壺中天ならぬ泡中天
昨日(月曜日)からの風雨、凄かった。今日はどうなるかと心配してたけど、今のところ小雨そぼ降る状態。大変なのはこれからかな?
→ 川瀬巴水『馬込の月』(東京在住時代、小生の居住していた地域は古くは大きく言うと「馬込」なので、ちょっと感懐深く見入ってしまう)。拙稿「川瀬巴水…回顧的その心性の謎床し」など参照。
すると、案の定、水曜日の日中、積もりはしなかったけれど、氷雨が雪に変わってきた。夕方近くには、雪化粧。夜には五センチの積雪。
まあ、これくらいなら可愛いものだが。
その氷雨の昨日(月曜日)、庭を見て回っていたら、茂みの中から野良猫の鳴き声。哀れな、情けを、餌を請うような。いつもは姿も見せないのに。餌をやるべき? 庇を貸すべき?
ローレンス・クラウス著の『宇宙が始まる前には何があったのか?』を昨日(日曜日)、読み始め、今日、水曜日、読了した。
面白いし、語り口が上手いし、仕事の合間を掻き削るようにして、今日(水曜日)残りの80頁ほどを一気に。
読み始めた当初、以下のように書いた:
著者の本は2冊め。宇宙論は、生物学(細菌学)と並んで好きなジャンル。世界観を深めてくれる。太陽系から一番近い恒星は、それでも4光年離れている。遥か彼方! けれども、宇宙のスケールからしたら、すぐとなりの星! 月は地球から37万キロ。ちかい? 遠い? どちらにしても、両者は共に宇宙空間の中に漂っている。零下約270度の世界に浮かぶ天体たち。
本書の解説は、下記の番組のプロデューサーである、井出真也氏が書いておられる。
「NHK「宇宙白熱教室」ローレンス・クラウス『宇宙が始まる前には何があったのか?』 「種の起源」に匹敵! 宇宙論のパラダイムシフト 特設サイト - 文藝春秋BOOKS」:
ビッグバンの前には何があったのか? その最大の謎を、現代の量子物理学は解きあかしつつある。物質と反物質のわずかな非対称から生じたゆらぎ、それが今日の私たちの宇宙を形づくった。それは無から有が生まれることであり、無からエネルギーが生じるという物理学の常識に反したことだった。
さらに、あとがきということで、かのリチャード・ドーキンスが「『種の起源』に匹敵する、宇宙論のパラダイムシフト」と題して載っていた。
ローレンス・クラウスとリチャード・ドーキンスは、ある意味、同志。
「ドキュメンタリー映画のフェスティバルである、カナダ国際ドキュメンタリー映画祭に、ロック・ミュージシャンであり映像作家もあるガス・ホルウェルダが、「アンビリーバーズ」という作品で参加した。(中略)この作品は、今日もっとも影響力のある二人の科学者が、科学的思考と合理的精神の大切さを伝えるために、世界を行脚する姿を描いたもの」だとか。
その二人というのが、ローレンス・クラウスとリチャード・ドーキンスの二人であり、その縁もあって、本書へのあとがきをドーキンスが書いているわけだ。
宇宙論については素人のドーキンスが彼なりに理解し説明しようとする言辞がほほえましい。
それにしても、神の存在を信じる、未だに進化論どころか、この世界が創造されて6千年余りと信じる人々の多いアメリカにおいて、合理性や科学的思考を貫くなんて、大変だろうなと感じる(大変さは門外漢の自分の想像を超えるものがあるのだろう)。
← ローレンス・クラウス著『宇宙が始まる前には何があったのか?』(青木薫訳 文春文庫) 「『種の起源』に匹敵する宇宙論のパラダイム・シフト」が今、起きつつある。「『宇宙が始まる前には何があったのか?』訳者解説 by 青木薫 - HONZ」参照。
宇宙論の世界では、ビッグバンはもちろんだが、インフレーション理論も既に、データや観測で強固に裏付けられ、仮説の段階は脱している。
それだけではなく、一旦、インフレーション理論を事実として認めると、インシュレーションが一回限り発生したと考えること自体、不自然であり、沸騰するお湯に泡が無数に湧くように、インフレーションする宇宙が無数に生まれたと考えるしかないという(そう考えるのが自然なのだとか)。
我々のいる、観測可能な、誕生して137億2000万年という宇宙は、あくまでそうしたインフレーション宇宙(泡)の一つなのだとも考えられるという。
宇宙論の探求に際限がないことを改めて痛感させられる。同時に科学者の挑戦を畏敬の念をもって見守るばかりである。
なお、本書の訳者解説は以下にて読める:
「『宇宙が始まる前には何があったのか?』訳者解説 by 青木薫 - HONZ」
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