父のこと 蔵書をめぐって
← 高田宏『木に会う』( 新潮社) 書庫をひっくり返して発見。父の蔵書か自分のか、分からない。良さそうなので、読んでみる。ただし、画像は単行本だが、所蔵しているのは文庫本版である。ずいぶん前に読んだような。
今日も庭仕事。解体した例の小屋の角材などをさらに解体し、畑などの縁に敷き詰める。雑草除けなどの目的。さらに草むしりに溝浚い。溝の底などに水草などがへばりついている。
理想を言えば、溝は土の小川に変えて、蛍の舞う光景を再現したい。吾輩がガキの頃は、田んぼの用水路だったこの細い溝のような川にも蛍が生息していた。
夢はかなわないね。だって、今の溝はコンクリート舗装されてしまったから。蚊などの生息しないよう、今はむしろ水草などの雑草を撤去したほうがいいんだろうなー。
父は生涯一国鉄マンだった。後年は電気機関車も運転したが、蒸気機関車が好きだったようだ。運転もだが、ボイラーに石炭を投げ入れる作業が大変だったとか。引退後、国鉄のあるOBに推薦され、あるテレビ番組の蒸気機関車特集(30分枠)に出演し、コメンテーターになったことも。
初めてのテレビに、シャイな父は俯き加減に小声で話すのが、父らしいと思って見ていた。
某放送局で、夜半過ぎ蒸気機関車の走る勇姿を淡々と流す番組がある。仕事で夜中に帰ったときなど、ボーと眺めていたりする。ああ、父もこうして働いていたんだなーって。
自分が長く東京在住だったこともあり、父母とは帰省の折、雑談するくらい。鉄道のことも稲作のことも、郷里の昔のことも、俳句や篆刻のことも話はほとんどしていない。
もっともっと話をしておけばよかったと今更悔いても何にもならない。
自分が折々小説を書いたりするのは、もはやありえない父母との思い出話を想像の中で再現するためでもある。ありえない、取り返しのつきようのない思い出話なんて、夢物語より儚い。生きられなかった、自分の愚かしさ短慮でみすみす手放したものたちの、あまりの大きさ掛け替えのなさよ。
← 池澤 夏樹 編『日本語のために』(池澤夏樹=個人編集 日本文学全集 全30巻) 「祝詞からアイヌ語、琉歌、日本国憲法など、時代を超えて日本語そのもののサンプルを集めたアンソロジー」。斬新な企画だ。
最初に、「古代の文体」ということで、「祝詞/池澤夏樹 訳」や「古典基礎語辞典 大野晋 編著」が載せられている。祝詞は古事記研究の本を読むと、関連の資料として言及される際にそれなりに馴染みがあるが、やはり興味深い文体だ。
驚いたのは、「古典基礎語辞典 大野晋 編著」に興味津々。こんな本が出ていたことに驚いた。敷居は高いが読みたい。
第二章は、「漢詩と漢文」ということで、以下がサンプル的に紹介されている。
菅原道真/中村真一郎 訳
絶海中津 寺田透
一休宗純 富士正晴
良寛 唐木順三
日本外史 頼山陽/頼成一・頼惟勤 訳
夏目漱石 吉川幸次郎
奇しくも、釜谷 武志著『陶淵明 ビギナーズ・クラシックス 中国の古典』を読んでいただけに、これらの漢詩(漢文)には関心を抱かざるを得ない。
これらの中で、漱石の漢詩を少々読みかじっただけなのは、寂しい限りだ。
ちなみに、父は篆刻に熱中していただけに、篆刻や漢字に関係する書籍をそろえていた。自分には漢字に親しむチャンスはたっぷりあった……のだが、生かすことはなかった。
我が家の梅の木、樹齢は6,70年ほどか。この数年、実がほとんど成らない。小さい実が少々。樹齢のせい? 吾輩の養生の仕方が悪い? 今年も自前の梅酒は望みなしか。
剪定の際、どの枝を切るべきかの判断(の根拠)が分からない。やはり、専門家に訊かないとダメか。
← 釜谷 武志著『陶淵明 ビギナーズ・クラシックス 中国の古典』(イラスト 谷口 広樹 デザイン 谷口 広樹)
父の蔵書は、仕事関連を除くと、時代(歴史)小説がメイン。数百冊はある(ただし、十年前まで)。あとは、相撲と酒、歴史の本。ほとんど重ならない。ある意味、今後の読書の種に困らないってこと。
年齢を重ねると読書の趣味も変わるとか。自分のテイストはどう変わっていくんだろう。
父は、時代小説は、新刊が出ると予約してでも買う。見てみると、定年後に買った本が多い。考えてみると、定年までは仕事が忙しかったし、その上、畑や稲作もあったからナー。
定年後、俳句に篆刻にも熱中した。特に篆刻は、県展に何度も入選していた。
そのほか、お経の会やら、旅行などの世話役(幹事)も。歴史に詳しいから、ガイド役にうってつけ。
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