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2016/06/25

「ゆかり発言」の上田正昭著『渡来の古代史』を読む

 今春、筆者は亡くなられた。古代史には素養も何もないのに、ひたすら好奇心に駆られて、いろんな学者の本を読み漁って来た。森浩一や三浦氏、大和氏など。あるいは、松本清張や梅原猛氏の諸著すら、古代史に絡むということで、図書館の本を中心に読んできたものである。

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← 上田 正昭著『渡来の古代史 国のかたちをつくったのは誰か』( (画像は、「KADOKAWA公式オンラインショップ」より)

 そうした著者の一人に上田正昭が居た。ほんの数冊を読んだだけだが、信頼の念を以て安心して読める学者(書き手)だった。
 それだけに、何とか同氏の本を読みたいと思ってきたが、ようやく手にすることができた。

 出版社の案内によると、「「帰化」と「渡来」の語を明確に区分、古代史に風穴をあけた泰斗による、「渡来人と渡来文化」の集大成。近年の発掘調査の成果も踏まえ、古代国家形成にかかわる渡来を東アジアという視点でダイナミックに提示」といった本。

 より詳しくは、「日本の歴史を考える上で欠かせない、大陸から来た人びと。百済・加耶系の漢人、新羅系の秦人、高句麗系の高麗人などは、いつ、どのように登場し、どういった役割を果たしたのか―。彼らの入国を意味する「帰化」と「渡来」の語を明確に区分、古代史に風穴をあけた泰斗による、「渡来人と渡来文化」の集大成。近年の発掘調査の成果も踏まえ、古代国家形成にかかわる渡来を、東アジアという視点でダイナミックに提示する」というもの。

 上田正昭というと、なんといっても、かの「ゆかり発言」に言及しないわけにいかない。
 同氏の逝去で、一部では一時的ながら、「ゆかり発言」に改めて脚光が浴びせられた。
上田正昭 - Wikipedia」によると、「朝鮮新報によれば、今上天皇が「桓武天皇の生母が百済の武寧王の子孫であると続日本紀に記されていることに韓国とのゆかりを感じます」と2001年12月に述べた事が話題となったが、既に1965年、著書でその可能性について指摘していた」、その著者が上田正昭なのである。

 また、同上サイトによると、「2010年、韓国の国立中央博物館で「檀君の建国神話は、日本の建国神話の母胎」と題した学術会議の前に論文事前公開された際に、本人が、日韓の天孫文化には、山頂に降臨する点などをはじめ、共通点や類似点が多い。さまざまな事実を検証し、百済の神の存在が、日本で継続的に命脈を受け継いできたと指摘した」のである。
 本書でも、著者の面目躍如である。秦氏、漢氏、高麗氏、船氏、百済王氏らを中心に、日本の経済や文化、政治、国家の形成などに果たした渡来人の大きさを縷々語っておられる。
 本書の「あとがき」で、筆者は、『新選姓氏録』に言及している。同書において、平安京の千百八十二の氏が、「皇別」(真人姓氏族とその他の皇別)・「神別」(天神・天孫・地祇)そして「諸蕃」(漢・百済・高麗・新羅・任那)に分けて構成されている。

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← 『青木春嶺作品集』(クオリアート) 本書の末尾には、なんとあの『江戸の身体を開く』の著者であるタイモン・スクリーチからのメッセージが寄せられている! ひょんなことからゲットした。味わい深い書やペン字が楽しめる。

 この「諸蕃」が渡来系の人々であり、千百八十二氏のうちの三百二十七氏を占めている。
 しかも、本書では(敢えて?)触れていないが、「皇別」にしろ「神別」にしろ、当時の記録では「諸蕃」から脱しているだけで、歴史や由来を辿れば、弥生時代や古墳時代に渡来した、大陸や朝鮮半島の出身者が大半なのではなかろうか。つまりは、諸蕃の先輩たちなのではないだろうか。

 縄文時代以来の由来を持つ支配者層はいるのだろうか、はなはだ疑問だと思う。
 その縄文人にしたって、北方の大陸からか、中国からか、朝鮮半島から、それとも東南アジアからやってきたに違いないのだ。

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