「アルケミスト」に飛びつくわけは
今度、岩波書店から出始めている夏目漱石全集、買うか自重するか、迷っている。90年代に出たやつは買い揃えた。が、引っ越し代に消えた。改めて揃えるか。迷う。
← パウロ・コエーリョ著『アルケミスト 夢を旅した少年』(山川 亜希子訳 角川文庫)
カーナビの地図、交差点の名前の漢字表記、間違いを発見。初めて。高校の名前を間違えちゃ、いけないでしょう。
今日は父の月命日。住職に来てもらって、二人だけで法要。お布施やらなんやらで大きな出費。ああ!
内庭を望む縁側の廊下。強風のあと、たまに廊下に落ち葉が。何処かから吹き込んだ? もっと謎なのが、廊下に何かの生きものの糞が落ちている。鳥?まさか! 知り合いにそのことを呟いたら、それはヤモリじゃないかって。そうか、ヤモリなのか。ヤモリの糞なのか ? !
廊下の糞がホントにヤモリの糞なら、長年の謎が解けたことになる。だからって、掃除しないわけにいかないけど。ヤモリの姿は、滅多に見ない。昨年、久しぶりに一回。その数年前に一回。そんなもの。棲んでいるとしても、ひっそり、なんでしょうね。でも、ウンチは、しっかりなのが、悔しい。
→ ピーテル・ブリューゲル作『錬金術師』16世紀の錬金術師の実験室。ブリューゲルのこの絵は初めて目にする。 (画像は、「錬金術 - Wikipedia」より)
今日から、パウロ・コエーリョ著の『アルケミスト 夢を旅した少年』を読み始める。
「羊飼いの少年サンチャゴは、アンダルシアの平原からエジプトのピラミッドへ旅に出た。錬金術師の導きと様々な出会いの中で少年は人生の知恵を学んでゆく」とか。
「欧米をはじめ世界中でベストセラーとなった夢と勇気の物語」だということで、『星の王子さま』に匹敵する世界的ベストセラーらしいが、小生は、つい近年、某SNSサイトで本書の存在を仄聞し、先月、書店で偶々見かけ、とりあえずゲットしておこうと、入手しておいたもの。
書店では、そんなことよりも、題名の「アルケミスト」に反応した。
← C.G.ユング 著『心理学と錬金術 I』(池田 紘一 /鎌田 道生 訳 人文書院) 『心理学と錬金術 II』に続く。「無意識の世界と錬金術との間にパラレルな関係を発見したことによって自らの思索を深めたユングの代表作。夢の分析から始まり、曼陀羅象徴の研究、錬金術論と、その独創的見解は、従来の文学、民俗学、宗教学、神話学、哲学の研究に大きな転回を迫るだろう」といった本。もう、40年近く前に刊行された本で、貧乏だったにも関わらず、即ゲット。
そもそも、「アルケミスト (alchemist) は、錬金術師(錬金術(alchemy)に携わる研究者)を指す(英語)なのである。
ついでながら、「錬金術( alchemy)とは、最も狭義には、化学的手段を用いて卑金属から貴金属(特に金)を精錬しようとする試みのこと。広義では、金属に限らず様々な物質や、人間の肉体や魂をも対象として、それらをより完全な存在に錬成する試みを指す」もの(「錬金術 - Wikipedia」など参照)。
学生時代、フロイトつながりで、ユングに一時期熱中し、彼の本を読み漁った。ユングには、『心理学と錬金術 I』なる本があるほどに、錬金術に熱中した。というか、欧米には、今以て錬金術に密かに(?)凝る知識人は絶えないようである。
ちなみに、本書(『心理学と錬金術 I』)については、かの松岡正剛も一夜を捧げている:「830夜『心理学と錬金術』カール・グスタフ・ユング松岡正剛の千夜千冊」
やがて、二十年ほどの時間を経て、錬金術に関連する話題に触れた本に出合った。それは、小生の好きな書き手である、オリヴァー・サックスの手になる本『タングステンおじさん―化学と過ごした私の少年時代』においてである。
「強烈な個性がぶつかりあう大家族にあって少年サックスが魅せられたのは、科学のなかでも、とりわけ不思議と驚異に満ちた化学の分野だった。手製の電池で点けた電球、自然を統べる秘密を元素の周期表に見いだしたときの興奮、原子が持つ複雑な構造ゆえの美しさなど、まさに目を見張るような毎日がそこには開けていた…だが、化学の魅力は、実験で見られる物質の激しい変化だけではない」と、いよいよ「キュリー夫妻ら、研究に生涯を捧げた人々の波瀾万丈のドラマもまた、彼にとってまばゆいばかりの光芒を放っていたのだ。敬慕の念とともに先人の業績を知るにつれ、世界の輝きはいっそう増してゆく」ことになる。
「豊饒なる記憶を通じ、科学者としての原点と、「センス・オブ・ワンダー」の素晴らしさをあますところなく伝える珠玉のエッセイ」という出版社の内容説明には、掛け値なしその通りだと、同感共感である。
← オリヴァー・サックス【著】『タングステンおじさん―化学と過ごした私の少年時代』(斉藤 隆央【訳】 早川書房) 我が愛読書。
サックスは、錬金術そのものに溺れたわけじゃないだろうが、少年の頃は紛いのことに熱中したのだ。
心理の世界も、化学の世界も、物質の不可思議につながっていく。迷路のような自然の世界で、深い闇の世界を彷徨いつつも、何とか光明の出口を見出そうともがく。
錬金術の世界に惹かれると、やがてパラケルススへの関心に至っていく。彼は、「錬金術の研究から、これまでの医学に化学を導入し、酸化鉄や水銀(梅毒の治療に使った)、アンチモン、鉛、銅、ヒ素などの金属の化合物を初めて医薬品に採用した。この業績から「医化学の祖」と呼ばれる」(「パラケルスス - Wikipedia」参照のこと)ようになる。
錬金術という中世の闇から、近代の医学への黎明の偉人だったわけだ。
そうした経験を、ユングに限らず、サックスに限らず、現代の西欧においても、好奇心と冒険心に溢れる少年の秘密の地下室での実験と研究が、密かに繰り返されているのかもしれない。
ということで、「アルケミスト」という題名だけで、小生の手を本書に向けさせる十分な魔力を帯びているわけである。
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