好奇心で中野 明 著『裸はいつから恥ずかしくなったか』を読む
ひたすら好奇心と、多少の(?)スケベ心で買い求め、読んでしまった本。
昨日は仕事がやたらと暇だったもので、残り160頁ほどを一気に……じゃなく、ダラダラ読んで行っても、余裕で読み終えてしまった。悲しい現実……。
← 中野 明 著『裸はいつから恥ずかしくなったか ─「裸体」の日本近代史』 (ちくま文庫) 「幕末、訪日した外国人は混浴の公衆浴場に驚いた。日本人が裸に対して羞恥心や性的関心を持ったのはいつ頃なのか。「裸体」で読み解く日本近代史」とか。
江戸時代に関連する本を読むと、そういった話(や絵)は折々出てくるので、気になってならないでいた。
さすが、世の中は広いもので、小生のようなスケベ心に……じゃなく、関心に見事に応えてくれる書き手(調べる人)がいるものである。
江戸時代は、自宅でも(但し、庶民は、一般庶民の内風呂は禁止されていた。火事が多かったからである)、公衆の面前でも、銭湯でも、老若男女が入り乱れての混浴状態だったという。
そもそもが襖や障子の文化(というか、立派な屋敷ならともかく、家の中には敷居もないも同然だったようだし、外から家の中が丸見え。
ということは、男女の営みも外からも、中からも(つまり、子どもらにも)丸見えだったということだ。
こうした風習は、いつからだったのだろう。江戸時代に始まったとも思えない。
→ 江戸時代初期の寛永年間(1624~43)頃の江戸を描いた『江戸名所図屏風』の一部 (画像は、「【男女混浴】江戸時代のお風呂事情を画像つきでまとめてみた【頻度は?】 江戸ガイド」より)
さて、こういった男女とも裸を恥ずかしがらない風習は、いつから始まったものかは分からないが、終わったのはある程度、明確なようである。
本書の内容説明によると、「老若男女が入り乱れる混浴の公衆浴場、庭先で行水をする女性たち、裸同然の格好で仕事をする人々…。幕末、日本を訪れた外国人たちは互いの裸に無関心な日本人に驚き、その様子をこぞって記録した。しかし急激な近代化が日本人の裸観に影響を与え、いつしか裸を不道徳なものと見なすようになる。同時代資料を丹念に読み解き、日本人の性的関心と羞恥心の変遷をたどる「裸」の日本文化史」ということで、明治維新前後から十数年の間のようだ。
小生は、某SNSで、以下のように呟いている:
明治の初めころまでは、混浴だったし、裸体を晒すことも平気だったって。明治維新政府の薩長などの小役人どもが欧米風なモラルに(も)追い付き追い越せと、日本の文化、風土、歴史をかなぐり捨てていった。一言でいえば(本書には書いてないが)、人間のモラルや風姿の資本主義化が一気に進んだってこと。何もかもが金銭的価値づけ(つまり、商売)の対象となる。
↑ 『肌競花の勝婦湯』豊原国周 画 (画像は、「【男女混浴】江戸時代のお風呂事情を画像つきでまとめてみた【頻度は?】 江戸ガイド」より)
維新前後の日本に来たのは、新教(プロテスタント)系の国が多く、19世紀のある時期、「ヴィクトリア朝期の勤勉、禁欲、節制、貞淑などを特徴とする価値観や道徳のこと。19世紀に成長著しかった中流階級の理想を反映し、ピューリタニズムが強く表れている。文学や絵画、彫刻などに強く影響を与えた。行きすぎた厳格さから二重規範を生み出すこともあり、しばしば上品ぶった、偽善的といったニュアンスを持つこともある」といったヴィクトリアニズム (Victorianism) の影響の強い時代の人々が日本に渡って来たし、日本のお手本になってきたのである(「ヴィクトリアニズム - Wikipedia」など参照)。
もう、今更、後戻りはできないのだろう。厳格な文化は一層厳格化の道をたどるだけだろう。そのほうが、英風俗産業でも化粧品(美容)産業でも、商売になるのだから。
← 本書でも掲げられている、江戸時代末期の混浴を示す、有名な絵。やや想像が混じっているか。子供がいないことからしても、想像図っぽい。
ところで、本書などを読んでも浮かんでしまった疑問が消えなかった。
それは、裸(同然)が横行し、裸であることが性的な欲求を挑発したり惹起したりしないのなら、では、性的な発火点は何処にあるのだろう。
それとも、裸であることが日常であるということは、性(性交)も、日常茶飯事だったということなのか。
性的に放縦だったとしたら、性的に存分に満ち足りており、セックス後の男女がしばらくの間はお互いの裸に興奮したりしないように、混浴も今更気になるはずもなかったということなのか。
その辺りの掘り下げが物足りなかった。
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