寧日の日々
私は形を失ったゾウリムシ。それとも、腐り切ったミジンコ。
あるいは、踏みつけられ大地に無残な姿を晒すミドリムシ。
← (画像は、「小林たかゆき お絵かきチャンピオン」より)
透明な粘々する、恐ろしく濃密な時空に窒息し押し潰された肺の成れの果て。
体表の繊毛列は、ダンプカーに突っ込まれた麦畑のように、薙ぎ倒された茎の惨状を呈している。
細胞の口は、喘ぐことしか知らない、末期の老婆のように、呆けた心を吐きだそうとしている。
見ろよ、咽頭が丸見えじゃないか。恥も外聞もあったものじゃない。
体内に紛れ込んだ黄砂は肺胞という肺胞を埋め尽くす。
→ ミジンコ Daphnia pulex (画像は、「ミジンコ - Wikipedia」より) 「ミジンコはたった4個体を起源とする北米からの帰化種... プレスリリース 東北大学 -TOHOKU UNIVERSITY-」
体表からは、涙の滴にも似た涎が垂れ流されている。口吻を汚し、体内を遊泳し、肉に満ちた食胞を食い散らかし、やがては親も知らない子を孵化し、棘状の突起を逆立てつつ膨満し、表面の甲羅で以て肛門を引き裂き、時には親の血肉を食い破ったのだった。
一つ目の、涙の羊水に溺れるあなたに焦がれる私。あなたとの接合の夢を夢見る……。
← ゾウリムシの一種 Paramecium aurelia (画像は、「ゾウリムシ - Wikipedia」より)
だが、そんな祭りの時も過去の夢。栄華の時は短いのだ。
愛する大地に還元されていく私。身は朽ちて土に還る。
もう、土なのか糞なのか、見分けも付かなくなっている。
お前の過去の、現実に餓えるばかりの心乏しき寧日の日々。
こうなるのが望みだったんだろう?
これでよかったんだろう?
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