先輩後輩の活躍から昔日のことなど
五月の初めころは、荒れる天気が続いた。晴れても、強風が吹き荒れ、列車もダイヤ通りには運行できなかったことも。
← 岡田 喜秋【著】『定本 山村を歩く』(ヤマケイ文庫 山と渓谷社)
たまに強い風が吹くことはあっても、あれだけ連日のように荒れるのは、富山では珍しく、これも気象異常の一端なのかと不安な気分が募ってしまっていた。
それが、この数日は、これまた富山らしくもなく、安定した晴天続き。
昨夜は、見事な満月が望まれた。仕事が暇だったこともあり、車中から、あるいは車の外に出て、煌煌たる月光を浴びていた。
思えば、東京在住時代は、仕事の最中でも、よく、真夜中など、何処かの公園の脇に車を止め、都内随所の夜景を楽しんだものだった。
それが、帰郷してからは、滅多にそんな機会を持てない。
それは、自分の心に余裕がないせいもあろうが(これは東京在住時代も同じだろうし)、やはり、仕事の性質が違ったこと、居住環境が変わったことが大きい。
やっていることは、タクシー業務なのだが、東京では全くの流し営業。
なので、休憩は自分が決めることができる。一旦、会社を出たら、乗務員の自主性が全て。
が、富山では、無線仕事が主。
となると、車から離れられないし、車自体、GPSで把握されていて、下手に休憩も取れない。
トイレ休憩していても、無線の際に出ないと叱られる。まさに四六時中待機状態なのである。
また、家も、我が家の窓は、北向きがほとんど。なので、東の月も西の月も眺められない。南天の空を眺めるなんて、家の外、庭の外に出ないと無理。
まして、家のどこかの窓辺に腰かけて、月見に興じるなんて、ありえない。
雨や花や、特に月は感興を誘う自然風物。それらに対して、目が塞がれている、そんな家の作りなのである。
夜など、月を横目に想像力を逞しくするなんて機会がなくなってしまった。よほど、何処かのホテルか旅館に泊まって創作に励む……なんてことも夢見るが、貧乏人にはありえない話。何処かの都知事のような贅沢は論外である。
さて、岡田 喜秋著の『定本 山村を歩く』を今日、読了した。
本書は、「都市近郊の低山から奥山の懐深くまで、ときに深い森をぬけ、ときに日本アルプスの高峰を仰ぎつつ、山とともに人々が暮らす風景を訪ねる…。旅行雑誌『旅』の名編集長として知られた著者が、歩いて旅した日本全国の山里のようすを精緻に記録した紀行文三十二編を収録」といった本。
某SNSサイトに以下のような簡単な呟きを投げた:
期せずして、我が母校の先輩の本を相次いで読んできた。一冊は本書であり、もう一冊は藤井一至著の「大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち」である。特に藤井氏は富山県の人。それはともかく、母校のある仙台の街に新旧こうした尊敬すべき人がいることに感激。岡田喜秋氏は、東京の下町生まれだが、山に惹かれて高校も旧制の松本高校を選んだとか。山間の忘れられた、あるいは消えていった村々やあるかなきかの山道、峠道を歩いて回った。
歩くことは厭わない自分だが、山間の道を一人で歩いて回るという発想は乏しかった。父は若いころ、山を愛し山登りも経験したというのに。自分は、街中を彷徨するだけの人間。喧噪の中の淋しさを追う。今は立山連峰の強大な白銀の屏風を眺めるだけ。ちょっと寂しいね。
→ アンズの樹の花? 過日、小粒な実がたくさん、生っていた。実だと思っていたけど、実は蕾だったのかもしれない……
父が昔、登山が好きだったことは仄聞していたが、父が亡くなって、父母の寝室の戸袋を整理していたら、登山靴などが出てきて、その話を実感したものだった。
自分はというと、呟きにも書いたように、街中を彷徨するだけ。
本書『定本 山村を歩く』は、1970年代に書かれたものだという。
ちょうど、小生が仙台で学生していた時期だ(72-78年)。哲学などの本を読み漁り、街中を歩き回った。
自宅(下宿やアパート)からは、キャンパスまではバスなどを乗り継いで1時間半を要する。
行きは交通機関を利用するが、帰りは、雨さえ降っていなければ、歩いて帰ったこともしばしば。
結構、センチなことを想いつつ、あるいは流行歌などを口ずさみながら、周りの風景にも光景にも目を、心を塞いで歩いていた。
筆者の前向きな歩き方とは大違いである。
昨日から読み締めた藤井 一至著の『大地の五億年―せめぎあう土と生き物たち』は、「植物にはじまり、微生物・昆虫・恐竜から人まで、土と関わりのない地上生物はいません。生き物はどのように土に適応してきたのか? そして土は生き物にどんな影響を受けてきたのか? 気候変動から戦争まで、生命の歴史を土をキーワードに読み解きます」ということで、最近の読書上のマイブームである、苔や細菌、など微生物関連の関心の延長である。
いわゆる「土」が五億年前に出来たものだということにまず、驚き。土と生命(微生物)とのかかわりの深さをじっくり味わってみたい。
← 藤井 一至【著】『大地の五億年―せめぎあう土と生き物たち』(ヤマケイ新書 山と渓谷社)
さて、生地は違うとはいえ、同じ大学の先輩の本を相次いで読むことになったが、偶然と思っていたが、出版社が同じ山と渓谷社であり、刊行の時期も半年ほどしか違っていないので、書店の同じコーナーで見つけたのも、偶然とは言えないのかもしれない。
でも、関心を抱いた本が共に我が母校だと思うと、そういった先輩後輩が居たんだなーと、誇らしく思う。
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