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2016/05/12

読書拾遺…この二週間で読んだ本

Ameba

← 星野 保【著】『菌世界紀行―誰も知らないきのこを追って』(岩波科学ライブラリー) 
「北極、南極、そしてシベリア。大の男が這いつくばって、世界中の寒冷地にきのこを探す。大型動物との遭遇、酔っぱらいとの遭遇、泥酔、泥酔、そして拘束。幾多の歎難辛苦の果てに、菌たちとの感動の対面はかなうのか…!?雪や氷の下でしたたかに生きる菌たちの生態とともに綴る、爆笑・苦笑・失笑必至のとっておき“菌道中”」といった本。

 やや過剰なギャグ調の文章が気になるが(菌)に夢中ってことが実感で伝わるのが楽しい。苔もだけど、微生物の世界が実に興味深い。宇宙という極大と、微生物という極小、そして人間の世界というこれまた厄介な世界も含め、何もかもが面白いよ。

Darkmatter

← リサ・ランドール【著】『ダークマターと恐竜絶滅 新理論で宇宙の謎に迫る』(向山信治【監訳】/塩原通緒【訳】 NHK出版) 
「ダークマターの一部は寄り集まって円盤化し、天の川銀河の円盤内に収まり(二重円盤モデル)、周囲に強い影響を及ぼすのだという。その新種のダークマターが彗星を地球に飛来させ、六六〇〇万年前の恐竜絶滅を引き起こしたのかもしれない――」といった本。

 題名に、あのランドールがトンでも本に走ったのかと心配したけど、一読、しっかりした内容の本と分かって安堵。ダークマターも、我々の知る物質と同様、決して一様ではなく、重力だけじゃなく、我々の物質との反応もあり得るなど、いろんな要素の総称なのだと言う。なるほど。そのダークマター、現下の精密な宇宙(銀河など)の観測で、いよいよ性質が分かってくる可能性がある。となると、ダークマターの正体も解明されてくるのだろう。素粒子像、宇宙像の大転換が間近なのか。それにしても、これだけの内容を数式を一切使わず、解き明かすとは。

Key

← ポール・オースター【著】『鍵のかかった部屋』(柴田 元幸【訳】 白水Uブックス) 
「美しい妻と傑作小説の原稿を残して失踪した友を追う「僕」の中で何かが壊れていく…。緊張感あふれるストーリー展開と深い人間洞察が開く新しい小説世界」といった本。

 オースターの<ニューヨーク三部作>の一作、とは知らず、既視感、既読感を覚えた。かつて読んで感銘を受けた『ガラスの街』や『幽霊たち』などと似た印象。そうだったのか、である。物語とは分かっていても、読み手をその世界に引きずり込む、著者の個性と孤独感がすごい。同時に、女性にもてる男でないと描けない、男女の肉的親和と醒めた感覚をさらりと自然に描くセンスに嫉妬する。当人は、ケッという感じなんだろうけどね。

Izumo

← 村井 康彦【著】『出雲と大和―古代国家の原像をたずねて』(岩波新書) 
「大和の中心にある三輪山になぜ出雲の神様が祭られているのか?それは出雲勢力が大和に早くから進出し、邪馬台国を創ったのも出雲の人々だったからではないか?ゆかりの地を歩きながら、記紀・出雲国風土記・魏志倭人伝等を読み解き、古代世界における出雲の存在と役割にせまる。古代史理解に新たな観点を打ちだす一冊」といった本。

 古代史や記紀神話を扱った本は、それなりに読んできたけど、かなり独創的な本。論争を呼びそうな内容。出雲神話と邪馬台国、原大和王権、本格的な大和王権との絡みを興味深く説いている。ただ、邪馬台国畿内論で多く見られる「魏志倭人伝」で、「水行十日、陸行一月」の方角を<南>と記されているのを、これでは南方の海上に至ってしまうからと、<東>との誤記だとしている点。筆者も<東>だと解釈し、広く言われる瀬戸内海ルートではなく、日本海を経て、大和国(奈良県)に至ったとする。門外漢ながら、都合が悪い記述を勝手に読み替えることには、抵抗を覚える。

Number

← マーカス・デュ・ソートイ【著】『数字の国のミステリー』(冨永 星【訳】 新潮文庫) 
「素数ゼミが17年に一度しか孵化しない理由、世界一まるいサッカーボールを作る方法、雷とブロッコリーと株式市場に共通するもの、ベッカムのフリーキックが曲がる理由、パーティで仲の悪い二人が二人きりにならないようにする方法…。今なおトップクラスの現役数学者である著者が、数学の現場の豊富なエピソードを交えながら、この不思議で美しいワンダーランドをご案内」といった本。

 彼の本を読むのは三冊目。たぶん、邦訳はこれで全部かな。数学の話題を面白く伝えてくれて、楽しませてもらった。ただ、いつもながら想うのだけど、数式が苦手って、辛いなー。世界を理解する非常に大きな武器であり、世界を正確に表現する、ほとんど唯一の言語なのだしね。数学音痴の自分だけど、これからも、数学の世界を垣間見る足掻きは続けていくよ。

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