雨の日の公園
ボクは公園を歩いてみた。近所にあるけど、天気のいい日には一度も行ったことのない公園。
児童公園ってものじゃなく、大人たちが草野球やゲートボールだってやっているし、大きな遊具が幾つもあって、休日ともなると、近所の親子連れでいっぱい。
母親や父親が子供たちの遊び興じる様子を見守っている。
ボクは、ひとりぼっちなので、なんとなく行きづらい。
行ったって、仲間外れになるに決まっている。
でも、行きたい。遊んでみたい。誰にも見咎められずに、大きな広場を駆け回ってみたい。
みんなのように、大声を張り上げて、鉄棒やら滑り台やら、お伽の国のようなトイレやら、青空を震わせてみたい。
ボクは、空を泳ぐ魚になる。でっかい魚だ。白い雲はボクの隠れ家、ボクのベッド、ボクの仲間だ。
地上で誰かがボクを見て叫んでいる。
えっ、何、言ってるの? まさか、ボクを呼んでいる?
ボクを仲間に入れてくれる ? !
ウソじゃないの? 夢のような話だよ?
ウソじゃない証拠に、あの子はボクに向かって、紐を投げかけてくれた。紐を掴んだら、それこそ地上の見知らぬあの子とボクとは、絆で結ばれるってこと ? !
ああ、あの紐さえあれば、ボクたちは友達になれる。夢のような話だ。縄跳びだって、できる。ロープを回してピョンピョン、跳んでみる。!
そうだ、紐をみんなで手に持って、紐の中に入って、ガタンゴトンって、電車ごっこも楽しいぞ。
そのうち、中にあの子も入ってきて、ボクとあの子は、きっと。
そしたら、次は鬼ごっこだ。最初は、ボクが鬼になって、みんなを、あの子を追いかける。
次は、あの子が鬼になっちゃうかな。ボクを追ってくれるかな。
ボクは、きっと、ずっとあの子を追いかけるんだ。どこまでも。
気が付いたら、ロープを持ったまま、走っていた。ボクもあの子も絡んで絡まれて…。
そんな夢をボクは追っていた。
雨は降り止まない。誰もいない公園。
ボクさえ、姿が見えない。窓をたたく雨の音だけが聞こえてくる。
ベッドからは人影のない公園が見えるだけ。
それでも、ボクは楽しいんだ。公園に、そう、夢のど真ん中にいたに違いなんだから。
[ 本文中の画像は、「小林たかゆき お絵かきチャンピオン」より。]
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