L.ウィトゲンシュタイン著の「ウィトゲンシュタイン『秘密の日記』」を読了
L.ウィトゲンシュタイン著の『ウィトゲンシュタイン『秘密の日記』 第一次世界大戦と『論理哲学論考』』を読了した。
→ クリムト画「世界の名画より ≪マルガレーテ・ストンボロー=ヴィトゲンシュタインの肖像≫1905年 180×90cm」(ミュンヘンバイエルン州立絵画コレクション ノイエ・ピナコテーク蔵)
ちゃんとした感想など書けそうにない。某SNSサイトには、次のような呟きを投じた:
高校時代からずっと畏敬の念を抱いてきた哲学者。従軍の最中の生々しい記述。その戦いの中で、『論理哲学論考』を書いてきたという事実。傑出した哲学者と粗暴な軍人たちとの息詰まる日々。戦争だからこその光景。ようやく公表された日記の意義は大きい。
以下、ウィトゲンシュタインに絡む拙稿からの抜粋集である。
「風邪は引いても読書だけは」(2016/07/02):
「ウィトゲンシュタインが第一次世界大戦の激戦のさなかノートに書きとめた哲学的アイデアは、のちに『論理哲学論考』に結実するが、彼が硝煙弾雨のなかで綴ったのはそれだけではなかった! 彼は同じノートの半分に、戦場の生活、恐怖、欲望、嫌悪、叫び、祈りを赤裸々に書きとめていた」といった本。
かつてブログにも書いたが、大学も哲学つまりは、ウィトゲンシュタインとショーペンハウエルを学びたくて志望したようなもの。『論理哲学論考』を原書で読み解きたくて。宝石のような本なのだ。人を寄せ付けないかのような孤高な哲学者の雰囲気が濃厚だが、その彼の秘密の日記となると、読まざるを得ない。
今日から読み始めた。
「ラヴェルからストンボロー邸へ音の旅」(2007/03/28):
小生がラヴェルのことを強く意識したのは、やはり音楽に絡むが、やや変則的な方面からだった。
小生は高校時代からのヴィトゲンシュタイン贔屓。ヴィトゲンシュタインの哲学に、というか生き方・風貌・著作に傾倒してきた。大学の卒論も、ヴィトゲンシュタインを扱った(扱おうと試みた)ものだった。
『論理哲学論考』は宝石のような著作だ。このプリズムのような本を透かして語りえない混沌と秩序の宇宙が垣間見える。
← L.ウィトゲンシュタイン著 『ウィトゲンシュタイン『秘密の日記』 第一次世界大戦と『論理哲学論考』』(丸山空大訳 星川啓慈 / 石神郁馬解説 春秋社)
「ヴィトゲンシュタイン以前」(2001/05/03):
(前略)ここで実はヴィトゲンシュタインが登場するのです。
言葉は従来の欧米では知性の担い手でした。感情や肉体を拝し、論理の表現の媒体だ ったのです。しかし、本当は言葉は少なくとも人間においては(あるいは一般人の常識 においては)情緒の表現媒体でもあったのです。つまり西欧において長く排除され続け てきた情念の住家としての言葉が、技術の先端の場面で見直されてきたというわけです 。
マスコミでも最近、話題になってますが、ロボットが今、脚光を浴びています。その ロボット作りの現場において、まさにロボットに人間との対話を可能にする上で感情と いうものが決して避けられないテーマになるわけです。感情を解しないロボットなどナ ンセンスですから。又、ロボットという物理的構造を対人間との関わりの上で作る際、 その物理的構造を考えていくと、人間の(生き物としての)身体に思い至るというわけです。
生身の身体というのは厄介至極な物理的実体です。それが厄介だからこそ、デカルト以来、 それを排除して明晰な論理だけの世界をなんとか構築しようとやってきたのでしょう。
が、コンピューターの発達によって論理や記号の駆使の果てに、やはり避けがたい形 で避けるというより逃げ回ってきた肉体が、精神が、感情が立ちあらわれたというわけ です。
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