ジョージ・エリオット『ダニエル・デロンダ』読了
今日、プール通い再開3回目。初日の倍を泳いだ。といっても、25メートルを6往復。まだまだアイドリングです。泳いだ後の抹茶カフェが美味しい。
← ジョージエリオット 作『ダニエル・デロンダ〈3〉』(淀川 郁子訳 松籟社)
未だに日本は単一民族国家だという幻想に囚われている人が多い。夢見るのは勝手だけど、アジアの中で極東の島国だって位置を忘れちゃいけない。北方系、南方系、大陸や半島系など(さらにはインドや中東など)の寄せ集め国家だという厳然たる事実は遺伝子研究からも動かないのだ。:
「記者会見「日本列島3人類集団の遺伝的近縁性」 東京大学」
「崎谷 満著『DNAでたどる日本人10万年の旅』!」
「「日本人になった祖先たち」の周辺」
太平洋戦争での日米の戦力差も大きかったが、その差は戦力だけじゃない。読書力の差でも分かる。現代でも日米の学生の読書量の差は圧倒的だが、戦争中もそうだった。日本では、読める本は限られていたが、アメリカは読み放題。『戦地の図書館 海を越えた一億四千万冊』 (モリー・グプティル・マニング 著/松尾恭子 訳)によると、米陸軍は「ヨーロッパはもとより、アジアまで戦線が拡大していくなか、1947年までに、実に1億4000万冊以上が前線」に送られたとか。一方、日本軍では「読書で知識を得て独自の意見を育てるようなことは忌 避された」というのだ:
「『戦地の図書館 海を越えた一億四千万冊』 (モリー・グプティル・マニング 著/松尾恭子 訳) 鼎談書評 - 文藝春秋WEB」
昨夜というか、今朝未明ジョージエリオット 作の『ダニエル・デロンダ〈3〉』を読了した。これで、全三巻1400頁余りを読了したことになる。
まさに大河をなんとか泳ぎ渡ったという感が大。ただ、途切れ途切れに読むことになり、ちょっと間延びしたので、最後にきて一気に急流に呑み込まれたような。物語の大枠をつかめ始めた頃に土壇場が迫った。
[調べたら、読み始めたのは、1月18日頃だった:「亡くなって分かる偉大さ」(2017/01/20)]
邪道だが、解説を最初に読んでおけば、展望がつかめて理解も早まったのかもしれない。第二巻での感想で、「この小説の大きなテーマの一つがユダヤ人問題だと分かって来た(最大とは言わないが)」なんて、手探り的なことを書いたが、とんでもない、まさにこの物語の本筋そのものだった。
19世紀半ばのヨーロッパの風潮を批判的に描き、その対比でユダヤ人たちの生き方をやや理想的に描いている。グエンドレンとグランドコートとの描き方は、さすがにエリオットらしく堂に入っていて、彼らの生きる社会もこれでもかとリアルに描けている。ヨーロッパの価値観の行き詰まりを彼らの不毛な結婚とその破たんで象徴しているのだろう。
一方、主役のデロンダもだが、マイラー、モーデカイらはユダヤ国家の建設という夢(われわれはかなり不幸で異常な形で20世紀の半ばに実現したことを知っている)に向けて実に真摯に生きていく。夢や理想を見失ったヨーロッパの貴族や社会の風通しの悪さに比べ、なんとすがすがしく美しいことか。
要は、この作品では、二つの異質な世界、その生き方の違いを交差させ対比させてそれぞれの世界を際立たせようとしたのだろう。その目論見は成功したか……
ただ、エリオットには馴染みのないユダヤ人の社会であり、彼らの抱える桎梏が見えないからか、主人公のデロンダを含め、ユダヤ人たちの描き方が理想的過ぎて、物語の最後も、安手のハーレクイン小説風で、いただけない。
知らない社会を描くのは、リアリストのエリオットには苦手だったということか。小説としては完成度がやや低いかも。 でも、さすがのジョージ・エリオットワールドで、読みごたえはあった。
これまでの「ダニエル・デロンダ」読書の足跡など:
「『ダニエル・デロンダ』いよいよ佳境へ」(2017/02/11)
「エリオットワールドに微生物ワールド」(2017/01/31)
「亡くなって分かる偉大さ」(2017/01/20)
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