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2018/02/06

今福龍太『ハーフ・ブリード』の示すメキシコ

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← 朝までに10センチほどに。その後は、降ったりやんだり。午後も遅くなって雪の勢いが強くなってきた。粒の大きな、積もる雪。明朝までには、数十センチだろうな。気温もマイナス数度。一旦降った雪は融けずに積もる一方。

 午後の2時ころ(外出前)、4時ころ(買い物や銭湯からの帰宅直後)に除雪。やれやれ。ところが、七時ころ外を観たら、元の木阿弥。今日、三度目の除雪。けれど、九時ころには、除雪の後はきれいさっぱり消えてしまって、一層、深く積もっていた。まだまだ積もりそう。

 一昨日、そして今日(日曜日)の作業と、神経をすり減らす作業が続いたせいか、体がいつも以上に疲れたらしい。作業の後は、ぐったりして、本を読もうにも、数頁も読まないうちに、リクライニングチェアーで居眠り、転寝してしまう。  ようやく、それなりに食事をしようかなと思うほどに元気が取り戻せたのは、夜の八時ころだったか。  食事し、ちょっとテレビを見、これからぼちぼち、読書である。

 文化人類学者である今福龍太著の『ハーフ・ブリード』を本日、読了。雪搔きに疲れている中、それでも、本書の残りの120頁余りを一気に読んだ。
 冬の寒さと比べ、ホットな内容。

 本書についての感想は、気軽には書けない。実に重い本だった。著者の本を読むのは初めてなのだが、前から気になっていた方。ようやく手にすることができた。
 感想というより、学ぶべきことが多かった気がする。
 トランプ大統領の出現で、メキシコとの国境の壁がホットな話題になった。アメリカとメキシコとの国境は、長い諍いの歴史がある。
 そもそも、米墨戦争で、国家が疲弊していたメキシコは、圧倒的な火力を持つアメリカに勝ち目はなかった。米墨戦争は、アメリカの侵略戦争の歴史の大きな一頁だったわけである(「米墨戦争 - Wikipedia」参照)。
 移民国家アメリカだが、メキシコからの移民や流入者には、テキサスなどは元はメキシコのものだという思いが濃厚にあるに違いない。
 いずれにしろ、本書は、アメリカとメキシコの国境を巡って、あるいはメキシコのスペインや、のちにはアメリカによる虐殺と強姦という血の歴史を知るうえで、不可欠の書と言えよう。
 そう、ハーフ・ブリードという言葉には、メキシコ人が民族としての淵源を辿ろうとすると、スペイン人による強姦の結果として生まれた子供に行きついてしまうという悲劇を含意されている。

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→ 数日ぶりに銭湯へ。気持ちいいなー。ああ、早く自宅の風呂に入りたい。夜半過ぎに仕事からの帰宅直後、シャワーだけでも浴びれたらと、つくづく思う。うちには、剪定した枝葉がいっぱいある。焚き火で風呂ってのも乙なんだが、富山市内は焚き火禁止なんだよね。

 以下、本書から気になった文章をアトランダムに抜粋して示す。ほんの一部である!
「いまやアメリカは常時二〇〇万人を超える囚人を国内に擁する世界屈指の刑罰帝国である。国内人口のおよそ0.7% 世界のすべての囚人の約5分の1がアメリカの監獄にいる」。
「カリフォルニア最古の監獄は一八五二年に建設されたサン・クエンティン州立刑務所である。それは西部開拓時代に跋扈した無法者たちや抵抗するインディアンの収監にはじまっている。だがその後(中略)一九五二年から六五年にかけて二か所の刑務所と更生センターが設立されただけ」だったのが、「一九八〇年代に入り、元カリフォルニア州知事だったロナルド・レーガンが政権の座につくと、一気に刑務所建設は加速された。一九八四年から八九年までの短いあいだに、カリフォルニア州に最初の北カリフォルニア女囚刑務所を含む最初の九か所の新規刑務所が開設された。(中略)このわずか五年間での急激な監獄化の動きは、尋常の事態ではないことがわかる。一九九〇年代に入ってこの動きはさらに加速し、約十年間で新たに12か所の新規刑務所が開設された。」「カリフォルニア州において、囚人の人種構成のマジョリティを占めるのがラティーノである。」
「近年のアメリカおよび文明世界を席巻する「監獄‐産業複合体」にたいする根源的な批判が、こうしたナイーブな監獄観がいかに現実政治の微細なからくりを観ようとしないものであるかを私たちに突きつけはじめた。」
「9・11によって警備体制が飛躍的に強まった二〇〇一年の時点で、カリフォルニア州オークランドで車の運転中に理由なく停止を命じられる「黒人」の数は同じく停車を命じられる「白人」の二倍であり、そのあと車内検査・持物検査をされる黒人の数は白人の三倍に達する。全米において無数にあげられる類似した事例を見ると、権力が行っているのは武器や麻薬の所持の取り締まりではなく、そうした危険物の所持検査を隠れ蓑にした「人種」そのものへの取り締まりであることは明白なのである。」
 
 本書で小生のあの『森の生活』のヘンリー・デイヴィッド・ソローへの観方を根底から変えられてしまった。
 ソローは、アメリカで最も独創的で非‐体制順応的な思想家なのだ!
 ソロー自身、一度投獄されたことがある。
「それは一八四六年七月二三日(ないし二四日)の出来事である。この日、湖畔に自ら建てて独り自給自足の日々を送っていた丸太小屋から、修繕に出していた靴を受け取りにコンコードへ出掛けたソローは、町で顔見知りの収税吏サム・ステープルズと偶然出くわした。サムはそこで、ソローが滞納している税金を支払うように柔らかく促した。いま手持ちがなければ、自分がかわりに一時的に払ってあげてもいいとさえ申し出た。だがソローはそれを拒否し、税の不支払いは自分の信条によるものであることを強調した。税の支払い拒否は刑務所行きになることを告げたサムにたいし、ソローはそれなら獄に入れてくれて構わない、と応答する。引っ込みがつかなくなったサムは、やむなく義務としての仕事を履行し、ソローをその夜、コンコード刑務所に拘留することになったのである。
 この年の四月、アメリカ国家はメキシコに侵略し、アメリカ・メキシコ戦争が勃発していた。ソローは、この戦争の不義をただちに糾弾し、自らの一方的な利益のために不法に他国を侵略する国家への人頭税の支払いを拒んだのである。奴隷制という悪辣な制度を存続させ、他国を武力によって侵略する国家の横暴にたいして、ソローは自らの「市民」としての立場を放擲するように、納税拒否という非暴力的手段によって抵抗したのだった。ソローはこのときの行動の拠り所となった考えを、後世に大きな思想的影響を与えることになった著名なエッセイ「市民政府への抵抗」(1849)のなかで詳述している。そこでソローは、人間を不正に投獄する政府のもとでは、正しい人間が住むのにふさわしい場所もまあ牢獄である、と決然と書きつける。そして、黒人の逃亡奴隷や仮釈放されたメキシコ人捕虜、さらに自分の種族に加えられた不幸行為に抗議してやってきたインディアンなど、この時代の被抑圧者のすべてが、自由で不屈の精神を持った自らの同胞たちと出会えるとすれば、それは牢獄のなかにおいてしかないことを確信する。(以下、略)」

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← 今福 龍太 著『ハーフ・ブリード』(河出書房新社) 出版社による内容案内によると、「混血児=ハーフ・ブリードこそ世界の根源であり可能性なのだ。思想と文学の先導者がその半生と果てなき旅のすべてを賭けて描く世界の再生のための壮烈にして壮麗な混血をめぐる物語」だとか。 

 本書において、オクタビオ・パスの言葉が引用されている。「パスは、メキシコにとっての「他者」の凝縮体としてのアメリカに向けてこう直截につづけている」として:
 

 一世紀以上も前から、アメリカ合衆国は我々の前に、巨大な、しかしほとんど人間らしさを持たぬ現実として存在している。ときに微笑を浮かべて両手を広げ、ときに猛りながら拳を振り上げ、それは我々には目もくれず、耳も傾けず、ずかずかと我々の土地に侵入し、我々を踏みつぶしていく。この巨人を抑え込むことは不可能である。(……)アメリカ人はそもそもその発端から(清教徒は神と語り、自己と語るが、他者とは語らない)、そしてとりわけその権勢ゆえに、独り言に長けている。(……)会話は得意ではなく、他の声に耳を傾けることも、返事をすることも知らない。今日まで、我々が彼らと交わしたほとんどすべての会話は失敗に終わった。

 そう、アメリカの本音が剥き出しになった時、一切の会話は成り立たない。トランプ大統領のアメリカとも,、会話など最初から成立しないのだ。
 本音というか、先住民族を虐殺して成った建国以来の本来のアメリカの真実と自由と正義という衣(建前・看板)の下の鎧がさらけ出されているのだから。

 最後に、本書にて掲げられている、チカーノとメスカレロ・アパッチの混血児としてリオ・グランデの風土を生きてきた詩人ジミー・サティアゴ・バカの詩を掲げておく(詩集『リオ・グランデ沿いの春の詩』より):

 砂の上にはあの娘の足跡
 泥土のなかには10歳の子どものはだしの足跡も
 金持ちの雇い主のために摘む唐辛子の畑
 働く者たちが文化や民族の根っこを求めようにも
 ここにあるのは
 自分の根っこが掘り返され、裸に曝され、
 斧で叩き切られ、焼き尽くされた姿
   だが破壊された根の陰のかすかな温もりを求めて
   獣たちは根の傍らに巣穴を掘り身を隠す
 壊れたものは祝福される

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