春画…毀誉褒貶の急変ぶり
昨日から、『ユリシーズ 文庫版 全4巻完結セット』 (集英社文庫ヘリテージ) の第一巻を読み始めた。かなり大部な本なので、ずっと躊躇ってきたが、今夏のメインの読書に本書を据えることに決めたのである。
代表作の『フィネガンズ・ウェイク 』は 柳瀬 尚紀氏の訳で苦労して読んだし、『ダブリン市民』は二度、『若い藝術家の肖像』は、二度三度と読んだものである。
だが、肝心の『ユリシーズ』は、全く未読。ここらで腰を据えて読むぞー、である。
さて、過日より読んできた「ユリイカ2016年1月臨時増刊号 総特集=春画 SHUNGA」を、今日、残りの80頁あまりを読み通した。
春画にはかねてより興味がある。関連の本や特集は気になってならない。
そういえば、ある思い出がある。
それは、昔、ある縁があって入手した逆輸入品らしき春画、それも箱入り。数枚のセットだった。
ある人物から、いかにも、秘密の書という扱いでもらったのである。
家に帰って、こっそり見て(周りに誰もいないのに)、にんまり……というより、どう鑑賞し受け止めればいいのか、戸惑っている自分が居た。
昭和56年か57年の頃の話。小生は三十路にも達していない。
複製画だとは分かっていたが、当時としては複製であっても容易には入手できない(そんな時代だった)。
その後、ずっと秘本扱いで、秘蔵してきた(父にも、外聞は無用と言われたっけ)。
が、30年近くも経ったある日、小生が秘蔵していた春画に遥かに勝る春画が本で、雑誌の論考で、言及され、春画(の画像)も掲載されている。
となると、小生が入手した当時は、高かったはずの複製画も、今となっては、セットでも数千円の値打ちもなくなっている。
なので、あっさり人にあげてしまった。
← 「ユリイカ2016年1月臨時増刊号 総特集=春画 SHUNGA」 「各分野の泰斗から気鋭の若手まで、 縦横無尽に語りつくす「春画」のすべて」だとか。
同じ春画でも、時代の趨勢というか、傾向というか、あるいは官憲の扱い、さじ加減も変貌を遂げていく。
そう、『water fruit 篠山紀信+樋口可南子』や宮沢りえ写真集である『Santa Fe』など、ヘアヌード写真集が堂々と発売されるような時代にとっくに突入していたのだ(ちなみに小生はこの二冊とも早々と入手している)。
その後は、AVもどんどんエスカレート、ネットの世界では裏ビデオも横行してしまっている。
となると、春画は、文化であり、男女が共ににんまりと楽しめる、お楽しみの小道具になってくる、というわけである。
社会が熟した? それとも、時代は過激に先走ってしまっているから、春画など、公然と眺めても、反って文化人らしい?
この辺り、じっくり考えるに値する現象なのだろう。
【エッセイ】
わが宝物 / 池内紀
シュンガ・マニエリスム / 高山宏
春画への接近をはばむもの / 井上章一【対談1】
美術史からみた春画 / 辻惟雄×小林忠【春画を知る】
浮世絵春画の見どころ、読みどころ / 白倉敬彦
京都と古春画 / 早川聞多
猥褻のはじまり / 木下直之
春画を、見ること/見せること / 樋口一貴【インタビュー】
春画が気づかせてくれること / ロバート キャンベル【春画を見る】
夜の歌麿 ブランショ、バタイユ、キニャールから / 酒井健
春画の少年力 魅惑という権力 / 佐伯順子
技巧の快楽の技巧 / 港千尋【対談2】
春画の何を見ているのか / 上野千鶴子×田中優子【春画を読む】
然善とイザナミは言った / 三浦佑之
「小柴垣草紙」と中世秘本の世界 / 木村朗子
近世怪異譚と春画 / 鈴木堅弘
関連拙稿:
「春画駘蕩されど血塗られた慈悲、笞打つ帝国」(2016/07/27)
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