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2017/01/17

腸内フローラと土壌フローラのリンク

 月曜日の朝、車庫(パイプ車庫)の屋根の雪を長い棒や手でテントの裏からトントンしたりして、大半を払い落した。これで潰れないと安心していたら、お昼過ぎには十センチ以上降り積もって、がっかり。と思ったら、午後も遅い時間に車庫を見たら、雪が続いていたのに積もっていない。

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→ 月曜日の朝方の光景。まだまだ降り積もりそう……

 幸いというべきか、午後の遅めの時間帯になって、どうやら、雪が霙っぽくなり、そのうち氷雨に変わりそう。だとしたら、とりあえずは今の寒波の峠は間もなく越えるのかもしれない。雪に一喜一憂なのでした。

 デイビッド・モントゴメリー+アン・ビクレー 共著の『土と内臓 微生物がつくる世界 』を今朝、読了した。
 実に面白いし有意義な本でもある。

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← デイビッド・モントゴメリー+アン・ビクレー [著] 『土と内臓 微生物がつくる世界 』(片岡 夏実 [訳] 築地書館) 「植物の根と、人の内臓は、豊かな微生物生態圏の中で、同じ働き方をしている」!

「マイクロバイオーム研究で解き明かされた人体での驚くべき微生物の働きと、土壌根圏での微生物相の働きによる豊かな農業とガーデニング。農地と私たちの内臓にすむ微生物への、医学、農学による無差別攻撃の正当性を疑い、地質学者と生物学者が微生物研究と人間の歴史を振り返る」といった内容。
 出版社の内容案内によると、「微生物理解によって、たべもの、医療、私達自身の体への見方が変わる本」と銘打っているが、実際、誇大な表現じゃないと感じた。

 著者のあとがきにもあるが、「本書の原題 The Hidden Half of Nature は「隠された自然の半分」という意味だ。それが示すとおり本書は、肉眼で見えないため長いあいだ私たちの前から隠されていた、そして今も全貌が明らかにはなっていない微生物の世界を扱っている(「https://web.hackadoll.com/n/8z0S">『土と内臓 微生物がつくる世界』 - HONZ」より)。
 隠された自然の半分とは、まさに肉眼では見えない微生物の世界のことである。

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→ 氷柱(つらら)がすごい。出入り、気を付けないと。そういえば、階上から氷を落として直下のターゲットを殺害し、証拠がなくなるという刑事ものがあったっけ。実際、数十センチもの氷柱が頭上から落ちてきたら、一発必殺だな。この画像は、家の裏手、台所からの撮影だけど、表(東)側の縁側の庇などの氷柱はもっと凄みがある。氷柱の直撃での事故という事例って、あまりないのかな。ニュースで聴いたことがない。むろん、ないほうがいいんだけど、氷柱の脅威を感じるだけに、ないのが不思議。

 人間の体を構成する細胞は、数十兆もあるという。
 一方、人間の体の内外に共生する細胞は、その3倍とも10倍とも。
 合計すると、平均的な成人で、一個の人体には、200兆を超える細胞が犇めいていることになる。
 その人間と共生する細胞の相当な割合は、大腸などの中に生息している。
 
 小腸や大腸の中というが、実際は、それらの器官は肛門も併せ、外胚葉に繋がっている(肛門はモロに外肺葉)。つまり、人体の外。
 本書では最初に、荒れ果てた、畑には相応しくない土地を、著者ら二人(主に奥さん)が試行錯誤しつつ、立派な菜園に作り上げていく場面から始まっている。あれ、この本、畑作りの本だったっけと、一瞬、錯覚しそうになる。
 けれど、読み進めるうちに、それが本書のテーマに直結する重要な伏線、プロローグなのだと気付かされる。

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← ニコラス・マネー[著]『生物界をつくった微生物』(小川真[訳] 築地書館) 「DNAの大部分はウィルス由来。植物の葉緑体はバクテリア。生きものは、微生物でできている!」といった本。「人体、樹木、海水や海底の泥、土壌や湖沼や河川、大気などのすべてが、微生物に満ちあふれている。しかも、その活動は地球の歴史とともに、生物圏を形作り、維持するのに必要不可欠なものなのだ。微生物は、我々自身にとっても必須の存在であり、食べ物を消化するという点で膨大な数の微生物に頼っているのだ」という。

 健康な畑、つまり野菜作りに相応しい土壌には、数知れない細菌たちが犇めいている。
 一方、上記したように、腸内にもかなりの種類の細菌、大腸菌が活発に蠢いている。
 それぞれ、自分らの好みの場所に棲みついているわけだ。たまたまニッチが違っただけ。
 畑などの土壌もそうだが、腸内も、数知れない細菌たちが的確な勢力バランスを保つことで、健康な環境を作り出す。同時に、腸内では大腸菌たちが人体に吸収されやすい形に食べ物の最終的な消化を助けるわけである。
 畑でもいろんな細菌たちが結果的に共同して関わり合うことで栄養たっぷりな野菜を作り出す。
 そこに、腸内で何かの病気(黴菌)を退治しようと、抗生物質を投与したり、あるいは畑で除草剤や農薬や人工の化学肥料などを投与すると、歪な栄養しかない野菜が出来てしまう。微量栄養素(銅やマグネシウムなどなど)の十分に含まれない野菜となってしまう。
 実際、人工の肥料が長年、畑に投与され続けたことで、必須な微量栄養素の野菜への吸収率がどんどん下がっているのだとか。

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← ポール・G・フォーコウスキー (著) 『微生物が地球をつくった -生命40億年史の主人公』(青土社) 「太古の地球の酸素化、光合成をする植物の誕生、動物たちの進化大爆発、人間界の発酵化学や遺伝子工学…。微生物たちがいなかったら全て不可能だった。目に見えないくらい小さな生物の、驚くほど壮大な世界をめぐる知の冒険」だって。 

 近年、かなり人口に膾炙しつつある、腸内フローラと(こちらは耳馴染みではないかもしれないが)土壌フローラは、ともに健全でないといけないし、両者が想像以上に関わり合っている、ということだろう。

 小生の分かりづらい説明より、訳者によるあとがきが頼りになる(「https://web.hackadoll.com/n/8z0S">『土と内臓 微生物がつくる世界』 - HONZ」より):

昨今、腸内フローラという言葉がちょっとした流行語となっている。腸内細菌の重要性は以前から言われてきたが、さらに一歩進んで、細菌の多様性やバランスが注目されるようになったということだろう。腸、特に大腸の内部は、人間にとってもっとも身近な環境といえる。そこでは数多くの微生物が生態系を築き、人体と共生して、食物を分解し人間に必要な栄養素や化学物質を作り、病原体から守っている。

それと同じことが、土壌環境でも起きている。腸では内側が環境だったが、根では裏返って外部が環境となる。そこに棲息する微生物は植物の根と共生して、病原体を撃退したり栄養分を吸収できる形に変えたりしている。さらに、微生物は細胞内でも動植物と共生していることがわかっている。太古の海で、あるとき捕食され他の微生物に取り込まれた微生物細胞が、生き延びて捕食者と共生関係を築くという常識を超えた事態が起きた。ここからやがて複雑な多細胞生物への進化が始まったのだ。


関連拙稿:
泰淳やら『生物界をつくった微生物』やら」(2016/01/04)
『微生物が地球をつくった』を読む」(2016/02/04)

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