君はピエロ 僕もピエロ
読書好きなら誰しも同じかもしれないけど、どんどん読みたい本が積みあがる。読んでる本の四倍の積読本。その数倍の読みたい本。そもそも遅読の自分なので、巨大な山を前にして、日暮れの道をよろよろやっと歩いているようです。
マルコ・イアコボーニ著の『ミラーニューロンの発見―「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学』を日曜日の未明、読了した。
その感想めいた呟きは、下記する。
今日も呟きを書き連ねるけれど、いつもと毛色の違った、やや感傷的な小文となった。
というのも、小生が注目している画家の絵を観ながらの、絵の雰囲気に引きずられての、思いがけない呟きとなってしまったからである。
「君はピエロ。僕もピエロ」
何だろう、やたらと淋しいじゃないか。
淋しいというより、心が張り裂けそうだよ。
夕べ見た夢にピエロが現れたっけ。
ぼくを笑わせようと、懸命になって、身を捩らせてまで滑稽な踊りを披露してくれていた。
ぼくは笑いたかったんだよ。君に逢えて嬉しい。君がぼくのそばを通り過ぎたりしないでさ、足音を響かせてまで、ぼくの気を引いてさ、そうして氷雨の夜、町の片隅で身を凍らせてまで、剽軽な踊りを見せてくれたんだよね。
なのに、ぼくはまるで知らん顔して、闇の底を呆然と眺めているだけだった。
きみに恨みはないのに、君に鬱憤を晴らしている。
いや、そんなつもりはないんだ。ぼくには何も見えないんだよ。
ああ、ぼくは臆病なだけなのさ。
ぼくにも心があれば、あるって信じたいんだけど、君を追いかけていったに違いない。追い縋って、ぼくを助けてくれ、ぼくを見捨てないでくれって、泣き叫んでいたはずなのに。
ぼくの心って奴は、縮こまってしまって、どうにも解せなくなって、脳味噌の隅っこで、頭蓋の底で、眼窩の縁で黒子(ほくろ)のようにへばりついている。
君の姿さえ、見えない。見えているのに、見えない。
ぼくを励ます君。色とりどりの、ホント、派手な衣装を身に纏って、氷の中で踊っている。
今にも息絶えそうなのは、君のほうじゃないのか。風雨に擦り減った夏服を真冬に羽織って、寒々しいったらありゃしない。
動かないといけないのは、ぼくなんじゃないか。
路上に倒れ込む君を幾度ぼくは見捨てたことか。泣き崩れる君を石ころのように蹴飛ばしたぼくだった。
ああ、ぼくは悲しいのだろうか。淋しいのだろうか。臆病なんかじゃなく、滑稽なのはぼくのほうじゃないか。
嗤ってくれよ、ぼくのこと。
コンビニの寒々とした蛍光の光さえ、ぼくには届かない。君の後光のような輝きは、ぼくには眩しすぎる。
路傍の花の君。路肩をわざとのように無視するぼく。
そんな恋なんて、あっていいのだろうか。
ああ、君はホントにピエロだよ。そしてぼくもピエロだ。
← マルコ・イアコボーニ【著】『ミラーニューロンの発見―「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学』(塩原 通緒【訳】 ハヤカワ・ノンフィクション文庫) 今朝、読了。ヒトが他人の心や行動の意図を理解できる。それはホントはすごいこと。だが、哲学的にはずっと謎であり続けてきた。共感の心理ばっかりは、コギト・エルゴ・スムのデカルト理論からは、永遠に理解不能だろう。生後間もないころから、赤ん坊は親の真似をする。親の表情を読む。むしろ、そうした間主観性の実態から始めないと、隘路に陥るのは当然なのである。ミラーニューロン(物真似細胞)、つまり、「他者が感じることへの共感能力や自己意識形成といった、じつに重要な側面を制御しているという」神経細胞の発見は、今後の応用も期待できそうだ。
*本稿に掲げた作品は、いずれも「小林たかゆき お絵かきチャンピオン」中の「ギャラリー2016」より。
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