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2016/11/21

実らずも頭の垂れるススキかな

 このところ、ニック・レーン著の『生命、エネルギー、進化』(みすず書房)や、ウラジーミル・ソローキン著の『青い脂』(河出文庫)、車中ではウィリアム・ゴールディング著の『蠅の王』(新潮文庫)などを読んでいる。

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→ 我が家の庭。いよいよ晩秋の色が濃い。何処か寒々しい。
  

実らずも頭(こうべ)の垂れるススキかな   (や)

 これらのいずれかを読了したなら、プルースト著の『失われた時を求めて 囚われの女I 10巻』 (岩波文庫)を読む予定でいる。吉川氏訳の『失われた時を求めて』もいよいよ第10巻に入る。あと数年、同書(同じ作家、同じ訳者)と付き合う。
 読むのは嫌いじゃないが、もともと遅いほうである。
 老眼のせいもあってか、時には数頁読むだけで目を閉じてしまうこともしばしばである。
 それでも……

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← 先日、もらったユズ。その種を鉢植えしようと思ったが、あるはずの土がない。余儀なく、買い物ついでに培養土を購入。ユズに合うかどうか分らないが。さて、来春、芽を吹くか……まず無理だろうけどさ。 その前に、来春、鉢植えのユズ(の種)のこと、覚えているかどうかが怪しい。

 以下は、「悪足掻きする末黒の芒(すぐろのすすき) 」(2006/02/24)からの抜粋である:

(前略)ゆっくりじっくり読んできたのである。それもいよいよ悲劇的な結末部分に、恐らくは今週末には至ってしまう。
 長編というのは、読み応えがあり、その世界の中にどっぷりと浸らせてくれるが、それだけにその世界から抜け出すとなると一抹の寂しさの感さえ湧いてくる。

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→ 庭を巡ると、南天を含め、画像に見られるような、小さいけれど深紅の実があちこちで見受けられる。雪が降っても、純白の世界に、それこそ血の涙のような真っ赤な実が際立つ。

 所詮は虚構作品であり物語であり、身も蓋もない言い方をすると、白い紙面の活字の世界を目が追っているだけなのである。タクシーの仕事に自分の精力の大半を捧げ、残った僅かな気力の欠片で本を読み、由無し言を綴っている。
 なのに、本を繙くと、一気にその世界に没入させてくれる長編の魔力。というか作家の魔力なのだろうか。

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 こんなに断片的に、途切れ途切れに読んでいるのに、栞(しおり)を頼りに前回読み終わった頁を覗き込み、前の章の終わりの一節を斜め読みし、気分も新たに次の章の冒頭部分から活字を追い始める。
 世事で中断していた間に、本の間に栞ではなく、雑事が、雑念が、怠惰が、失念が挟まっているはずなのに、そう、まるでメビウスの輪のように、俗事という夾雑物、つまりは障害物などするりと乗り越え、あるいは回避させてくれて、前の章と次の章とを繋ぎ合わせてくれる、作家の筆力。

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→ 咲いている花々は少ないかわり、紅葉や黄葉が庭を彩ってくれている。

 手元の電気スタンドが小生の周辺を明るく照らし出してくれる。頭や肩や背中と共に、明かりは本を浮かび上がらせる。やがて本の存在も忘れ果て、活字を追っていることも忘れ、馴染み深くなった登場人物群の饒舌や寡黙や言葉や感情の齟齬、野心、情愛、嫉妬、妄想、打算、愉楽を我がことのように感情移入する。
 読んでいるというのは、一体、どういう作業なのだろう。作業という言葉は不適切か。読んでいる最中、読み手は一体、何をしているのか。

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 アンナは、どうしてそこまで追い詰められていくのか。作家の不倫への願望が裏にあるのか。やむをえざる情念の必然に過ぎないのだろうか。愛し合うとは憎しみと裏腹でなければ持続などしないのか。愛と憎悪とが螺旋を描いてしまって、つい生真面目に情念に忠実なる僕(しもべ)となったものは、かくあるしかないということなのか。


関連拙稿:

我が家の庭はススキの野に…(後編)」(2011/10/24)
悪足掻きする末黒の芒(すぐろのすすき) 」(2006/02/24)

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