オースターのリアル アジェンデのリアル
昨日、「スイカの収穫期が分からず、一個、試しに収穫してみた。夕方、断ち割ってみたけど、少々早すぎたみたい。中があまり赤くなっていない。なんとか食べるけどね」と書いた。
← ポール・オースター/著『冬の日誌』(柴田元幸/訳 新潮社) 「。「人生の冬」にさしかかった著者が、若き日の自分への共感と同情、そしていくぶんの羨望をもって綴る「ある身体の物語」。現代米文学を代表する作家による、率直で心に沁みるメモワール」とか。老年期に差し掛かったオースターのメモワールであるがゆえに、「冬の日誌」なのだ。今年初めに、新作「4321」が出たらしい。
今日(土曜)の午後、真っ二つに断ち割ったスイカの半分を食べた。
赤く熟した部分が少ない。でも、スプーンでほじるように食べたよ。
別に意図したわけではないが、イサベル・アジェンデ 著の『精霊たちの家』 ( 木村 榮一訳 池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-7)や『パウラ 水泡(みなわ)なすもろき命』(菅啓次郎 訳 国書刊行会)をじっくりゆったり読み続けていたが、一部重なる時期に、ポール・オースター著の『内面からの報告書』や『冬の日誌』を読む形になった。
二人の世界はまるで違う。オースターは目で見、耳で聞いた世界、つまり、リアルな世界をしか信じない。
これはユダヤ的な感性なのか。あるいは、その平板な感性は、常識的であって、自分にしても、幽霊など信じていない。
← 2017年1月に発売されたポール・オースター7年振りの長編小説『4321』 翻訳はいつ出るのか。『冬の日誌』や『内面からの報告』は、この長編を出すための、過去の整理。一切を清算して、この新作長編に取り掛かろうとする助走だったのか。
一方、イサベル・アジェンデは、幻想の世界が濃厚である。すでに亡くなった人物との会話は当たり前にあるし、霊媒師の託宣も信じる。誰かの危機を遠く離れた世界にあっても、感受し共振する。
少なくとも自分のような常識人平凡人には異常な(はずの)世界が、当たり前に日常の中に横行している。
だが、イサベル・アジェンデにとっては、それは当たり前の世界であり、幻想ではなく、彼女らなりのリアルの世界なのである。
← ポール・オースター/著『内面からの報告書』(柴田元幸/訳 新潮社) 「現代米文学を代表する作家が、記憶をたぐり寄せ率直に綴った報告書。『冬の日誌』と対を成す、精神をめぐる回想録」だとか。
つまり、オースターのリアルもアジェンデのリアルも、マルケスのリアルも、それぞれ位相がまるで異次元であっても、リアルなのである。文学はそのリアルを読み手として実感させてくれる限り、そのままに受け取るだけなのである。
文学の世界のリアルの幅の広さを感じさせられた、まさに文学体験だった。
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