月の兎悲話
→ 捨身飼虎図(須弥座向かって右面) (画像は、「玉虫厨子 - Wikipedia」より)
昨日のような秋晴れじゃなく、午前中は小雨の降る生憎の天気。
午後になってようやく雨も上がったので、富山市議選の投票へ。作られたばかりの公民館へ足を運んだ……ってのは、嘘で、いつものように自転車を駆って。
中はいかにも真新しいという建物で、その広い館内に、投票するのは自分一人。地元の人たちはどうしたんだ、誰も来ないのか……なんて思っていたら、帰る間際になってようやく、ポツポツと人がやってきた。
ホント、閑散な会場に、なんだかがっかりの感。政治活動費(税金)の不正使用に端を発し、富山市議だけでも12名が辞めたという、非常に関心を呼ぶはずの選挙なのに、富山の市民は怒らないのかと、拍子抜けの感。
選挙の争点が政務活動費の使途の明確化なんて、あまりに後ろ向きなテーマに呆れているのか、与党も野党も腐敗していて、市民は力が入らないのか。
でも、市長はコンパクトシティなんて、標榜しているが、小生は問題があまりに大きな政策だと思っている(何度か採り上げたので、ここでは触れない。要は、日本が東京一極集中になって地方が疲弊しているのを、富山市では富山の駅前周辺や路面電車(主に環状線)中心の繁栄を企図する、要はミニ版の一極集中政策を採っているのであって、弊害が大き過ぎると指摘)。
さて、選挙と買い物を終えて、雨も上がったことだし、高枝切鋏で庭木の剪定に二時間ほど没頭した。
冬に向かって、雪吊りもしないといけないが、まずは枝葉の剪定。枝葉に雪が被ると、枝が撓って、隣家や我が家の壁面にしな垂れかかったり、壁面を擦ったりして、実害が生じる恐れがあるので、その予防のためもある。
あと二三回は、同じ作業を繰り返さないといけない。
さらに待っているのは、雪吊り。といっても、そんな立派なことはできないので、樹木に縄を巡らす程度の作業である。
昨日から車中で、『今昔物語集』 を読み始めた。
「インド、中国、日本では北海道から沖縄まで、広大な舞台に繰り広げられる、平安朝の生んだ日本最大の説話大百科。登場人物も僧・武士・庶民などさまざまな階層に及び、ヴァラエティに富む説話を収録。現代語訳と、古文の生き生きとしたリズムによって、豊饒な話の宝庫をヴィジュアルに楽しめる」といった本。
そう、ビギナーズ・クラシックスということで、小生のような古典に弱い、でも、関心だけは抱いている初心者向けの本。
「今昔物語集」なんて、読み下し文であっても、日本編ですら読み通すことはないだろう。
ましてインドや中国編などは恐らく、一生目にしないはず。
そうはいっても、雰囲気だけでも味わいたくて、本書を手にしたのである。
まだ、読み止しだが、興味深い話を知った。
あるいは、世の人たちには常識なのかもしれないが、自分には初耳のこと。
我々日本人は昔から、月にはウサギさんがいて、月の影は、ウサギさんが餅を搗いているという場面を読み込んでしまう。そう言われてきたから、先入観がある。人によれば他の物語を読み込むかもしれない。
昔から日本に伝わる話、きっと中国辺りの影響なのだろうと、根拠もなく想っていた。
← 『今昔物語集』 (角川書店 (編集) 角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)
実際、「月の兎は、「月に兎がいる」という伝承にまつわる伝説。中国では玉兎(ぎょくと)、月兎(げつと)などと呼ばれる」という。
が、本書によると、どうやら違うようである。
便宜上、「月の兎 - Wikipedia」を参照させてもらう。
「月になぜ兎がいるのかを語る伝説にはインドに伝わる『ジャータカ』などの仏教説話に見られ、日本に渡来し『今昔物語集』などにも収録され多く語られている。その内容は以下のようなものである」として、以下の話が紹介されている:
猿、狐、兎の3匹が、山の中で力尽きて倒れているみすぼらしい老人に出逢った。3匹は老人を助けようと考えた。猿は木の実を集め、狐は川から魚を捕り、それぞれ老人に食料として与えた。しかし兎だけは、どんなに苦労しても何も採ってくることができなかった。自分の非力さを嘆いた兎は、何とか老人を助けたいと考えた挙句、猿と狐に頼んで火を焚いてもらい、自らの身を食料として捧げるべく、火の中へ飛び込んだ。その姿を見た老人は、帝釈天としての正体を現し、兎の捨て身の慈悲行を後世まで伝えるため、兎を月へと昇らせた。月に見える兎の姿の周囲に煙状の影が見えるのは、兎が自らの身を焼いた際の煙だという。
そうか、単にウサギが杵を持ち臼で餅を搗いているといった、呑気な話なんかじゃなく、「玉虫厨子」に描かれる、「捨身飼虎」図の物語を連想させる、哀しくもありがたい話があったのだった。
今度からは、満月の夜には、もっとしみじみ、眺めてみたい。
| 固定リンク
「書評エッセイ」カテゴリの記事
- スタインベック『チャーリーとの旅』にアメリカの病根を知る(2021.01.16)
- 圧雪に潰れた車庫から車 本日脱出(2021.01.13)
- 雪との格闘 歩数計は1万超え(2021.01.10)
- 消費税を福祉目的税に(2021.01.05)
- 除雪は経費不要のダイエット(2021.01.03)
コメント