラージュ―─他人の作品の拝借。鋏と少しばかりの糊。
芸術……芸術と申せば何んと軽やかな、そして何んと厚かましい純粋でしょう。
ただ私はコラージュが其の冷静な解放の影に、幾分の嘲笑をこめた歌としてではなく、
この偶然の拘束のうえに、意志の象を拓くことを願うのです。
(「コラージュ」1956年より)
「岡上淑子 - Wikipedia」や「岡上淑子コラージュ展-はるかな旅 デザイン・アートの展覧会 & イベント情報 JDN」など参照。
「【岡上淑子】今も新しい、クセになるコラージュ - NAVER まとめ」あるいは、「岡上淑子コラージュ展―はるかな旅|イベント|高知県立美術館」にて幾つか作品を見ることができる。
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