クンデラの『笑いと忘却の書』に共謀罪を思う
← 紅葉(カエデ)の緑化の速さ。すごい。つい先日まで枯れ木のようだったのに。紅葉もいいけど、瑞々しい今のモミジもいい。
過日、ジャスティン・ソネンバーグ/エリカ・ソネンバーグ著の『腸科学』を読了した。これで、腸内細菌など人間に生息する(あるいは細菌の海に辛うじて人間が生きている)微生物関連の本の講読は、とりあえず終了する。
これらの本を読んでの感想はいろいろ書いてきたが、ここに改めて大雑把なメモを幾つか書いておく。
腸内細菌の重要性が再認識される中、いろんな栄養ドリンクの類が売り出されている。
しかし、最近の研究で示された知見によると、腸内細菌を理想的バランスに保つことは大事だとわかっていても、一人一人の腸内環境は違う(食事内容も生活パターンも、人間関係も何もかも)。よって、どんな菌叢を摂取(移植)すればいいかは、まさに個々に違う。腸内の菌叢を確かめるに一番いいのは、各自の排せつ物を分析するのが一番、などなど。
→ ここに掲げた農業資材置き場を先日、数時間を費やして完全に撤去した。今は無き築60年以上の小屋。まだ作業は残っているが山場は超えた……のはいいのだが、ケガはしなかったが、重いものを無理して担いだり引っ張ったり、押し倒されそうになったりして、その後遺症なのか、左肩が痛い。腕が上がらない。ハンドルを回すのも大変。
思うに、将来、トイレでうんちをしたら、即座にうんちの内容物を分析する機能が便座に付加されるに違いない。その結果に基づいて、それぞれに適した菌叢が配合され服用乃至移植されるようになることも考えられる。同時に、エコの観点からもウンチは下水を通して浄化するのではなく、各人の家か、町の単位で排せつ物を貯め、バイオ発電に生かすという再生エネルギーに資することが考えられるに違いない。
念のために付記しておく。インフルエンザなど急病で治療法が抗生物質だけとなったら、躊躇なく投与すべし。これは類書のどの研究者も強調しています。問題は、抗生物質を投与したあとの善後策です。抗生物質は多くは効果が強く、ターゲットの菌だけじゃなく、多くの善玉菌や無関係の菌類も時には絶滅に追いやってしまう。となると、腸内細菌は免疫機構とも強い相関関係にあるので、免疫異常という結果を伴う可能性が大。最近の研究では、疲弊したり更地となった腸内細菌叢をどうやってリカバリーするかに重要性を訴え、その方策を探っているとか。
← ミラン・クンデラ著『笑いと忘却の書』 (西永良成訳 集英社文庫) 「…。“笑い”と“忘却”というモチーフが、さまざまなエピソードを通して繰り返しバリエーションを奏でながら展開され、共鳴し合いながら、精緻なモザイクのように編み上げられる物語」だとか。
多くの腸内細菌などの関連本を読んで学んだこと(の一つ)。 今までのように、黴菌だろうと、安易に殺菌や除菌すればそれでいいというわけじゃないようだ。人体を構成する30兆の細胞に比べ腸内細菌など、人体に共生(というより細菌の宇宙に動植物が辛うじて生きているというべきだが)する細菌は少なくとも100兆。動植物はそうした細菌なしに生きられない。この認識の確認を前提に多くの(特に20世紀以降、増えてきたアレルギーや肥満、自閉症などなどの)病気への対処を考えるべきだろう。
ミラン・クンデラ著の『笑いと忘却の書』を読み始めた。
いかにもクンデラなアイロニカルな物語。ロシアに占領され、共産党政権に支配され、思想の自由も表現の自由も、人との自由な交流の手段も奪われた世界。
今、日本はアベ右翼政権に一党独裁的に専横されている。野党は弱体化し、官僚は政権の意向を臆病なほどに忖度し、盗聴法やさらには共謀罪の成立が図られている。
→ ジャスティン・ソネンバーグ/エリカ・ソネンバーグ著『腸科学』(鍛原 多惠子訳 早川書房)
犯罪が行われる前に、頭で考えるだけで(考えていると、官憲が見做した段階で)検挙される恐れが出ている。
右翼政権に都合の悪い思想を持ったり話を交わすだけで取り締まられる恐れがあるのだ。
まさに治安維持法へあと一歩の質の悪い法律が国会で扱われている。
共産党だろうと右翼政権だろうと、構造は簡単で、一部の連中が権威も権力も握ってしまう政体だという点で酷似している。
その精神的紐帯が教育勅語だろうと政党綱領だろうと、小生には似たり寄ったりに映る。
クンデラのこの本(など)を読んでいると、1984じゃないが、閉塞した社会状況が日本でも再現されてしまう、近未来小説にも感じられてくる。
まあ、こんな下世話な読み方はクンデラには迷惑千万だろう。小説は小説として楽しめばいいのだと嘯きつつ、彼の世界を描き続けるのだろう。
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