オースターの内面とアジェンデの血肉の世界の間
我が家の庭は、蜘蛛の巣だらけ。玄関先にも、蜘蛛の巣が張っている。吾輩は、蜘蛛の巣は放置する主義。通り道でない限り。だって、小さな虫を取ってくれるし、そもそも、目障りだからって網を破る必要もない。……でも、人が見たら、手入れの行き届かない、だらしない庭だなって見てるんだろうなー。
← ポール・オースター/著『内面からの報告書』(柴田元幸/訳 新潮社)
実は我が家も廊下や天井、玄関と、場所を問わず蜘蛛の巣が張りますね。特に夏場は。まあ、目立つところ、人が通るところは排除するけど、あとは好きにさせます。そう、ゴキちゃん退治もしてくれるし。特設の(パイプ)車庫にも、蜘蛛の巣が。車に乗り降りするたびに、何匹ものカラフルな蜘蛛たちと顔(目?)を合わせる。さすがに声はかけないけど。
キュウリもナスもミニトマトも、3株ずつしか植えていないのに、収穫がすごい。三日前、取れるだけ取ったのに、今朝も、これでもかという収穫。自分の分を残し、あとは人に。今年は豊作だ。
ポール・オースター著の『内面からの報告書』を読み始めている。
「先行して刊行された前作『冬の日誌』と同様、自らの幼少期の記憶を掘り起こす回想記である。怪我やスポーツ、性欲など、身体的な感覚を手がかりに綴られた前作と対の関係にある本書が沈潜してゆくのは、内面の記憶だ」(滝口悠生)という書。
別にオースターのファンというわけではないが、翻訳されている作品は一通りは読んでいる。大半は、図書館から借り出して読んできたのだが、多少は本を買えるようになって、読んだ本の何冊かは敢えて買って、読み返したりしている。新刊もフォローしている。
となると、実質的にはファンなのか。
とにかく、読ませる。
彼の小説は、アメリカの荒漠たる都会の齎す蜃気楼にも似た幻想の世界を思わせる。虚無の念の深さが生み出す虚の真実。
心身ともを圧倒する虚構のスパイラルにしか、心の無を埋められない。
その端緒や源は幼いころからあったのか。
← ポール・オースター/著『冬の日誌』(柴田元幸/訳 新潮社) 「「人生の冬」にさしかかった著者が、若き日の自分への共感と同情、そしていくぶんの羨望をもって綴る「ある身体の物語」。現代米文学を代表する作家による、率直で心に沁みるメモワール」の書だとか。
本来なら、先行して刊行された前作『冬の日誌』を先に読まないといけないのに、つい、本作から読みだしてしまった。書架には、『冬の日誌』も鎮座しているのに(一緒に買ったのだから当然だが)、いざ、読む段階になって、自分のへそ曲がり根性というか、天邪鬼な心性が、『冬の日誌』ではなく、隣の『内面からの報告書』に手をささせたのだ。きっと後悔するだろうな、順番に読むべきだったと思うに違いないのに。
それはともかく、本書を読むのは、本を読む楽しみを与えてくれている点で、不満はないのだ……が。
実を云うと、イサベル・アジェンデ 著『パウラ 水泡(みなわ)なすもろき命』(菅啓次郎 訳 国書刊行会)と同時並行する形で読んでいる。
別に意図して並行させたわけではないし、比べる意味もあるとは思えないが、その世界の違い自体が実にすさまじく興味深い。南米の血気溢れる湿潤な世界と、アメリカの(たとえ都会であっても)茫漠たる空無な世界との異同。
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