ジル・クレマン著『動いている庭』とは
先日、同僚に戴いたユズ。
もちろん、ユズは早速、食べちゃったけど(前日の日記参照)、種が気になる。
それが昨日のこと、車で市内を走行中、ある家の庭(畑)でユズを植え育てているのを見かけた。
← ジル・クレマン (著)『動いている庭』(山内 朋樹 (翻訳) みすず書房) 世界各地の庭や植物相のカラー写真が豊富で見ているだけでも楽しい。
観た瞬間、そうだ、ユズの種を我が家の庭(畑)に植えよう! と思い立った。
今日、生ごみ受けに残っていたユズの種を早速、回収。
今日は雨なので、明日以降、やるぞ!
さて、ジル・クレマン著の『動いている庭』を本日、読了。
「庭づくりの実践に導かれた大胆な環境観が思想・建築・芸術分野にも刺激を与えているフランスの庭師クレマンの代表作」だとか。
彼の本を読むのは初めてだった。そもそも初耳の庭師(書き手)でもあった。
内容説明によると、「できるだけあわせて、なるべく逆らわない――これが現代造園の世界に新たな一ページを開いた庭師、ジル・クレマンの哲学である。荒れ地での植物のふるまいをモデルとし、土地を土地のダイナミズムにゆだねつつ、 植物を知悉する庭師の手によって多彩で豊かな進化をうながすプロジェクト、それが「動いている庭」だ」とか。
庭づくりというと、欧米だと幾何学的な造形、日本だと古寺などの苔庭など山水的な風雅な形の庭を思い浮かべる。
欧米と日本とは考え方がまるで違うようだが、共通点がないわけではない。
それは、庭づくりには、人間の考え方が隅々まで行き渡っていること。
<自然っぽさ>を装う日本の由緒ある神社仏閣の庭も、お寺の住職か修行僧かは分からないが、毎日、隅々まで掃除を欠かさないし、苔を蔓延らせ、落ち葉は掃きとり、何処にどんな樹木や草花を育てるか、春にはどんな花が咲き、夏には、あるいは秋には紅葉が映えるようにと、徹底して計算しつくされている。
一方、この「動いている庭」という奇妙な題名の本で言う、動いているとは、季節ごとの変化を大事にするのは勿論だが、庭の外から鳥によって、虫によって、風に飛ばされてやってくる、当初の庭にはなかったような、下手すると雑草とは言わないまでも、少なくとも計算外の、異物的、あるいは外来種的植物も、時に歓迎するという思想に根差している。
上で引用したように、「荒れ地での植物のふるまいをモデルとし、土地を土地のダイナミズムにゆだねつつ、 植物を知悉する庭師の手によって多彩で豊かな進化をうながすプロジェクト、それが「動いている庭」」なのである。
本書の訳者も驚いているように、こうした発想が、東洋ならまだしも、欧米で生まれるというのは、驚きかもしれない。
そもそも、「庭」は、囲まれた、隔絶された区画の意味がある。
だからこそ、人は、自分なりの思い入れを以て庭づくりをする。計算とまで固いことは言わないまでも、少なくとも自分なりの美意識に応えるような庭であり景観であって欲しいのだ。
そう、せめて自分の領分である自分の庭くらいは。
けれど、本書によると、庭の外からの闖入者、それどころか、外来種であっても、時には歓迎だし、庭の変幻を人間の計算や作為で完全にコントロールするのではなく、まさに自然の為す想定外の結果の齎す効果を、そのままではないとしても、相当程度に受け入れようとする。
本書では、この発想がいわゆる庭に留まるのではなく、地球規模を考え、惑星という庭という発想にまで至っている。
その意味するところは本書に拠っていただくとしようか。
→ 昭和20年8月1日の富山大空襲は、焼夷弾の投下の規模(密度)がひどくて、3千人ほども命を奪われた。この碑は、無縁仏のお骨などが納骨されている。今富山大空襲記念館建設の運動が始まっている。遅きに失しているけれど、意義があると思う。 富山大空襲は、「人口1,000人当たりの死者は17人で地方空襲の中で最多」だとか。 碑(塔)の類なら、富山市内に限らず、各所にある。平和祈願之碑(富山市豊田本町)、戦災復興記念像(天女の像 富山城址公園)、伊佐雄志神社(富山縣護國神社内)、慰霊地蔵尊(島尾海浜公園内)。そしてこの画像の慰霊の碑(長岡墓地)である。
ただ、「本書は、庭づくりの手引きを越えた、自然と人間の関係をめぐる智恵の宝庫である。クレマンの思想は、生命のゆらぎのなかに生きるわたしたちに多くの示唆をもたらすだろう」とは言えそうである。
関連拙稿:
「雑草をめぐる雑想 」(2008-04-04)
「根性雑草とは呼ばれない」(2009-04-13)
「野草でも雑草でもなく…(後編)」(2011-05-26)
「雑草学だって ? ! 」(2014-03-18)
「苔びっしりの桜たち」(2016-10-01)
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