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2016/11/10

淋しさは氷雨のように

 探している。
 一つの答えを。それとも終わりへの糸口を。

2016_1616

 何もかもを捨て去りたい。忘れ去りたい。
 目を閉じて、心をも閉ざして、そうして見えてくるものは、形にならない塊。

 あれは猫なのか? 白い猫なのか!
 いや、蛾だ。鱗粉を撒き散らす蝶だ。
 狸もいるし、雀もいる。
 お爺ちゃんが目を真ん丸にしてこっちを見ている。
 機関銃の銃身を捻じ曲げてでも、こっちを狙っている。

 ああ、なんて賑やかなんだろう。まるで、今まで見てきた悪夢が一度に現れたみたいだ。
 焦がれる心が潤いをなくして、今にも蒸発しそうだ。
 会いたいという思いが火となって時空を焼き尽くそうとしている。

2014_1400

 探しているんだよ。そう、あなたなら分かるはずだ。何を探しているかをね。
 泡の中に封じ込められた思い。無数の泡たちが宙をふわふら飛び交っている。
 ぶつかったり、すれ違ったり。やがて、弾けて消えていく。

 手を振っているの? それとも、さよならって告げているの。
 出会ってもいないのに、もう、別れを告げてしまうの。

 真っ青な喪服に身を包んで、誰の葬儀に参列しているの?
 棺の中に横たわる、ウエディングドレスに身を包んだあの蒼白の人は、誰? あなた? 
 いつものように、ただ立ち竦んでいるのは、オレ?
 表情が翳っているのは、素敵なティアラのせいなの?

2016_1617

 淋しさは氷雨のように我が身を叩いている。あなたの冷たい指先の感触が忘れられない。
 どうして凍て付いてしまったのか。
 このオレを抱きしめて、そうして氷の微笑で刺し貫こうとでも?

 身も心も迷子だよ。何も分からないんだよ。
 答えは誰が知っているの?
 吹き千切られたあの手紙の行方は、あの日の風だけが知っているの?


[本文中の画像は総て、「小林たかゆき お絵かきチャンピオン」より。]

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