クレーの無垢なる世界
寒い! ついこの間まではパンツ一丁だったのに、夕べはとうとう長袖のシャツを羽織るように。季節は奈落の底へ落ちるように、秋へ、冬へ!
→ パウル・クレー(Paul Klee)『Nachtfaltertanz』(1923) (画像は、「クレー「綱渡り師」 - 足立区綾瀬美術館 annex」より)
ある本を読んでいたら、興味深い線画を見つけた。どこか、弥生式の壺か甕に刻まれた、人間か動物の絵を彷彿させるような絵。
ネットで同作品を探したが見つからない。
ただ、その最中、「綱渡り師」に再会。
実は、小生の寝室には、もう、二十年以上、パウル・クレーの「Seiltänzer(綱渡り師)」(1923)の絵(複製画)を額に入れて飾っている。この絵を観ながら創作を試みたことも。
欧米の画家の中では、パウル・クレーの絵が一番、好き。
極度に抽象化されているようだが、その実、親しみやすさというか、親近感のようなものを抱かせてくれる。
何処か、なつかしい。天使が舞い降りて、クレーの絵の中で息づいているようだ。
ある本というのは、クレー著の『造型思考(上)』である。
クレーなりに、懸命に造型理論を語っているのだが、小生にはどこか空回りしているように思えてならない。
というか、理論の書じゃなく、ある種の詩文、モノローグに感じられてしまうのだ。
むろん、自分の理解力、咀嚼力の不足がそういう印象を抱かせるのだろう。
← 「蛾の踊り」 (原題 Nachtfaltertanz 英題 Dance of the Moth) (画像は、「パウル・クレー展 時間の無駄遣い」より) たぶん、冒頭と同じ作品だと思うが、色調が随分と違う。
でも、クレーが一端、彼の理論(なるもの)によって(かどうか)絵を描き始めると、ほんのちょっとでも、線が刻み始められると、そこには理論(理屈)などを遥かに超えて、絵としての生命が息づきはじめ、どんな理屈よりも雄弁に天使の世界を印象づける。
常識や世間的制約に雁字搦めとなったそんじょそこらの人間には、夢の中ですら手の届かなくなった、天使の世界、純粋無垢な世界、学校や大人に汚される以前の幼子の世界が、忽然と、でも厳然とそこに現出させてくれる、それがクレーなのだ。
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