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2016/10/08

物質とウイルスとの境界がどんどん

 雨続きの今日この頃、忙中閑ありじゃないが、何とか時間を搔き削って、牛歩だけれど、読書は楽しみとして、断固続けている。
 昨日は、ルートウィヒ・ウィトゲンシュタイン著の『ラストライティングス』に続き、中屋敷均著の『ウイルスは生きている』を読了した。

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← 中屋敷均著『ウイルスは生きている』(講談社現代新書)

 ウイルス関係の研究が進んだこともあって、この一二年、ウイルス関連の面白い本が相次いで刊行されている。
 小生が読んだ本だけでも、上掲の本の外、福岡伸一著の『生物と無生物のあいだ』や、フランク ライアン著の『破壊する創造者――ウイルスがヒトを進化させた』 、武村 政春著の『巨大ウイルスと第4のドメイン 生命進化論のパラダイムシフト』などを読んできた。

 感想を述べる能などないので、今日は内容紹介を示すにとどめておく。
 表題には、物質とウイルスとの境界がどんどん狭くなっていることを示すにとどめているが、ウイルスと細胞との境界もなくなりはしないが、擦り減ってきつつあるようである。

 さて、中屋敷均著の『ウイルスは生きている』は、本書の内容紹介によると:

新型インフルエンザやエイズなど、人類を脅かす感染症を伝播する存在として、忌み嫌われるウイルスだが、自然界には宿主に無害なウイルスも多い。それどころか、宿主のために献身的に尽くすけなげなウイルスたちも多い。実は、私たちのDNAの中には、ウイルスのような遺伝子配列が多数存在し、生物進化に重大な貢献をしてきたことが近年の研究でわかってきた。ウイルスは私たちの中に、生きていたのだ!

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← 福岡伸一著『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)

 本書の内容紹介によると:

生命とは、実は流れゆく分子の淀みにすぎない!?

「生命とは何か」という生命科学最大の問いに、いま分子生物学はどう答えるのか。歴史の闇に沈んだ天才科学者たちの思考を紹介しながら、現在形の生命観を探る。ページをめくる手が止まらない極上の科学ミステリー。分子生物学がたどりついた地平を平易に明かし、目に映る景色がガラリと変える!


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→ パンドラウイルスの小片の電子顕微鏡画像。 Image courtesy Chantal Abergel and Jean-Michel Claverie  (画像は、「パンドラウイルス、第4のドメインに? ナショナルジオグラフィック日本版サイト」より)

パンドラウイルス、第4のドメインに? ナショナルジオグラフィック日本版サイト」によると:
 

これまで知られている中で最大のウイルスが発見された。パンドラウイルスと呼ばれるこれらの生物は、科学の世界にまったく新しい疑問を突きつける存在で、発見した研究チームによれば、既存の生物とは完全に異なる第4のドメインに属している可能性もあるという。 新たに見つかったパンドラウイルス属のウイルスの大きさは約1ミクロン(1000分の1ミリ)で、50~100ナノメートルほどしかない他のウイルスと比較すると格段に大きい。属とは分類学上、種と科の間に位置するカテゴリーだ。

 物理的な大きさだけでなく、パンドラウイルスはDNAも巨大だ。大部分のウイルスの遺伝子の数は10程度だが、パンドラウイルスは2500の遺伝子を持っている。


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← 武村 政春 (著) 『巨大ウイルスと第4のドメイン 生命進化論のパラダイムシフト』(講談社ブルーバックス)

 本書の内容紹介によると:

2013年7月、「超巨大ウイルス」に関する第1報が、科学誌『サイエンス』に掲載された。発見当初は「新しい生命の形」というニックネームが与えられていたというこの巨大ウイルスは、論文では「パンドラウイルス」という名が付けられていた。むろん、その名の由来はギリシア神話の「パンドラ」である。
当初、このウイルスが「新しい生命の形」と名付けられたのには理由があった。その姿が、それまでのウイルスとは大きく異なっていたからだ。かといって、これを生物とみなすにはあまりにもウイルス的であった。ウイルスでもない。生物でもない。だとしたら、これまでに全く知られていない新たな生命の形なのではないか。そもそも、「生物」とはいったい何なのだろうか?

『巨大ウイルスと第4のドメイン』生命進化論のパラダイムシフト武村政春=著 現代ビジネス 講談社」によると:
次々と発見される巨大ウイルスは、サイズが大きいだけでなく、多彩な遺伝子を持ち、細胞性生物に近い機能を備えているものもいる。これらの新発見により、「ウイルスは生物ではない」という定義が揺らぎ、巨大ウイルスは未知の生物グループ(ドメイン)ではないかという議論が湧き上がってきた。最先端のウイルス研究が「生物とは何か」をあらためて問い直す。

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← フランク ライアン (著)『破壊する創造者――ウイルスがヒトを進化させた』 (夏目 大 (翻訳)  ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 本書の内容紹介によると:
 

エイズ、エボラ出血熱など命をも脅かす感染症を引き起こすウイルスは怖い存在だ。 しかし実は生物進化に重要な役割を果たしてきたという。 ダーウィンの進化論にも一石を投じる仮説を、生物学者で医師の著者がスリリングに証明していく。 ウイルスが自らの遺伝子を宿主のDNAに逆転写し共生していること、 ヒトゲノムの約半数がウイルス由来であることなど、
驚きの事実が解明され、医療に新たな道を拓いていく。 解説/長沼毅

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