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2017/04/14

懊悩は肉体の異変の結果に過ぎないのか

 NHK総合で放送されている、「総合診療医 ドクターG」は好きな番組で、録画してでも見るようにしている。

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← R.D.レイン 著『引き裂かれた自己 ─狂気の現象学』 (天野 衛 翻訳 ちくま学芸文庫) 「ドゥルーズ=ガタリらの現代思想や、今日のサブカルチャーにも多大な影響を与えつづける古典的名著」です。ある意味、我が青春の書でもある。

 毎回、興味ある展開で見逃せない。
 体への関心もあるが、自分の体が心配だからでもある。

 子供のころ、座敷にあった百科事典で医学(病気)の項目を拾い読みするのが癖だったことがある(好きでやっていたわけではないし、まして医学に志していたわけではなおさらない)。
 どの項目を読んでも、自分に当てはまるようで、体のちょっとした兆候も、病気のサインに思えて、心配でならなくなったりしたものだ。

 さて、毎回見ているにもかかわらず、今回、敢えてメモろうと思ったのは、それだけ気になったからである。
 それは、4月12日水曜放映の回で、「突然 けいれんが」というものだった。
「突然けいれんを起こして倒れた若い女性」が患者である。ドクターGは、群星沖縄研修プログラム 医師の徳田安春氏。
 若い女性は、「夜中いきなり叫び声を上げ、その後、痙攣。救急で病院に運ばれた」というシーンから番組は始まる。

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← メダルト・ボス著『精神分析と現存在分析論』(笠原嘉/三好郁男訳 みすず書房) 「フロイトの精神分析を、ハイデガーの現存在分析論から、読み直し、新しい治療を模索する」書。

[総合診療医 ドクターG 【突然 けいれんが】 ]の番組概要ページ - gooテレビ番組(関東版)」を参照させてもらう。
「患者は病院到着後に30分経過してけいれんは1回あり、頭のCTには異常はなかったと伝えた。倒れた時は突然大声を出して暴れたと付き添ってきた母親は語った。娘は数日前からダルそうで、せきや鼻水はなく、下痢や嘔吐もなく、動物などとの接触はなかった。仕事は着物や和雑貨の販売などを行っていると伝えた。1ヵ月前は普通に働いていたが、居もしない子に話しかけるようになったと母親は語った」。

「女性のバイタルデータは、体温が高く、脈拍や呼吸数が高い状況」。
 研修医は、「髄膜炎」、「全身性エリテマトーデス」とそれぞれ診断した。

「髄膜炎になると激しい頭痛と高熱、吐き気が生じる。また意識障害やけいれんが現れることもある。全身性エリテマトーデスは免疫システムが自分を攻撃する自己免疫疾患。脳に炎症広がり、意識障害や痙攣が起こることもある」。
「他には「統合失調症」「単純ヘルペス脳炎」「傍腫瘍症候群」などの可能性について考えられた」。
 以下、「傍腫瘍性辺縁系脳炎」と「単純ヘルペス脳炎」に絞られつつも、「「傍腫瘍性辺縁系脳炎」(実際は子宮筋腫だったか)という最終診断」に至る経緯は、上記の頁を覗いてみてほしい。

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← ルートウィヒ・ビンスワンガー著『夢と実存【新装版】』(ミシェル・フーコー序文 荻野恒一/中村昇/小須田健訳 みすず書房) 「夢とは眠りの延長ではない。睡眠が生きるための保存行為であるのに対して、夢は死へと向かってゆく……」。

 この診断過程をフォローしていて何が気にかかったかというと、「女性は3日前に精神科から統合失調症の可能性があるとして薬を処方されている」という経緯である。
 つまり、幻覚を見るなどの症状から、精神科では統合失調症という診断が(確定ではないとしても)一度は下されたという点である。
 症状が、「傍腫瘍性辺縁系脳炎」と統合失調症とは酷似しているのだ。

 仮にこの患者が精神科のみを受診し、その診断に甘んじていたなら、統合失調症患者として治療を受け続け(つまり投薬が続けられ)、その一方で、「傍腫瘍性辺縁系脳炎」の症状が悪化し、最悪の場合、死に至ることもありえる。

 あるいはそうでなくても、一生、精神病の患者として惨めな人生を送ることになったやもしれない。
 実際、統合失調症と診断されている患者の中の一定数は、実は、症状の酷似する「傍腫瘍性辺縁系脳炎」なのかもしれない。その真相が深い闇に沈んでいるのかもしれないわけである。

 統合失調症は、それこそほんの近年までは、精神分裂病などと呼称されていた。フロイトが神経症なら、ユングは精神分裂病の理論を構築しようとし、L.ビンスワンガーは現存在分析理論を示し、そのほか、小生は、Mボスの著書や、R.D. レインの『引き裂かれた自己』は、背筋をゾクゾクさせられつつも、読み通さざるを得なかったものである。

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← ヴォルフガング・ブランケンブルク著『自明性の喪失 分裂病の現象学』(木村敏/岡本進/島弘嗣訳 みすず書房) 「ここに登場するただ一つの症例はアンネ・ラウという女性で、睡眠薬自殺をはかり入院したのは20歳の時であった。「あたりまえ」ということが彼女にはわからなくなった。「ほかの人たちも同じだ」ということが感じられなくなったのである」。拙稿「W.ブランケンブルク著『自明性の喪失』

 が、いわゆる精神病は、もしかしたら「傍腫瘍性辺縁系脳炎」に限らず、何か気質的な原因に由来するのではないか、すべてがそうではないとしても、ほとんどが今は未知の原因に由来するのではないか。

 となると、ここからはややSF的になるが、心の葛藤というやつは、何のことはない、全ては器質的なもの、社会的な事由に由来するもの、つまり全ては物資的な葛藤と混迷の心的な位相での現象に過ぎないことになる、なんて、そんな話が現実のものとなる……かもしれないわけである。

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