« 永遠と一瞬の美しき目合ひ | トップページ | 吉村昭著『高熱隧道』と泡雪崩 »

2016/06/29

我が家でも『高熱隧道』でもトンネル開通でした

 お風呂場から茶の間へ行こうとしたら、茶の間とお風呂場(洗面所)の間にあるドアが開かない。ドアのノブが故障した! 洗面所に閉じ込められた! ドアを開けようと悪戦苦闘数十分。

800pxgold_doorknob_crop

→ ドアとドア枠を結びつけている空錠が枠に嵌まったまま。屋内のドアなので、鍵を使うタイプじゃない。

 さて、どうやって脱出したか。洗面所からは、窓を開ければ外に出られる(入浴直後なので、素っ裸だけど)。問題は、そのあとどうするか。 幸い、トランクスだけは、洗面所にある洗濯機の中に放り込んであった。まずは、トランクスを穿く。

 何処か、施錠していない窓はないか…。玄関は、夕方、入浴直前に施錠。縁側は、台所は、座敷の廊下のドアはどうか…。ドアのノブを力任せにガチャガチャやりつつ、ふと、思い出した。ある外の場所に台所の鍵が隠されていることを。もう、八年ほど、使っていないけど、そのまま置いてあるはず。

 トランクス一丁の姿で洗面所の窓を開けて、飛び降りる。とはいっても、スリッパは履いているけど、窓の桟は地上高さ1.5メートル以上。そこを裸同然、素足といった変な格好で飛び降りるのは至難。

 ただ、幸い、洗面所へは、スリッパを履いて行ったので、そのスリッパを履く。これれ裸足という事態だけは避けられる。

 でも、このままではラチがあかない。とうとう思い切って飛び降りた。窓の外には余計なものがあって、桟や窓枠に掴まりながら降りようにも、ちゃんとした姿勢が取れない。

 余儀なく、桟に腰かけ、ズルズルと滑り落ちるようにして、砂利やゴミなどの散乱する地上へ。壁面やら地面のゴミ類に足を取られるやらで、降りた瞬間、へたりこんだよ。 ちょっとだけ、肘を擦ったような感じがあった.。ちょっと肘を擦りむいたけど、ケガと言うケガはなかった。

 最悪、脚の骨折も覚悟したが、地上にへたりこみつつも、体の何処にもズキズキ感がない。折れていない!

 某場所へ行ったら、台所の鍵があった! 裸同然のまま、夕方の宵闇に紛れつつ、うろうろして、ああ、こんな姿を近所の人に見られたらどうしよう……

 さて、なんとか、風呂場(洗面所)から脱出に成功し、家の中に入れたけど、今後はどうするか。茶の間から洗面所へのドアが締まったまま。風呂場へ行けないし、洗濯もできん! ドアをけ破るしかないか。

[ここからは翌日のこと。]

 仕事が終わって深夜帰宅した。汗っぽい体。やはり、どうしてもシャワーくらいは浴びたい。いずれにしたって、洗面所には洗濯機もあるし、ドアが締め切りって状態を放置していいはずがない。

 丑三つ時の帰宅だし、大概は、衣服を脱いで、リクライニングにどっかり体を沈めて、ゆったりしたいところだが、やはり、まずは、洗面所へのドアをこじ開けないと。
 
 プラス・マイナスのドライバーで、早速、ドアのノブ外し作業開始。屋内のドアのノブなので、鍵を掛けるようなタイプじゃない。

 まずは、ノブをドアに固定しているネジを外したが、ドアとドア枠を結びつけている空錠は金属のボックスの中での作動なので、ノブのネジを取ってノブを外してもダメ。ベニヤ板に覆われている。

 ベニヤ板をドライバーなどで破って削ぎ落とす。それでも、ダメ。ついには、ノブの周辺のベニヤを剥がしきる。ノブの金属部分を全て取っ払って、ようやくドアが開いた。

 ようやく、茶の間と洗面所との往来が可能に。風が通った(ふと、それまで読んでいた吉村昭の『高熱隧道』を思い出した。悪戦苦闘の果てに山の両側から掘り込んで行ったトンネル同士が真ん中付近で合体し、開通する感動)!

111703

←  吉村昭/著 『高熱隧道』(新潮文庫) 「人間の侵入を拒み続けた嶮岨な峡谷の、岩盤最高温度165度という高熱地帯に、隧道(トンネル)を掘鑿する難工事であった。犠牲者は300余名を数えた。トンネル貫通への情熱にとり憑かれた男たちの執念と、予測もつかぬ大自然の猛威とが対決する異様な時空を、綿密な取材と調査で再現して、極限状況における人間の姿を描破した記録文学」。さすが鬼気溢れる作品だった。犠牲者は300余名を数えたってのは、戦前だったから許されたことかもしれない。改めて、泡(ホウ)雪崩の凄さを思い知らされた。通常の雪崩とは比較にならないもので、「雪崩を構成する雪煙が最大で200km/h以上の速度で流下する」とか。「1938年12月27日富山県下新川郡宇奈月町志合谷(現在の黒部市)で発生した泡雪崩では、黒部川第三発電所建設に伴うトンネル工事の作業員が宿泊していた鉄筋コンクリート造宿舎の3階および4階部分が川の対岸600mまで吹き飛び84人の死者(うち47人は遺体の確認ができなかった)を出している」という。小生が泡(ホウ)雪崩のことを初めて知ったのは、鈴木牧之によって書かれた『北越雪譜』でのことで、粗方、忘れてしまったが、「「ほふら」の表記でこの種の雪崩の記述がある」らしい。 拙稿「「魔の雪」…雪国」など参照。

 あとは、床に落ちたべニアのクズなどを掃除機で綺麗にし、ノブを外した周辺をガムテープを貼って、手が触れても大丈夫なように、防護。

 最悪の場合、ドアを蹴破るか、で、スカスカとなった、茶の間と洗面所の間にカーテンでも吊るして誤魔化すか、なんて考えていたが、ドアは残しておけたのが幸い。ノブも洗面所側のものは残っているから、向こう側から締め切っても、開けられる。

|

« 永遠と一瞬の美しき目合ひ | トップページ | 吉村昭著『高熱隧道』と泡雪崩 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

駄洒落・戯文・駄文」カテゴリの記事

ドキュメント」カテゴリの記事

コメント

私も部屋の鍵が壊れて閉じこめられたことがあります。
そのときはドアの鍵周辺を破壊してようやく脱出しました。
大汗をかきました。
玄関の鍵以外はシンプルで、もし壊れても脱出できるものに替えました。

投稿: OKCHAN | 2016/06/30 11:36

OKCHANさん

同じような体験をされた方、結構、いるようですね。
吾輩の場合、洗面所に閉じ込められ、何一つ道具が無くて、最初は途方に暮れました。
冬にはドライバーが洗面台にあったっけと思い出したけど、何の助けになるはずもなく。
ようやく、落ち着いてきて、まずは、外へ出ようと思い立ったものでした。

今日、洗面所の窓の下を眺めたら、ガラスや陶器の割れた破片がいっぱい。こんなところに飛び降りたのか……、よく、無事だったなーって!

投稿: やいっち | 2016/06/30 21:46

梅雨時の蒸し暑いなか大変な思いをされましたね。
警察や消防ごとにならなくて良かったですね。
我が家も日頃から玄関の鍵や窓の鍵はしっかり施錠しています。
物騒な世の中になりましたので、家に人がいても鍵は必ず閉めております。
8年間も鍵が置いてあったのも凄いと思いますが、よく想い出されましたね。

投稿: SILVIA おじさん | 2016/07/01 00:02

SILVIA おじさんさん

ホント、最初は緊急車両を呼ぶしかないと覚悟も。でも、携帯は茶の間。

あるいは、近所に救助を求めるとか。でも、トランクス一丁で助けを求めに行くってのも、恥ずかしい。

一人暮らしなので、施錠関係はこまめにやっていますが、まさか、茶の間と洗面所との間のドアのノブがおかしくなるなんて、全く想定外。

某所の鍵は、小生が帰郷した折に、秘密の鍵として教えてもらったもの。台所の鍵。でも、合いかぎがあるので、某所の鍵は使わずじまい。
それが思わぬ形で役立ったわけです。

それにしても、今日も洗面所から飛び降りた場所、見直してみましたが、ガラスや陶器の割れた破片がいっぱいで、よく無事だったと。

投稿: やいっち | 2016/07/02 22:02

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 我が家でも『高熱隧道』でもトンネル開通でした:

« 永遠と一瞬の美しき目合ひ | トップページ | 吉村昭著『高熱隧道』と泡雪崩 »