列挙の修辞の快感
今日は、我が愛車がリコールされているとかで、修理点検のため、メーカーのサービスセンターへ。
→ 『趣味のぬり絵 谷内六郎の描く子どもの眼』(自由国民社) 昔、週刊新潮の表紙は、谷内六郎の絵だった。吾輩が小学生の頃、父が週刊新潮を講読していたので、折々、覗き見していたっけ。拙稿「谷内六郎…そこにあるけどそこになく」など参照。
修理(点検)に半日かかると言われ、パニックになりそうだったが、代車が出たので、何とか無事に暮らせた。
代車が出ない場合を想定して、何処かで時間稼ぎをしようかと文庫本を二冊、懐に忍ばせて行ったのだが、結果的に無用な心配だった。
さすがにメーカーは万全の体制である。
ウンベルト・エーコ 著の『ウンベルト・エーコの小説講座 ─若き作家の告白』を今日(木曜日)読了した。
一昨日に読み始めて、仕事の日を一日挟んで、今日の読了だから、一気……っぽいが、結構、休み休み読んでいた。
エーコの記号論などは自分にはなじみが薄く、彼の本を何冊かは読んできているのだが、理解が及ばない気がする。
小説を書く、小説を創作する発想の根が違うのかもしれない。比べるのが筋違いと思いつつも、そう感じして舞うのはどうしようもない。
本書には、エーコの小説論を分かりやすく過去の例を引きながら説明してくれている。だから、訳者は、敢えて、小説講座としたとか。
納得したところもなくはないが(第三章の「フィクションの登場人物についての考察(アンナ・カレーニナのために泣くということ」など)、一番、違和感を覚えたのは、第四章の「極私的リスト(実務的リストと詩的リスト 列挙の修辞 ほか)」だった。
← ウンベルト・エーコ 著『ウンベルト・エーコの小説講座 ─若き作家の告白』 ( 和田 忠彦 / 小久保 まりえ 翻訳 筑摩書房) 「五〇歳目前にして小説を書き始めた、自称「とても若く将来有望な小説家」が、創作の手のうちを見せる」とか。
最初の小説「薔薇の名前」からして、ボルヘスをつい連想するような、巨大な図書館迷宮で、まさに究極のリストとも見做せなくもない。
必ずしもエーコの意図する意味合いではないが、自分も創作(やセンチメンタル系のエッセイ)などで、折々、まさに私的な形での言葉の羅列の営為を行うことがある。
例えば、拙稿「谷内六郎…そこにあるけどそこになく」の中での以下の一節:
世界は壁の向こうにある。壁といっても、透明な、但し分厚い板ガラスで、しかも、自分をうまく密閉している、不可思議な、不可視の隔壁なのである。
あるいは、自分を取り巻いているというより、目の前の世界こそが奇妙に可塑性のある、アクリルの、つまり叩いても割れない、手の指で掻き削ろうにもキズの付くことのない、そんなドームの中に納まってしまっているようでもあった。いずれにしても、そこに自分は居ない。
誰も自分を除け者にしているわけでもないのに。
だだっ広い野原。空き地。突き抜けた空。風。匂いのない時空。
そう、小生には実際上、嗅覚が失われたも同然なので、世界には匂いが欠落している。生々しさがない。リアリティが欠如している。
あるいは、拙稿「ボクはダイオウイカだよ!」から:
それは、浮遊する粉塵より微細な粒子。水晶体にへばりつく網膜の切れっ端。血の涙さえ、疾うに吸い取られ尽くして、眼窩は深海の沈黙に耳を澄ます。
(中略)
あとは、涎をたっぷり流し、オシッコをざぶざぶ飛ばし、なけなしの血の涙を振り絞るだけさ、そうだろう?
まあ、吾輩の場合、当たらぬ鉄砲玉をそこたら中にぶっ放しているだけのことだが。
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