麦わら帽子の少女
その輝きは、抉られた眼窩の発する光だ。
絡み合う体。捩れた心。捻くれた記憶。
麦わら帽子の少女。追いかけていったのは誰? 逃げていったのは、君だよね。
逃げて、逃げつかれて、とうとう追い付かれて、逃げ切れなくて、湖に身を投げた。
だから、追いかけた誰かも、あとを追って飛び込んでしまった。
一瞬、揺れ響(とよ)み、飛沫を撥ね、波紋を広げた湖も、あっという間もなく、もとの静けさを取り戻した。
あとには、何も残さずに。
ガラス窓に刻み込まれた裂け目は、二つの透明な花瓶。生けられてあるのは、動くことを忘れたロボット人形。
二つの大小の波紋が波を高め合い、溶かし合い、あるいは傷つけ合う。そして和解の時を待ち侘びる。
ああ、ガラスの海の少女よ。記憶の海の底に沈んでしまったあなたよ。
あの日の姿のまま、呆然と立ち尽くし、信じられないという顔をして目を見開くのは、やめてくれないか。
もう、耐えられないのだよ。もう、終わりの時が近づいているはずだろ?
瞼の裏に抉るように刻み込まれた、あなたの姿。拭い去れないあなたの像。
今はもう、幻となった思い。
そう、もう、終わったんだよね。だから、もう、許してくれてもいいよね。
(文中の作品は、「小林たかゆき お絵かきチャンピオン」より)
| 固定リンク
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 失われた30年が40年になるのは確定か(2025.12.07)
- 大好きなパワーズの本を前に寝落ち(2025.12.05)
- ショーペンハウエルに絡む夢で目覚めた(2025.12.04)
- 久々黒猫の姿に遭遇(2025.12.02)
- 『リミタリアニズム 』とは何ぞや(2025.12.01)
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 体を鈍らせない筋トレ(2025.07.03)
- 海の中は賑やかな会話にあふれている(2025.06.23)
- 夢の一場面に過ぎない?(2025.06.13)
- 庭仕事に汗だく(2025.04.17)
- バルガス・リョサ氏死去…巨星墜つ(2025.04.16)
「恋愛・心と体」カテゴリの記事
- 失われた30年が40年になるのは確定か(2025.12.07)
- 大好きなパワーズの本を前に寝落ち(2025.12.05)
- ショーペンハウエルに絡む夢で目覚めた(2025.12.04)
- 久々黒猫の姿に遭遇(2025.12.02)
- 『リミタリアニズム 』とは何ぞや(2025.12.01)
「ナンセンス」カテゴリの記事
- ナボコフからクンデラへ(2025.02.07)
- 日蔭ノナクナツタ広島ノ上空ヲトビガ舞ツテヰル(2024.08.06)
- キリスト教の茶の湯への影響…(2024.01.29)
- 数日分は貯えたと思いたい(2024.01.05)
- 「昼行燈2」を夜になって書いた(2023.09.16)




コメント